ギターヒーロー続編の話

 以前にも何度か紹介した、欧米で大人気の音ゲー「ギターヒーロー」は引き続き好調で、XBOX360版が出たり、違う形のギターコントローラーやワイヤレスコントローラーが出たり、引き続き売れ筋商品として扱われており、すっかりメジャーなシリーズとなった感がある。
 売り出した当初は、ギターコントローラーの箱がでかくて場所をとることから、「ゲームショップの棚に並びにくいものは売れない」というこれまでのゲーム流通のセオリーから失敗を懸念する声もあった。だが、第一作がバカ売れしたおかげでそんな声も消し飛んでしまって、今ではゲームショップやスーパーのゲーム売り場には、ギターヒーローを置くためのスペースがしっかり確保されている。ビジネス上の些細な制約条件など、売れるものをきちんと作れば吹き飛んでしまうというよい例だ。


 このギターヒーローの続編「Guitar Hero Encore: Rocks the 80s」が北米では7月24日にリリースされる。プレイそのものはギターヒーローIIとほぼ同じで、収録曲がタイトルどおりに80年代ロックばかりで編成された拡張版のような内容だそうだ。収録曲リストを見ると、Accept、Skid Row、Scorpions、White Lion、Dio、Ratt、Poison、Iron Maiden、Judas Priest、Wingerなど、洋楽ハードロックファンならワクワクしてくる80年代ハードロックバンドの人気ナンバーが並んでいる。いまだにFMラジオのロックステーションでは、これらのバンドの曲が毎日かかっていて、こちらのロックファンたちもさぞ興奮していることだろう。
 ギターヒーローIとIIは、ロックのジャンルがいろいろと混ざって入っているため、あまり興味のないジャンルの曲も結構入っていたりする。だが、このバージョンはジャンルを絞ったおかげでこのジャンルのファン層へのアピール度は高まった。いずれもロックシーンの一時代を築いた頃の懐かしい曲なのでファンも多く、マーケットも小さくはない。
 その次に来年春リリースが予定されている続編「Guitar Hero III: Legends of Rock」は、PS2と3、XBOX360に加えてWiiでも開発されることがアナウンスされている。今までオリジナル曲のコピーだけだった(でも結構オリジナルの雰囲気は出ている)のが、本人プレイのオリジナル曲も収録されるようになり、オンライン対戦など対戦モードの充実、キャラクターとしてGuns N’ RosesのSlashが登場するなど、ゲーム内容の拡充も行われている。
 日本にもこれより以前から「ギターフリークス(GuitarFreaks)」というゲームが出ていて、ギターヒーローはそのフォロワー的な存在とも言える。だが、マーケティングの方向性が全く異なることで明暗を分けている。ギターヒーローは誰でも知っているヒット曲や、自分のお気に入りのバンドの曲がプレイできる。ギターフリークスはゲーム用に書かれたオリジナル曲が中心。あとのゲームプレイはほぼ同じ。これだけでゲームがアピールする層がまるで変わる。ギターヒーローは、仲間でわいわいと楽しむロックファンにアピールして裾野を広げている一方、ギターフリークスはゲーセン時代からコアなファンには人気があっても、残念ながらギターヒーローほどの広がりは見られない。
 同じようなスペックの製品でも、展開の方向性がずいぶん違っている。おそらく、周辺の経緯を見ていけばなぜこのようにそれぞれが展開しているのかも見えてくるはずだ。単に売り方の話ではなく、どんなユーザーニーズに応えるか、という製品開発時からのコンセプトデザインの違いが結果の違いとなって現れているように思われる。