DIS 2006 Day 3

 「Designing Interactive Systems 2006」の最終日。学会に出ると、学者仕様でない私の頭は、いつも3日目くらいで情報量が満タンになってしまって、だんだん頭に入らなくなってくる。それでも面白いところをがんばって吸収してきた。
 ユビキタスコンピューティングのデザインツールに関する研究や、社会性を伴うインターフェースのデザイン、デザイナー教育におけるデザインメソッド教授法など、今日も実践例やデザイン理論の研究などの発表が行なわれた。
 特に、デザインメソッド教授法のセッションは会場での議論を呼んでいた。デザイナー教育で教えられるデザインのアプローチや方法はさまざまあるが、現場のデザイナーはどれか一つだけを使っているのではなく、目的に合わせて自分の知識の中にある方法を使い分けている。なのでそうしたマインドセットを習得させるためには、教育段階からいろんな方法を使い分ける練習をさせることが有効だ、といった趣旨の発表だった。
 発表者からは、「科学的アプローチ」と「デザインアプローチ」のコンセプトの違いを対比した表が示され、科学の発想に縛られてデザインの質を損なうべきではないという意見が示された。この点に対して、会場からの質問が集中し、議論となった。肝心の教授法のところよりも、科学を狭く定義しすぎているとか、昔はそうだったが、最近はそうでもないとか、科学的アプローチのよさも見落としてはならない、といった形の反論が質問者によって出されていた。
 この学会に参加して得た収穫は、デザインづくしで、デザインの対象、アプローチ、方法、コンセプト、などに関する理解が深まったということだ。質的研究の取り組み方についても、もいいお手本が幾つもあった。研究について近い関心を持って話のできる人たちとも知り合うことができた。最近、博士論文の研究が予定通りに終わらせられる気がだんだんしなくなってきていたのだが、この学会に出たおかげで、予定通りに終わらせる意欲とアイデアがわいた。データだけ集めて面倒になって止まっていた小プロジェクトについても、論文を書く気になった。うちの中にこもって作業するだけでなく、外に出ていい刺激を受ける方が生産性が高いことをあらためて認識できた。