「キャリアショック」を久しぶりに読んだ

 最近、うちの書棚の整理を少しずつ進めていて、昔読んだ本に手が伸びる機会が多い。高橋俊介著「キャリアショック ―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか?」を手にとって、何気なく目を通していたら、結局ひと通り読んでしまった。
 この本は2000年12月に出ていて、今アマゾンを見たら、2年前に文庫本になっていた。本を開くと「日本人のキャリアの常識が変わろうとしている!」というキャッチコピーが書いてある。初版から8年ほど経った現在は、本書が指摘した変化の時代が来て、キャリアの常識が変わった世界なのかどうかはわからないが、今も本書で指摘された変化の時代のキャリアの考え方やキャリア構築の考え方は古くなっていないと思う。だから文庫本化されて引き続き売られているのだろう。
 初めて本書を読んだのは本書が出てすぐの2001年頃だったと思うが、その頃は書いてあることは何となくわかった気がしても、今一つ腹に落ちてなかった。キャリアの潮目にあって目の前の問題で手一杯で、自分のキャリアのことを全体感を持って落ち着いて考える余裕も思考力も足りてなかったのだと思う。
 今あらためて読んでみると、20代後半の自分には頭でしかわかってなかったことでも、歳を重ねて30代半ばとなった今の自分には多少なりともわかることが増えたのだなという気がする。今もその傾向はあるが、当時は自分の実力以上に背伸びして、できないこともやらない方がいいこともやみくもに無理やりがんばって、何かと「生き急いでいた」のだと思う。何をやるべきでやるべきでないかなど、経験不足でよくわからなかったし、自分の大事にしたいものが何なのかも、何を優先すれば自分は幸せなのかも、わかったようなわからないようなままに進んでいたような気がする。
 本書では、幸福なキャリアを築くには動機とコンピタンシーのマッチングが必要だという考え方を示している。自分の動機を理解するにはパーソナリティの理解が必要で、そのアセスメントツールが利用されていることが解説されている。また、企業が求めるハイパフォーマンスを出せる人材になるにはコンピタンシーとスキルが必要だが、求められるコンピタンシーやスキルを追い求めていっても、必ずしも幸福なキャリアを歩めるわけではなく、自分の動機にあったキャリアを作っていく必要があるということだ。
 そしてキャリアを切り開く人の行動、発想、アクションのパターンやポイントを整理して解説している。たとえば、「キャリアを切り開く人の発想」として、次の7つのポイントをあげている。
・「横並び・キャッチアップ」か「差別性・希少性」か
・「同質経験」を活かすのか「異質経験」を活かすのか
・「過去の経験」にこだわるのか「今後の動向」に賭けるのか
・「指導してもらえる」のか「好きなようにできる」のか
・「社会的自己意識」か「私的自己意識」か
・「合理的判断」か「直感」か
・「会社の論理」か「職業倫理」か
 いずれも、どちらがよいとかどうすべきというのではなく、個人の動機やその時のニーズで判断するポイントとして示されている。
 本書で語られている内容には、自分の転職や仕事選びの時にはそういえばそういう判断軸で考えていたなというのがいくつかあって、これまでの自分のキャリアのよい振り返りができた気がする。自分自身、これからまたキャリアの節目がくるというのもあるのだが、これからを考えるには、これまでの自分のことを振り返って少しでも今の自分を理解するための材料をもっておいた方が良いと思う。他者のことを理解するのが難しい以前に、自分のことを完全に理解することは難しいし、その時は理解したつもりでも、後で思えば実はよくわかってなかったりする。若くて経験がなければなおさらのことだ。
 このようなことを考えるきっかけを与えてくれる本というのは良い本であって、その意味では本書は良い本だと言える。10年後や20年後、これからまた変化を経た時代になって、本書で語られていることはどんな風に見えるだろうか。