DIS2006 Day2

 「Designing Interactive Systems2006」の二日目。今日も終日、ひたすらデザイン、デザイン。
 ipodのシャッフル機能に対するユーザーの反応に関する調査をして、「ランダム性をデザイン資源として活かせる」というまとめ方をした発表や、テトリスの名人の操作時の動きの研究からだんだん深めていって、「インタラクションデザインにおいて身体をどう捉えるか」という展開をさせた発表など、テーマを見つけるときの発想自体からして違う。おしなべて、デザインの質についての意識も高い。実証研究の結果を説明する際にも、デザインの質をどう解釈しているかという言及がなされる。
 かたや教育工学分野の実証研究は、デザインの質に対する感度の鈍い研究が多い。リサーチデザインは型どおりのことをやっているからOKだとしても、その変数を具現化した教材のデザインがお粗末で、「実験の結果、独立変数AとBは統計的に云々」という結論を示されても、その教材の質が低いからそういう結果なんじゃない?と言いたくなるような研究がよく目に付く。
 デザインベースドリサーチのようなアプローチが認められてきたおかげでデザインの質への関心も高まっているとはいえ、いまだに悪しき科学信仰が根強く、デザインへの意識は低い。統計的有為を示すために研究対象を小さく区切って、現実の文脈とは関係なく抽出された変数を比較する世界では、リサーチデザインの質が関心事で、試している教材のデザインの質は二の次にされている。たとえば、オンライン教材にアニメーションを使うと、学習効果を高めるか、という問いは意味がないのに、そのような問いを立てて行なわれる研究はいまだに多い。アニメーションの質が低かったり、使う場所がおかしければ、学習効果は高まりようもない。
 そういうことがずっと気になっていたのだが、一歩外に出てみれば、ちゃんとデザインの質を考えて研究しているたちがいるということを知って、心強く感じた。HCIの研究者には、アート系の人も多いことに起因するのだろう。いいものにたくさん触れて、力が湧いてきた。

DIS2006 Day2」への2件のフィードバック

  1. >かたや教育工学分野の実証研究
    >は、デザインの質に対する感度
    >の鈍い研究が多い。
    おっしゃるとおりです!
    僕らは最近はデザイナーと一緒に
    仕事をしています。餅は餅屋では
    ないかと思っています。
    >いまだに悪しき科学信仰が根強く、
    >デザインへの意識は低い。
    といいましょうか、現在の研究システムでは、
    デザインにこっても、研究的に得することは
    ないのです。
    むしろ、「それはデザインがよかったから
    なんじゃないの?」というツッコミが来そうです。
    もちろん、最近は変わってきていますよ。
    ゲーム業界ほど、スゴイビジュアルはないですが。
    中原淳

  2. > 中原淳さん
    コメントありがとうございます。
    ちょうどこれから書こうと思っていたことに
    関連した内容なので、次の記事であらためて
    この辺りのことに触れたいと思います。
    > 餅は餅屋ではないかと思っています。
    内輪のリソースで済ませるのではなくて、
    意図したことを実現するためには専門知識を持つ
    人たちの力を借りることは大事なことだと思います。
    > といいましょうか、現在の研究システムでは、
    > デザインにこっても、研究的に得することは
    > ないのです。
    > むしろ、「それはデザインがよかったから
    > なんじゃないの?」というツッコミが来そうです。
    それは悩ましいところですよね。
    デザインと一言でいっても、機能のデザインや
    操作性のデザインなど、必ずしも見栄えとは
    関係しないデザインの領域も大きいので、
    今後はそのあたりの認識を高めていかないと
    いけないかなと思いました。

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