Foxチャンネルで人気の大衆娯楽歌手オーディション番組「アメリカンアイドル」は、4シーズン目の決勝ラウンドに入っている。十数万人だかが参加した全米の地方予選から勝ち上がってきたベスト12の出場者達が、毎週出されるお題で選曲して歌い、視聴者投票で一番ビリの人が脱落していくという構成である。3シーズン目があまり盛り上がらなかったため、今回ももうネタ切れかな、と思っていたが、出場者のレベルが大変に高く、今までにない盛り上がりとなっている。大学院生はこんな大衆娯楽番組を見ないのだが、私はこの番組はとても教育的な意味が大きい番組だと思っているので毎週楽しんでみている。
どんな教育的な意味があるのかは書き出すと長いのでまた別の機会に書くことにして、今シーズンはなんと言っても男性陣、特にロックバンド出身の二人が健闘しているのが光っている。前回までは、教会で歌いまくっている黒人ゴスペルシンガーが強かったのだが、今回はその辺からは人が尽きたのか、あえて意図的に外したのか、ゴスペルシンガー色の強い人は残ってない。前回までの流れから、やっぱ教会で歌いこんでる連中は強いな、普通のシンガーはかなわんな、と思っていたが、ここでロッカー勢の底力が発揮された。二人とも30歳手前の年季の入ったロックシンガーで、フロントマンとしての経験から、ステージでの動きも格が違う。ジャッジの評価も高く、今のところは余裕で勝ち残っている印象だ。
何でこんなに歌番組のことを熱を入れて書いているのも変な話だが、私は30過ぎてもハードロックばかり聴いている、ロックの部族の一員のようなものである。高校野球やプロ野球で地元勢を応援するのと同じで、ロッカーが外に出てがんばっているのを見ると、自分の部族の代表のように応援してしまうのである。
今週は、ビルボードチャート1位の曲という、有利なお題であったにも関わらず、ロッカー二人はそれぞれだいぶカラーの違うポップソングとバラードを選んだ。別のカラーを出そうという作戦だったようで、これももともとの個性が強いからこそできる作戦である。逆に今回、今までキャラがかぶって印象の薄かった白人女性二人が、それぞれHeart のAlone、Bonny TylerのTotal Eclipse of the Heartを歌って高評価を得ていた。ロックバラードの楽曲の力を借りて個性を打ち出すことに成功していた。
結論は、ハードロックはすごいぞというところに落ち着く。演奏力や歌唱力も高さをベースにしたよい楽曲がたくさんある。そしてこの番組では、ロックバンドで経験を積んだ連中が、アイドル番組を蹂躙しているのが小気味よくて楽しさ倍増というところである。しかし今回は、レベルが高くて、ベスト6くらいまではCDを買ってもいいと思うくらい上手い連中による激しい競争なので、この中でどんな展開になるのかが楽しみである。