Wii Sportsバンドルの理由

 US版のWiiには、Wiiスポーツがバンドルされていて、250ドルの本体を買えばすぐに遊ぶことができる。日本では売っているものをUS版ではなぜオマケにつけているのか、広告を見ている時点ではピンとこなかった。だが先日、友だちのうちに遊びに行ってXavix(ザビックス)をプレイしてみて合点がいった。
 Xavixは、任天堂からスピンアウトした技術者たちが立ち上げた、新世代という滋賀県にある会社が出しているエクササイズゲーム機だ。Xavixポートというコンソール機用にテニス、野球、ボーリング、ボクシング、ゴルフのスポーツゲームと、エクササイズ用のエアロステップなどが発売されている。スポーツゲームはそれぞれのスポーツに使うボールやラケットなど形をした専用コントローラーで身体を使って操作する。
 このスポーツゲームのラインナップを見てわかるように、Wiiスポーツに入っているものと同じである。専用コントローラーを使っていて、ゲームも作りこんでいる分、Xavixの方が遊べる要素の多いところはあるが、ゲームプレイの感覚はほとんどWiiで十分に代替できてしまう。操作性のよさの点ではWiiの方が勝っている。一本で同じように遊べてしまうのだったらわざわざこっちを買う必要ないね、Wiiだったら他のゲームもいろいろ遊べるし、という感じになる。
 Xavixポートは日本ではさほど盛り上がっていない感じで、コンシューマ市場にはなかなか食い込めていない様子である。この会社の製品は、Xavixよりもテレビに直接つないでプレイする子ども向けゲーム専用機の方が普及している。アメリカでも日本よりは少しはましという程度だろう。うちの近所のベストバイなどの家電店では取り扱いをやめていたりして、それほどパッとしていない。だが、アメリカは市場が大きく、ヘルスケアの問題も深刻なので、エクササイズ関連のゲームは大きく化ける可能性がある。
 Wiiスポーツはアメリカでも売れば普通に売れると思うのだが、あえてバンドルしたところにはこの辺りの事情があるのだろうと推測できる。家庭用体感型ゲームの最も大きい市場はWiiできっちりおさえに入るという、任天堂の意思表明である。これでXavixは現在のWiiとバッティングする商品ラインナップでは厳しくなったというか、すでに勝ち目は無くなった。このままのやり方では立ち行かず、経営戦略を大幅に見直さないと会社自体が危機に陥るだろう。
 立ち上がりは順調だったように見えても、ひとたび業界の巨人が体力と技術力にものを言わせて本気を出してかかると、あっという間に吹き飛ばされてしまうという現実を示す例となりそうである。ベンチャー企業が軌道に乗って、対象とする市場がニッチでなくなる段階や、主要な市場で勝負をしようとする段階になると、経営リスクのレベルが格段にあがる。直接対峙する相手のプレイヤーががらりと変わるのだ。ここで一歩退いて別の市場を開拓することで直接ぶつかるのを避けるか、消耗戦になってもその市場にとどまって勝ち残るまでやっていくか、あるいは他の全く異なる戦略をとるか、新世代にはそんな選択が迫られていると思われる。
 いかに人々に楽しさや幸せを与える商品であっても、ビジネスはビジネスであり、組織として存続しなければどんな価値も提供できない。夢や理想を追いたければ、企業体として常に沈着な経営判断をしていく必要がある。Wiiスポーツのような楽しいゲームも、そうしたビジネスの厳しさのなかで生み出され、提供されているということなのだろう。

Wii Sportsバンドルの理由」への2件のフィードバック

  1. xavixのラインナップにはちょっと引っかかる部分があったのですが、なるほど…任天堂からのスピンアウト会社だったんですね…
    残る一つはDDRと競合…厳しいですねぇ…

  2. >終始 さん
    そうですよねー。ここからどういう手を打っていくんでしょう。
    やっぱりダメだったか。。となるよりは、そうきたか!と驚かされるような展開を期待したいものです。

コメントは停止中です。