11/7(日) 学生リーダーサミット

 今日はキャンパス内のホテルNittany Lion Innで、Student Leader Summitという学生団体のリーダーを対象としたイベントがあった。私のような学生会の会長や、スポーツ系・文化系クラブ、ダンスマラソンなどのイベント系組織のリーダーが60人ほど集まった。主催は大学のStudent Affairs(日本の大学組織では学生課にあたる機能)。趣旨は、大学経営スタッフと学生リーダー間のコミュニケーション促進、学生リーダー間のネットワーク形成、学生リーダーのリーダーシップ養成、といったもの。だいぶ参加者を見積もっていたのか、会場は広いカンファレンスホールなのにずいぶん余裕があった。まずはリーダーシップのセミナーらしく、アイスブレークアクティビティから。大学のポスター何種類かがばらばらに刻まれてパズルになっているのを受付で一枚ずつもらっていて、それを協力して組み合わせて、一番になったグループが賞品をもらっていた。次にStudent Affairs担当副学長のDr. Vicky Triponeyが挨拶。昨年よその大学から引き抜かれて赴任してきた彼女は、いかにもアメリカの女性リーダーという印象。ヒューレットパッカード社のフィオリーナ会長の大学経営版とでも言えばしっくりくるかも。この会も彼女のリーダーシップのもとに、豪華キャストをそろえた一大イベントに仕立て上げられたということがうかがえた。組織をよくするには、彼女のような優れた女性を引っ張ってきて権限を与えるのが非常に有効だということがよくわかる。


 次にStudent Affairs Jeopardyと題したクイズゲーム。Jeopardyというのはアメリカでも超長寿な人気のクイズで、私はこのクイズ番組自体、難しくてたるいのであまり好きではない。そのクイズ番組のフォーマットで大学のサービスや歴史にちなんだクイズを通して、知識をつけてもらおうというねらい。残念ながら私には、そんなの知るか、という問題が多くて、クイズの構成をもう一ひねりしてほしかったところ。感心するのは、この前のアイスブレークも、このクイズを司会で仕切っているのもみんな大学のStudent Affairs関連の幹部職員なのだが、みんな仕切りがうまい。日本の下手なプロ講師はまるでかなわない。日本のオペラ歌手がイタリア旅行して、駅で何気に歌ってる一般人の歌の上手さに圧倒されたというエピソードを思い出したが、まさにそんな感じだ。こういうイベントでリードができる人が普通に大学で働いているというのはさすがアメリカの大学である。
 クイズも終わったところで昼食。円卓に学生が数人ずつと、大学の経営幹部が一人ずつ着席してあれこれ質問しあいながらサンドイッチとサラダをほおばる。チリスープがうまかった。私はクイズ研究会の会長とロボット研究会の会長に挟まれて座った。二人とも見た目からしてその組織を代表しているのでなんか愉快だった。クイズボールという大学対抗のクイズ選手権があるそうで、クイズ研はその大会で上位を目指して日々精進しているとのこと。かたやロボット研は、結成されたばかりで現在活動資金確保のために学部などに掛け合ったいるそうだ。他に一緒の円卓にいたのは、福祉系のグループのリーダーの女子学生たちと、Student Affairsの副部長氏。子ども保護団体のリーダーの子から、共同イベントの話を持ちかけられた。
 参加している学生のほとんどは学部生で、院生の参加者はほんの数人しか見かけなかったのだが、学部生のリーダー達はみんな若いのにしっかりしている。話してて「どこにロビー活動したらいいと思う?」みたいなことが普通に話題に出る。そんなに若いうちからロビー活動、たいしたものだ、とこちらは感心するばかりである。
 午後は学長や副学長、大学経営理事会の理事たち大学経営幹部12名が会場内のテーブルにそれぞれ座っていて、学生は15分ごとに移動しながら幹部達と意見交換する、というセッティングだった。15分×7セットで、7人の経営幹部たちと話ができた。たまたま二人だけのグループだったので、私の発言時間もずいぶんあった。「大学の最も好きなところ/嫌いなところは?」「学生団体の活動を大学が支援するとしたら何してほしい?」などといった質問を、大学のトップ達から次々に浴びせかけられた。いろいろ面白い話が出て勉強になった。このセッションを通して強く感じたのは次の二つ。この大学の経営陣の人材の豊富さと、このような学生リーダーと経営陣の交流の場を設定して成功させてしまうことへの感心である。
 セッションのまとめでDr. Triphneyが学長の挨拶の前口上で最大級の賛辞を並べまくっていた。日本人が日本語でやるとおべっかかほめ殺しかと腹を探らそうな賛辞も、アメリカ人が英語でやると字義通りにポジティブに伝わるのは不思議なものである。遠慮なくお互いをほめ合うアメリカ人の文化は、アメリカという国の強さや気風を形成する重要な要素だろうといつも思う。ペンステートのSpanier学長は、一見するとやや気の抜けたケビンクライン系のオヤジ風で、アメリカンリーダー的なオーラもそんなに出ておらず、パワフルなリーダーという印象は受けない。しかし実際には数々の実績をあげ、経営者としての手腕を高く評価され、人々からの人望も厚い。私自身、自分の事業を切り開いていく過程で、いずれリーダーとしての役割を求められることが出てくると思うが、今後どう転んでもパワフル人格のリーダーシップスタイルが身につくとは考えにくい。もしかしたらこの学長のリーダーシップスタイルには何か参考になる重要なヒントが含まれているかもしれない、などと考え、さらにこの学長への関心が増した。
 今年、日本人会の会長を引き受けたものの、いつもそこはかとなく忙しくて、なんか割に合わんなと思っていたが、このリーダーサミットへの参加は、なんだかささやかなごほうびのようなものだった。将来に大きくプラスになる、貴重な経験をさせてもらった。