少し前に紹介した、「大航海時代オンライン」を研究ワークショップを利用した子ども向けワークショップの第1回を先日開催した。まずは概ねうまくいってほっとした。
今回は、研究のねらいとするところがどこまで実践に耐えるか、運営上の課題がどこにあるかを洗い出して改善するための形成的評価のためのパイロット調査として行った。結果としてほぼ意図した通りに機能して、この調子でいけそうな手ごたえと、工夫が必要なところとが浮き彫りになった。教育現場での実践研究はやってみないと分からないことが多いので、机上の計画だけでそのまますんなり成果を出せるほど甘くはない。やってみないとわからないからといって計画なしに現場に飛び込んでも、現場の混沌に飲み込まれて研究にならない。そんなことを再確認するよい機会だった。
個人的に、子ども向けのワークショップのデザインは、今回実質的に初めて取り組むので、なおのことやってみないとイメージがわかないことが多かった。それでも、過去に学習科学系の研究者が同様の研究を行っている例はたくさんある。それらの研究をレビューすることで、想定できる問題点やデザインのポイントのようなところを事前にチェックした部分が機能した(研究活動としては当り前)。まったく同じ文脈ではないにせよ、現場で目にした現象で先行研究が遭遇したものと類似のものは、すぐにある程度自分の知識の中で位置づけることは可能だった。今後のデータ収集のポイントを確認したり、やるべきことでやってないところややり過ぎのところや余計なことをしているところなど、一通り洗い出すことができた。このような研究の現場経験のようなものを一通り得たことと、設備上の制約は心配したほど生じなかったでだいぶ気が楽になった。今回得た手ごたえを成果につなげていくためには、これまでの関連研究のレビューをもう一段進めて知見を得ることと、ワークショップのデザインのバージョンアップを行うことが必要になる。
現場実践型の研究を進める上で重要なのは、一緒に教育活動を進めていく教師やスタッフの協力で、研究チームとしての力を高めていくことが研究の成果につながる。この点はとてもありがたいことに、研究の場を提供していただいているフューチャーキッズ渋谷校の為田さんをはじめとするスタッフの皆さんの協力に励まされる思いがしている(お世話になりました!またよろしくお願いします!)。
これまでにも、新しい教育メディアやツールを使った研究を行い「何かやれそうだ」という手ごたえを得るところまでいった研究はいくらでもある。だがほとんどの研究はその次のより具体的な成果を形にして、新しい教育方法として提案するところまではいきつくことができず、研究論文を何本か出して終了、というところにとどまっている。
もちろん論文を出せるところまでいけば立派なものだし(そもそも学術研究とはそういうものだし)、この研究がそこまでいけるかもまだわからない。研究成果を狭い研究コミュニティの外の一般の現場レベルで役に立つレベルまで持って行けるのは、複数年予算の付いた大規模研究プロジェクトばかりで、予算のない博論研究をそこまで持っていったというのは教育分野の研究ではあまり聞いたことがない。学位が取れるレベルの論文を書けるところまで持っていくのが一つのゴールではあるけれども、どうせなら一つの新しい教育方法を実用化に近いところまで持っていきたい。そんな野心をもちつつ、研究を続けていこうと思う。