PC カンファレンス、今年はSFCで開催

 CIEC(コンピュータ利用教育協議会)の全国大会、PCカンファレンスが今年は慶應湘南藤沢キャンパスで開催されます。もう長いこと参加していないですが一応は会員だし、特に今年は母校での開催なので紹介します。ついでに僕がこの大会で最初に発表した頃をちょっと思い出したので昔話も一つ。



 僕が最初にこのPCカンファレンスで発表したのは、まだ学部4年生だったので1996年のこと。もう12年経ったことになる。まだCIECが設立されてすぐの頃で、その年は早稲田大学で開催された。
 発表は自分が学んだSFCの情報教育について、学生の意識調査の分析結果に基づいて、情報教育のあり方について考察したような内容だった。今もそうだが当時は学会のような場にはまったく不慣れで、右も左もわからず空気も読めないままに、大学の情報教育の問題点について提言めいたことを発表した。
 公の場での初めての研究発表だったということもあって、こちらは自分の調べてまとめたことを一生懸命話すのに精一杯で、聞き手がどう受け取るかなど配慮するゆとりはなかった。好意的に受け止めてくれるだろうという気持ちで、大学の情報教育の問題点はこういうところにある、みたいなことを直球で言い放ったので、情報教育の分野の先生方からすれば失礼に聞こえるような言い方もしたのだろうと思う。いかにも面白くなく感じたという態度で、学部生の分際で、と言わんばかりに批判的なコメントをする人もいたし、まあまあ学部生の発表なんだから、という感じでやんわりとボールを投げてくれる人もいた。
 これも社会の一つの通過儀礼だったわけで今となってはよい思い出なのだが、その時は質問で槍玉にあげられてうまく受け流せなくてややへこんだ。一緒に発表した同期の友人と、まあ、こんなもんだよな、と気休めを言いながら疲れてトボトボ帰ろうとして、帰り際に座長の先生に挨拶しに行った。するとその先生が、ニコニコしながらその発表のよかった点や課題を説明してくれて、暖かく励ましてくれた。その先生のコメントのおかげで発表しにきてよかったなという気になって、なんだか元気付けられた。
 ある人のキャリアの選択には、こういう経験をどこでするかに大きく影響されるのではないかと思う。この時の出来事はほんのちょっとしたことなのだけど、その座長の先生のひと言があったおかげで、その日の経験がずいぶんポジティブなものに感じられた。大学にいる間も出てからも、アカデミックな分野の周辺でこういうよい経験を何度か重ねつつ紆余曲折を経て、今もかろうじてアカデミックな世界の端っこに身を置くに至っている。
 SFCで学んだ4年間には、大学生活を通してそういうよい経験、特に教育からのよい経験を得る機会が多かった。学部生の時分に学会発表をしよう思えること自体、SFCの未熟でもチャレンジを励ます自由な文化があってのものだと思うし、各分野で活躍する優れた教授陣から直接学ぶことでさまざまな刺激を受けたことも大きかった。実際、教育学部でもないのに教育分野に進む学生は結構周りにいたし、一度企業に入ってからまた大学で教えるとか、何らかの形で教育と関わっている卒業生は結構多いと思う。身近にも結構いる。12年前に一緒に発表した友人は法政大学で教員をやっていて、同じ研究会で2年間学んだ友人も、東京大学の講師になっていて大学経営論が専門だそうだ。
 今のSFCがどんな感じなのかはよく知らないのだけど、まだ開設されて間もない当時は研究が好きな人や教育に目覚める人が多かった。僕もそんな連中の一人で、その意味では大学から受けた影響はとても大きかったし、大学というのは単にモラトリアムなだけでなくて、大学ならではの要素で積極的に学生に影響を与える場として機能すべきものなのだろうと思う。
 CIECの大会の話からだいぶそれてきたので、ここらで終わりにして、以下は今年のPCカンファレンスのご案内。若い学生たちが教育工学の分野に進みたくなるような、よい出会いが今年もたくさんあることを願っています。僕も学会のような場に参加する時はいつも、あの時出会った座長の先生のように、学生たちによい経験を与えられる度量のあるよい大人でありたいと思ってます。