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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第74号)

発行日:平成18年2月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 夢の過疎対策構想 「森林ボランティア」は可能か!?

2. 夢の過疎対策構想 「森林ボランティア」は可能か!?(続き)

3. 第64回フォーラムレポート 『みんなちがってみんないい』

4. 子育て支援−「ボランティア指導者」の評価と意見

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

子育て支援−「ボランティア指導者」の評価と意見


 ◆ T ◆  調査結果の概要

1.  調査対象者: 総数110名、調査票提出者44名(回収率40パーセント)(2学期の指導に参加しなかった指導者からの提出は少なかった。)

2.  調査方法:郵送法と留め置き法の併用

3.  評価結果の要約
(1) 「寺子屋」事業に対する評価は極めて高い。
(2) 指導者の熱意と努力、工夫の跡は歴然としている。
(3) 指導の結果、子どもの成長は極めて大、ただし、評価の視点は多様である。
(4) 指導者自身の得たところも極めて大、ただし、評価の視点は多様である。
(5) 「寺子屋」事業の存続に対する支持は全員であった。


 ◆ U ◆  質問項目は5問である

1.  子ども達の2学期はいかがだったでしょうか?先生は寺子屋のご指導を楽しまれたでしょうか?先生がもっとも留意して子ども達の指導を行なった事例を2〜3ご紹介ください。

2.  寺子屋では異年齢の少年集団を考慮した様々な活動を準備いたしました。先生方の日々のご指導の中で、寺子屋活動の教育効果がなんらかの形で見られたでしょうか?(2項選択制)

3.  「寺子屋」事業は先生の日々の生活にどのような意味をもっているでしょうか?(2項選択制)

4.  親子説明会で申し上げた通り、寺子屋では地域の子ども達の「安全」と「生きる力」の向上を目指しています。寺子屋事業の内容や方法について、ご意見、ご感想がありましたら自由にお書きください。

5.  いよいよ3月には合併が実現します。「寺子屋」事業が継続できるか、否かは政治の決断ですが、「有志指導者」の皆様のご意見はいかがでしょうか?


 ◆ V ◆  分析

1.  子どもは様々な点で確実に成長した

   次にかかげたのは子どもの成長を評価する視点の一覧である。寺子屋のプログラムは「体力」と「耐性」の向上を重視したが、指導者の評価は多様に分散した。以下は評価者の多い順に並べ直した子どもの成長項目である。

(1) 友だち仲間や集団生活への適応 17名
(2) 物事への集中力・持続力の向上 12名
(3) 物事に対する意欲や積極性の向上 10名
(4) 基本的な礼義・作法の習得 7名
(5) 家族や友だちに対するやさしい行為や思いやりの態度の実践 7名
(6) 協力する態度 6名
(7) 気に入らない状況や辛い条件にも耐えられるがまん強さ 5名
(8) 義務や役割を果たす責任感 5名
(9) 体力の向上 3名
(10) 学力の向上 2名
(11) その他(            ) 2名
(12) 言葉使いや表現力の向上 0名

2.  子どもの反応に対する指導者の感想と意見

(1) 指導者の意見は多様であった
   誰しもが子どもの成長を高く評価しているが、その視点は多様であった。選択肢を細かく分け過ぎたことが影響しているのであろうが、具体的に指導者の関心を垣間見てプログラム立案の参考になった。「集中力・持続力」と「意欲・積極性」は表裏一体であろうが、「受け身」の持続を重視する先生と「攻め」の積極性を重視する先生がいらっしゃるのであろう。

(2) 指導者は子どもの潜在能力に感動している
   「自分達が覚えられない教材を短時日のうちにマスターして行くことに驚く」とか、「指導の期間が空いた時、次にあった時の子どもの変化に目を見張る」などの感想がたくさん見られる。

(3) 評価の根拠は子どもの言動の一致である
   子どもでも言葉は飾ることができるが、基本的に行為と態度はごまかしが効かず、指導者の信頼を裏切らない。多くの指導者は子どもの言動一致を観察している。我慢強くなったことも、いたわりが出てきたことも、集中が見られるのも評価の根拠は子どもの言動の一致である。

(4) 『指導者間の意思の統一が必要ではないか?』
   どの子ども集団にも「お調子者」がいて、「寂しがりや」がいて、「引っ込み思案」がいる。子どもは指導者の顔色を読むことは名人である。従ってなめられる指導者もいる。そこに教育の面白さがあるのであるが、苦労もある。支持に従わない子ども、自分勝手にふるまう子どもに手を焼いている指導者の姿が彷佛としている。厳しい先生と叱れない先生の感想のギャップが散見された。『指導者間の意思の統一が必要ではないか?』というのはやさしい先生のご感想であろうか!子どもを服従させることは決して難しいことではないが、拙速は禁物である。

(5) 『成果にこだわり、発表会のための指導をすべきではない!!』
   寺子屋は現代の教育界とは子どもへのアプローチが異なる。それゆえ、指導の成果を保護者や指導者の皆さんに定期的にご披露して事業の意義の理解を得ようとしている。それが学期ごとの発表会である。発表会が近づくと当然立派な発表をしたいと実行委員会も、事務局も、恐らくは個々の指導者も指導に力が入る。そうした雰囲気が行き過ぎ、活動のゆとりや楽しみの過程を忘れた時、『成果にこだわり、発表会のための指導をすべきではない!!』という感想が出るのであろう。感想の背景には、「過程」と「成果」、「日常」と「非日常」、「ゆとり」と「緊張」、「普段の学習」と「受験勉強」のような関係が存在する。
   どちらを否定しても子どもの発達は上手く行かない。要は「さじかげん」であるが、指導者によって「さじ加減」の基準が異なるので、「発表会がんばれ!」というアプローチと「発表ばかりにこだわるな!」という意見が割れるのであろう。割れるくらいで丁度いい!と総括をしたら叱られるか?

