2013年度「シリアスゲーム論」開講

 今週から東京工芸大で担当している「シリアスゲーム論」の授業が始まりました。今年で5年目を迎えました。今年はゲーム学科の教育体制変更に伴い、この授業は昨年までの厚木から中野キャンパスに移しての開講となりました。
 今年度のシラバスの概要をご紹介します。シラバスレベルでは昨年度から大して変更はないのですが、今年もさらにクエストの中身をバージョンアップして、昨年不具合の修正を行いながら授業を進めていきます。
 昨年度の学生たちは、地球温暖化、リサイクル、就活、あの金で何が買えたか、献血などの各種テーマでシリアスゲーム企画とプロトタイプ開発してくれました。今年もこちらから出すテーマか自由設定のフリースタイルテーマで企画してもらいますが、すでに「食育」と「経済教育」はこちらから出すお題に入れることに決めました。
 初回は予想より人数がだいぶ多かったので教室のPCが足りず、プロジェクタの設定不具合とか見ているうちに開始時間になってしまったりして、予定外の対応に追われつつも何とか予定を終えて乗り切った感がありました。まだ予定していた仕込が終わってないので引き続き仕込みを続けて昨年度よりも充実度アップさせて、受講してくれる学生たちには楽しくも密度の濃い学習経験を積んでもらおうと考えています。
 また成果をご紹介する機会も作りたいと思います。いかんせん講師一人で回している授業なのでやりたいことはたくさんあれど、すべてには手が回らないのが実情です。講師側からすれば、この授業の運営は毎年がチャレンジですが、今年もがんばってやりきりたいと思います。
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東京工芸大学 芸術学部 ゲーム学科(2013年前期)
「シリアスゲーム論」 シラバス
担当教員: 藤本 徹
授業時間: 月曜5限(16:40~18:10)
★授業の趣旨と目的:
この授業では、次のような学習機会を提供する。
・従来のエンターテインメントにとどまらない社会的目的で開発・利用されるデジタルゲーム「シリアスゲーム」に関心を持ち、関連する知識をより深く学ぶ
・シリアスゲームに自らの見識を持ち、将来クリエイターとしての自身の仕事に役に立つ知識を身につける
・ゲームと社会のつながりへの関心を高め、社会のためになるゲームの開発を実際に経験する
これらの学習機会をより楽しく、より密度の濃い形で提供するために、授業全体をゲームデザインのアイデアを取り入れた「クエスト型授業」として構成している。さまざまなクエストを達成しながら、実際にシリアスゲームを企画・デザインする過程を通して、シリアスゲームが社会に果たす役割や可能性を理解できる。従来の授業とは異なる運営方法や評価方法を採用しているため、本シラバスをよく読み、担当講師の指示をよく聞いて授業に参加すること。
★ルール:
・クエスト:この授業は、毎週の授業時の活動ととともに、授業時間外にチャレンジする各種のクエスト(課題)で構成されている。個人で取り組む「ソロクエスト」とグループで取り組む「チームクエスト」があり、受講者の関心や必要に応じて取り組めるクエストを用意している。
・レベル:受講生は全員「レベル1見習い」からスタートし、各種クエストをクリアして経験値を貯め、レベルを上げる。授業の最終期限までにどれだけレベルを上げられるかでこの授業の評価が決まる。
・クエストの選択の自由度:クエストには取り組み易い順序や期限付きのものが含まれるが、プロジェクト以外の個別クエストは、原則として受講者の好みや必要に応じてどの順番で取り組んでもよい。
・前提スキル:履修の前提条件は特にない。プログラミング、グラフィック制作等のスキルはチームプロジェクトにおいて有用だが、必須ではない。
・授業外のコミュニケーション:担当教員は非常勤のため、キャンパスには授業時にしか来ていない。そのため授業のアナウンスや課題提出にFacebookグループ(と補助的に電子メール)を利用する。
★勝利条件(成績評価方法と基準)
・授業で貯める「経験値」は、最終的な成績評価に直結している。上位1割程度(人数は履修者数と全体のレベルによって変動)に最高ランク「優秀者」の称号を与える。最終課題までたどり着ければ何らかの称号(と単位)が得られるが、脱落した場合にはかなりの確率で「不可」が付与される。
・経験値に対応してレベルが上昇する。各自のレベルは不定期にアナウンスされる。各レベル到達に必要な経験値は次のように設定されている。
0~700pt   Lv01~10
701~800pt  Lv11~15
801~900pt  Lv16~20
901~950pt  Lv21~25
951~1000pt Lv26~30
★経験値獲得方法:
・授業参加、ソロクエスト・チームクエストの達成によって経験値を得ることができる。(選択の幅を持たせるために余裕を多めに設定しているので、無理して取り組む必要はない)
◆授業参加:450pt
・出席とワークシート提出:30pt×15回=450pt
◆ソロクエスト:500pt
・各種スキルクエスト:30pt×10=300pt
・ソロプロジェクト企画&発表:100pt
・企画発表相互評価:50×2回=100pt
◆チームクエスト:290pt
・チーム結成:30pt
・プロジェクト準備:30pt×2回=60pt
・プロジェクト企画書:80pt
・プロジェクトデモ:70pt
・プロジェクト発表:50pt(※チームプロジェクトはソロ挑戦も可)
★参考文献:
・「シリアスゲーム-教育・社会に役立つデジタルゲーム」(2007)、藤本徹著、東京電機大学出版局
・「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(2011)ジェイン・マクゴニガル著、早川書房
・「テレビゲーム教育論」(2007) マーク・プレンスキー著、東京電機大学出版局
・「デジタルゲーム学習」(2009) マーク・プレンスキー著、東京電機大学出版局
・「デジタルゲームの教科書」(2010)デジタルゲームの教科書制作委員会編著、ソフトバンククリエイティブ
この他、関連文献やウェブサイトなどを授業時に指示する。
★授業スケジュール:
第1回(4/15)
・オリエンテーション
・ワークショップ(1)ゲームトークバトル
第2回(4/22)
・講義:シリアスゲームとは
・ワークショップ(2)クリエイターズエピソードトーク
第3回(5/2) オンラインクエスト(1):ソロクエストチャレンジ
第4回(5/13)
・講義:シリアスゲームの事例研究(1)教育への利用
・ワークショップ(3)シリアスゲーム発想トレーニング
第5回(5/20)
・講義:シリアスゲームの事例研究(2)社会問題とゲーム
・ワークショップ(4):企画トレーニング(その1)
第6回(5/27)
・講義:シリアスゲームのデザイン(1)
・ワークショップ(5)企画トレーニング(その2)
第7回(6/3) オンラインクエスト(2):ソロクエストチャレンジ2
第8回(6/10) ソロ企画発表セッション
第9回(6/17)
・講義:シリアスゲームのデザイン(2)
・ワークショップ(6)企画トレーニング(その3)
第10回(6/24)
・講義:シリアスゲームの企画各論(1)学習要素の理解
・ワークショップ(7)学習要素の整理
第11回(7/1)
・講義:シリアスゲームの企画各論(2)目的とデザイン
・ワークショップ(8)プロトタイピング
第12回(7/8)
・講義:シリアスゲームの企画各論(3)成果の評価
・ワークショップ(9)評価項目の作成
第13回(7/17) オンラインクエスト(3):グループクエストチャレンジ
第14回(7/22)プロジェクト成果発表会
第15回(7/29)
・まとめ、振り返りセッション
・ワークショップ(10)活動成果共有ワーク
(※上記スケジュールは、授業の進捗状況などの都合で日程や内容を変更する場合があります。)