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生涯学習通信

「風の便り」(第103号)

発行日:平成20年7月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「学校を」支援するのか。「学校が」支援するのか?

2. 「学校を」支援するのか。「学校が」支援するのか?(続き)

3. 総論:「学校を」支援するのか。「学校が」支援するのか?

4. 祭りの仕掛け―人集めの原理 -第84回生涯学習フォーラムin行橋-

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

(4) システム上の一貫性
  また、聞くところによると、今回の学校支援ボランティア活動は、「謝金」や「費用弁償」の有無など、従来の「ゲストティーチャー」や「放課後子どもプラン」の指導者とシステム上の一貫性がないということです。問題の根源は、筆者が指摘して来た「ボランティただ論」にあるのですが、似たような学校貢献に対して、一方は「お金」を頂き、他方はただ働きに甘んじるという事態はかならず応援して下さる方々に混乱を生むことでしょう。極論を恐れずに言えば、ボランティは外来語:外来の思想です。ボランティアは欧米では神への報恩、日本では世の中への恩返し:布施という考えが基本でしょう。ボランティアの「無償制」はそのことを象徴しています。それゆえ、いずれの文化においても、誰一人、自分の貢献活動に対する「労働の対価」を要求する人はいないでしょう。しかし、ボランティアにも時間的、経済的、身体的負担はかかります。「費用弁償」の発想を伴わない「ボランティアただ論」は「無償制」の原則を狭義に解釈しています。換言すれば、「無償」は「ただ」を意味するという考えだけを「質」に取っています。「無償」は「労働の対価」を受け取らない、という意味に限定すべきです。そうしなければ、ボランティアは「ただ働き」と等値されます。「ただであるべきである」という発想の背景には、時間的、経済的、身体的負担に耐えられない人は関われなくても仕方がない、という前提が含まれざるを得なくなるからです。ボランティアは高い身分にあるものが己の社会貢献を誇った「貴族の義務(noblesse oblige)」であるということになるでしょうか?「貧しいもの」はボランティアをするなということになるでしょうか?
 文科省に限りませんが、日本社会は改めて「ボランティア活動促進法」とでも呼ぶべき「奨励」と「費用弁償」を保障する法律を制定して、人々が相互に助け合える環境を整える必要があるのです。同じ学校支援の中に、処遇の異なったボランティアが存在するのでは、仲介の労をとるコーディネーターの役割はますます難しくなるに違いありません。
 

これらの状況を改善し、地域全体で学校教育を支援し、地域ぐるみで子どもの教育を推進し、地域の教育力向上などを図る取り組みとして、平成20年度から「学校支援地域本部事業」が実施されています。


学校を支援すること自体は、大事なことだと思いますが、現状に甘んじる学校を変えることなく、家庭はもとより、地域が学校を支援することは極めて困難なことだと思います。
 

学校は地域の支援を得ることで、学校と地域との連携体制が築かれ、地域の人たちの学校に対する関心が高まることが期待されます。また、多忙な教員を支援し、勤務の負担を軽減することで、教員が子ども一人一人に対し、きめ細やかな指導をする時間を確保できることも期待できます。


 問題は、戦後60数年「閉鎖性」を死守して来た学校が地域の支援をこころよく「受け入れるか、否か」です。学校も、子どもも、日本社会の中心に位置しています。当然、学校が「頭を下げれば」日本の地域は必ず学校を支援するでしょう。
果たして、学校は頭を下げるでしょうか?地域の支援者を「招かれざる客」にすることはないでしょうか?筆者が観察した限り、豊津寺子屋の「有志指導者」も、飯塚市の「熟年者マナビ塾生」の皆さんも、学校から十分な敬意を持って遇されているとは思えないからです。
 

学校の運営を地域補完し、学校を活性化

「学校支援地域本部事業」は、学校長や教職員、PTAなどの関係者を中心とする「学校支援地域本部」を全国に設置し、その下で地域住民が学校支援ボランティアとして学習支援活動や部活動の指導など地域の実情に応じて学校教育活動の支援を行うものです。平成20年度から3年間で全国1,800か所の全市町村が対象になります。


 改正教育基本法に謳われた学校、家庭、地域の「協力」や「連携」のイニシャティブは誰が取るのか?「学校を」支援するのか?それとも「学校が」支援するのか?筆者の体験では、最初の一歩は学校が従来の姿勢を転換し、子どもの指導で成果を発揮し、頭を下げて、家庭や地域の協力を求めるのです。動くのは学校が先でなければなりません。
 

原則として中学校区を基本的な単位として設置される学校支援地域本部では、学校支援活動の企画、学校とボランティアの間を調整する地域コーディネーターの配置、学校支援ボランティア活動の実施、広報活動、人材バンクの作成、事後評価などを行います。本部内には、事業の状況や方向性などを協議するため、学校長、教職員、PTA関係者、公民館館長、自治会長、商工会議所関係者などで構成された実施主体となる「地域教育協議会」が設置されます。また、退職教職員、PTA経験者など学校と地域の現状をよく理解している「地域コーディネーター」も配置されます。地域コーディネーターは、中学校やその校区内の小学校の求めに応じ、登録した住民のボランティア活動の調整を行います。学校支援地域本部が提供するサービスは、学校の授業補助、校内の図書室での書籍貸し出しなどの管理・運営、校庭の芝生や花壇などの整備など多岐にわたります。

 

 恐らく、学校の姿勢を指導することなく、「支援本部」を組織しても、「地域コーディネーター」は、コーディネート機能を発揮することができなくて泣くでしょう。 真に必要なのは「地域コーディネーター」ではなくて、「学校コーディネーター」なのです。果たして、教育長や学校教育課長に学校のコーディネートができるか、否かが問われているのです。
本事業を導入するきっかけとなった東京都の杉並区や小平市の成功事例はすでに学校の姿勢が変わっていることを忘れてはならない筈です。以下は筆者の総論です。


 

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