3.  活動は指導者ご自身の役に立っている

   次にかかげたのは子どもへの指導が指導者自身のどんな役に立っているかを示す視点の一覧である。寺子屋の指導は大いに役に立っているが、ここでも指導者の評価は多様に分散した。以下は評価者の多い順に並べ直した「役に立った訳」の項目である。

(1) 寺子屋の生活指導を通して地域の大切さが分った。  16名
(2) 子どもの指導を通して自分自身の心身の活力・健康が向上した。  15名
(3) 自分が役立ち、自分の能力を発揮するのは楽しい。  11名 
(4) 多くの保護者、仲間との交流・コミュニケーションが向上した。  10名
(5) 育児・教育の応援をすることで多くの家族の役に立てていると思う。  8名
(6) 自分が必要とされ、やり甲斐・生き甲斐を見つけることができた。  7名
(7) 寺子屋指導は自分の家族内のコミュニケーションを深めた。  5名
(8) その他(                  )  5名

4.  指導者の自己分析

(1) 意義を発見できるのは「自分が勉強する」からである
   子どもに教えるためには自分も勉強する。自問自答もする。「有志指導者」の間で意見の交換もする。そこから様々なものが見えてくるのである。

(2) 子どものエネルギーは自然の刺戟である。
   子どもはエネルギーの固まりである。子どもは飛び回り、向上し、反抗し、はらはらさせ、指導者を多方面から挑発する。子どもの存在そのもの、子どもとの接触と指導の緊張が指導者の活力を引き出している。お元気になるのは「刺戟」と「負荷」の両方を子どもとの接触が生み出しているからである。

(3) 「子縁」の自覚
   子どもの指導は出会いの縁を生んでいる。それが「子縁」である。「お会いすることのない方々との交流」、「話をする筈がない世代との出会い」が生まれたことを感謝している。「町へ出れば、子どもから声がかかり」、これまで全く知らなかった子どもとあいさつを交わしている。「知らない人には返事もしない世の中で嬉しいこと」です。

(4) 恩返しの思想
   「育てていただいた大切なものを次世代に繋ぎたい」。「自分達は周りの大人に見守られて育った」。子どもの指導は「50年近くの生涯学習の総決算」になる。

(5) 「役に立っている」と思えなければ継続はできない
   「必要とされることは嬉しいこと」です。「娘の子育てを思えばよく分る」。「核家族/共稼ぎ家族の子育ては難しい」。指導者も実行委員会も事務局も寺子屋の活動は家族を支え、子どもの成長を助けているはずであると信じている。「信じていなければ続けられない」とは言い得て妙である。

(6) 指導者相互の協力と共同が楽しみ
   同じ目標をもち、似たような興味・関心の同志との交流が楽しみである。秘められた意欲、隠れた才能との出会いは本当に刺激的である。

(7) 保護者の世代との会話も増えた
   日本文化は礼儀正しい。保護者の多くは丁重に指導者にあいさつやお礼を申し上げる。そこから予想外の世代間交流が芽生える。指導者が自らの「社会貢献」を実感する瞬間でもある。

5.  指導者はどんなことに心をくだいているか?

(1) 「接し方」の難しさを自覚して、勉強しながら指導にあたった。
(2) 低学年時の教育がどんなに大切かを痛感して指導している。
(3) 「手は出すまい」、「叱るより誉めよう」、「平等の処遇」のは難しい。
(4) 子どもが「聞けなければ」教えられない。
(5) 「子どもと一緒に、対等に動きたい」師弟同行を目指している。
(6) 指導者の打ち合せ、事前の準備作業が大切。
(7) 子どもを「叱る時」は「理由をはっきりさせる」。
(8) 「遅い子ども」、「不得意な子ども」が挫けないように。
(9) 一人ひとりの子どもの顔と名前を憶えて声を掛ける。
(10) 「答を教えず、自分でやるように」我慢強さを教えた。
(11) まず「あいさつ」「返事」から。
(12) 子どもの表情に留意し、心身の状況に注意を払った。
(13) 「雰囲気づくり」「教材作り」「見本の提示」などに工夫をした。


6.  指導者の不満と要望

(1) 指導回数が少ない。指導者配置がアンバランス。
(2) 指導スケジュールが合わない。
(3) 指導方法に不安がある。
(4) 子どもの年齢差からくる能力差が大きく指導が難しい。
(5) 指導に従わない子どもの指導が難しい。
(6) 指導の焦点化、連続指導をしなければ体得の成果は上がらない。
(7) 学校や行政の協力が不十分。
(8) 机がなくて寝そべってハガキの書き方練習をするような状況はなんとかならないのか?
(9) 関係者以外の無関心は残念である。
(10) 子どもに「負荷」をかけ過ぎていないか?

7.  子どもの安全をどう守るか?

   「寺子屋」の存在そのものが安全の保障である。したがって、教育委員会や一般行政の姿勢が問われている。

8.  寺子屋の存続について

   ほぼ全員が「存続」を主張し、支持している。支持の理由は寺子屋の成果の評価を反映している。
 

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