ディール・オア・ノー・ディール

オリンピックが終わって、テレビも通常編成に戻ってきたが、今週はNBCではゲームショー「ディール・オア・ノーディール」を一週間連続特番でやっている。
このショーは、一般参加の挑戦者が、1セントから250万ドルまで26種類の金額が入った26個のスーツケースのうちから一つをキープしておいて、残りの25個のうちから安い金額だと思うスーツケースものから選んで外していく。途中でバンカーから金額のオファーがあり、その金額を受けるか、さらにスーツケースを選んで外していくかを選ぶ。オファーされる金額と、残された金額の価値のバランスを見ながら、どこでストップしてディールするか、というゲームである。番組ウェブサイトにこのゲームのルールそのままに作られたミニゲームがあるので、これを試してもらった方がわかりやすいだろう。
ゲームの原理はロシアンルーレットの派生形で、当たり外れの大きな賭けでの一か八かのスリルが、ゲームを盛り上げる要素になっている。ショーの演出は「ミリオネア」の延長線上にあって、番組のホストが一回一回の意思決定の過程を煽ったりもったいぶったりしながら盛り上げていく。クイズ要素をなくしたミリオネアをイメージしてもらえばだいたいそんなイメージだ。そのような構成で、一般参加の挑戦者とその応援の人たちが、大金への欲と理性のせめぎあいで盛り上がっている様を見て楽しむ番組である。この手のゲームショーのお約束で、スーツケースを開けるのはアシスタントの女性なのだが、スーツケース一個に一人ずつ派手なモデルのおねえさんたちがついてずらっと並んでいて、無駄に豪華さを演出しているのが笑える。
グーグルでこのショーのことを調べたら、ウィキペディアにやたらと詳しい解説があった。この番組はオーストラリアで最初に放送され、その後38カ国で各国のバージョンが制作されていて、ルールはそれぞれ若干違うそうだ。この番組の面白さは、意思決定のリスク変動をエンターテイメント化した点にあって、そのリスクの動きと挑戦者の行動を分析した論文まで出ている。
番組のフォーマットはいたってシンプルであり、クイズすらやらず、単純に大金をかけて箱を開けるだけである。それだけでゴールデンの時間帯で視聴者を集め、スポンサーも広告に大金を払う。いかにもテレビ的な大衆向けコンテンツなのだが、変にゴテゴテ盛り込まず、シンプルでわかりやすく、切れ味のあるフォーマットを作れるのは、テレビ業界のクリエイターのすごさだなと思う。