「The Active Senior: これからの人生」発刊

 当サイトで運営している生涯学習通信「風の便り」の編集長、三浦清一郎氏の新刊「The Active Senior:これからの人生―熟年の危機と「安楽余生」論の落とし穴」が学文社より上梓された。昨年上梓された、「子育て支援の方法と少年教育の原点」、編著の「市民の参画と地域活力の創造―生涯学習立国論」に続く3作目となった。
 「安楽な余生」は幸福にはつながらず、社会との関わりを失って生きがいを失った老人は「自由の刑」に処された状態で活力を失っていく。にもかかわらず、福祉行政も生涯学習行政も「元気老人」を増やすのではなく、社会コストの増大をもたらす「厄介老人」を増殖させる誤った施策をとり続けている。老いていない研究者の高齢社会の研究はまるで的を外している。といった論点がわかりやすく説かれている。
 引退後も老人たちが社会と関わりを持ち、社会の役に立てる機会を提供することが社会保障コストの増大を抑え、社会の活力維持につながる、という提言が本書の主要なメッセージとなっている。また、老人は安楽に生きて衰えて社会の厄介になって生きながらえるのではなく、頭も身体も衰えないように使い続けなさい、そのためにもっと社会と関わりを持ちなさい、という主張には、高齢者の年齢に達して老いを実感している著者だからこその迫力がある。
 現在の高齢者医療・福祉政策の方向性はすでに限界がきており、本書は生涯学習を軸としてその方向転換の考え方を提示している。社会教育、生涯学習分野の研究者の立場からの社会問題の分析とその解決のための考え方が示されている。教育学分野には社会の役に立たないかむしろ害悪な「学者のたわごと」があふれているなか、本書は教育学者の社会のためになる知識や見識を示しており、その示し方は一つのお手本と言ってよい。
 その年代、世代だからこそわかることや感じられることがあって、何でも若ければよいというものではない。歳をとったからこその感性や発達、時には衰えがその人の世界観や物事の捉え方に影響を与える。若いからできる仕事もあれば、歳をとってからの方がよくできる仕事もある。本書は著者にはそんな仕事であり、歳をとったからできた仕事なのだろうと思う。
 なお、著者は次回作もすでに執筆中で、学校教育の問題を「教育公害」というテーマで論じた内容とのこと。すでに生涯学習通信「風の便り」にこのテーマで書かれた論文も掲載されているので、関心のある方はご参照ください。
★「The Active Senior: これからの人生」 目次
1 「親孝行したくないのに親は生き」/2 熟年の不覚/3 熟年の「危機」、熟年の「生きる力」―「元気老人」と「厄介老人」への二極分解/4 「ひとりぼっち」(情緒的貧困化)の危機/5 「頭の固さ」(精神的固定化)を自覚せよ/6 「変わってしまった女」と「変わりたくない男」―「男女共同参画」を学ぶのは基本的に男性です/7 熟年の体力維持とストレス・マネジメントの方法―助言の論理矛盾/8 「安楽余生」論の「落し穴」―“読み、書き、体操、ボランティア”/終章 『三屋清左衛門残日録』(藤沢周平)の教訓―熟年の覚悟と生涯学習の意義