自分のテーマと仕事の幸福感

 先日、今度実施するオンラインゲームを利用した研究授業の打ち合わせに行ってきた。協力校の先生とアレンジをしてくれたフューチャーインスティテュートの為田さんとともに、学校のコンピュータルームで準備やゲームの動作確認をした。この学校のICT環境は驚くほどに整備されていて、懸念していた環境面の問題はほとんどなしでそのまま利用できる様子なのがありがたい。ここまで整備されているところは珍しく、室内の生徒の作品展示を見ると生徒たちのレベルの高さがうかがえる。実施する授業は、授業の中で週替わりのゲストを招く枠を使わせてもらうことになっており、話もスムーズに進んだ。あとは授業のコンテンツを準備するところがカギで、こちらの腕の見せ所というところだ。
 帰りに為田さんと軽くビールを飲みつつ、今後の展開など話し合った。同じ教育分野で働く人でも、なんでその仕事が好きかというのは少しずつ違うもので、僕にとってはカリキュラムや授業プランを書いてそれを試してみるところにこの分野で仕事をする楽しさがある。人が学ぶ仕組みや仕掛けを企てる仕事ならいくらでもやっていられる。なかなかそんな人とは出会わないのだが、彼は僕と同じツボを持った人だったようだ。そして大学時代に受けた授業や大学生活で触れてきたものが興味を深めるのに影響しているのも共通していた。お互いが持つ仕事のテーマがちょうど合致しているので、いくらでも一緒にやれそうなプロジェクトのアイデアが思いつく。日々動いている業務を回していくだけだと息切れしてしまうが、その先にワクワクするプロジェクトがあると思えば力も湧いてくる。そんなきっかけが生まれるよい時間を持つことができた。
 そんな話をして、ふと自分が仕事をしていく上で何があれば満足なのかということを考えた。「(人に管理されるのでなく)自分で仕事の段取りをする自由度」があって、「(ただ食べていくためでなく)自分のテーマに合った仕事で食べていけて」、「自分が共感できる想いを持った人の力になれる仕事」で「新しい仕組みや仕掛けを考えて生み出す仕事」をやっていけるのであればそれで満足だ。経済的なゆとりや人から敬意を受けることなどは、仕事を積み重ねた結果得られればそれでよいし、それらの要素は仕事そのものから得られる満足感とは少し違う気がする。
 今進めている仕事は教育コンテンツの制作や企業での研修、本の執筆、それにこの博論研究と、いずれも面白くてチャレンジングなものばかりで、それぞれに重要な局面に入ってきている。ここが自分の専門知識を駆使しての腕の見せどころで、どれもよい成果を出すにはかなり知恵を絞らないといけないのでプレッシャーも大きい。それでも楽しくやっていけるのは、いずれも自分の仕事のテーマに合っていて、ちょうど良いバランスの中で楽しむ余裕を感じながらやっているからだろう。一つ一つは楽しい仕事でも、ボリュームや難度のバランスが崩れるとストレスになるし、好きな仕事だけに成果が出せないとストレス倍増になる。その意味では、幸せに仕事をしていくためには、自分のテーマや価値基準に合った仕事をすることと、その仕事を良いペースで進めるためのバランスのとれた管理能力というのが必要なのだろう。