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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第38号)

発行日:平成15年2月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 伝統の再点検

2. 「聞き取り調査」の声、質問者の独白

3. ペンシルヴェニア便り−大学の学習環境−、 想像力の向こう側

4. 第32回生涯学習フォーラムin津和野

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

32回生涯学習フォーラムin津和野

「選択原理」の衝撃

   初めての移動フォーラムを実験した。実験は成功であった。島根の皆さんの報告は「子どもの地域貢献」が主題であった。花田朋之さんの報告も、橋本洋子さんの報告も新しい学校の芽を感じさせた。しかし、なによりも、福岡県穂波町の森本さんの「選択制」の報告は多くの参加者に衝撃であったろう。大部分の学校はいまだ自らの殻を出てはいない。森本さんは、「教育は重要だからこそ選択の対象にすべきなのだ」と主張した。また「学校紹介のパンフレッとは保護者と地域への公約」なのだという。学校に「公約」の精神はない。恐らくはパンフレットすらもない。「外部評価は学校を活性化する」といわれると恐らくは自分が評価の対象になることとおきかえて、「反発」するのであろう。それが学力テストに反対し、勤務評定に反対して来た「学校感情」の原点であろう。

   学校施設を活用した土曜スールも耳新しいことであったに違いない。学校施設は学校行事以外に使うことは極めて困難である。社会教育法44条も、学校教育法85条も、学校資源の地域活用をうたってはいるが、戦後学校教育の歴史において、学校施設を部外者に快く使用させたことは一度もない。

   土曜プログラムを有料にしたことも注目に値する。受益者は応分の負担をするのは当然なのである。それは選択されるプログラムだからである。義務教育レベルの教育活動はすべて子どもの権利であるという主張は、先ず平等概念において過っている。選択的活動は平等でもなく、参加機会も公平ではない。土曜プログラムは有料で当然なのである。受益者の負担を原則とした上で、経済的負担に耐え得ない家族については別途の配慮が必要になる。その意味では「学童保育」も同じである。学童保育を無料にせよ、という主張が「学童保育」を停滞させたことは明らかである。津和野はどこ迄森本提案のメッセージを受取ったか。研究者の興味の尽きないところである。参加論文「コミュニティスクールの可能性」(三浦清一郎)は、生涯学習時代の約束として「選択原理」を前提として、「学校と地域」の双方向の貢献がコミュニティスクールの出発点であることを論じた。現状は、学社融合のスローガンの下に、地域が一方的に学校に貢献しているだけである。

インタビュー・ダイアローグの実験

   今回は実行委員会にお願いして、特別企画にささやかな実験を入れていただいた。「インタビュー・ダイアローグ」である。小規模の会議であればともかく、大きな大会では初めての試みであろう。前提は参加者の知識と経験への信頼である。この種の大会の参加者の大部分は、主題についてのある程度の知識を有している。時には実体験も有している。それゆえ、議論は焦点化すべきである。もっとも重要な問題点だけを抽出して、その原因と対策を論じるべきである。この仮説が正しいとすれば、これ迄のパネル・ディスカッションやシンポジュームは冗長で、まどろっこしい。事業の背景や、そもそもの成り立ちに長々しい解説は要らない。事業はどこで失敗したのか?どこが勝負の突破口だったのか?「抵抗勢力」はどこにいたのか?その論理のポイントはなにか?結果として、何が変わったのか、変わらなかったのか。最初から

最後迄短時間で核心を論じるのである。

  鍵は登壇者であろう。優れた実践者の方々をお招きした津和野実験は成功であった。実践者は問題点について強烈な実感がある。その実感に基づいて、問題の核心だけを端的に取出すことができる。それが会場を打つのである。次の機会もまた聞きたいと幾つかのお便りと励ましをいただいた。次は、第22回中国・四国・九州地区生涯学習実践研究交流会(5月の第3土曜・日曜日)で再確認をしてみたい。津和野会場の皆さんの勇気ある御協力も忘れてはなるまい。大会場で手を上げることは決して容易ではない。しかし、子ども達に表現力、交渉力を育成せよ、というのであれば、われわれもまた、「外の世界」における表現力・交渉力を実践してみるしかない。これもまた、生涯学習時代の約束であり、国際化時代の習得課題である。

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