考えをためて出す

 ステートカレッジ~成田の移動中の暇な時間は、帰国してからの活動計画のあれこれを考える時間になった。当面の活動計画、授業シラバス、頼まれているプレゼン準備、シリアスゲームのアイデアなど、今まで頭の中にためていた企画を一気に吐き出した。出さずにためていたものを出してかなりすっきりした。
 実はここ数ヶ月間は博士論文研究に集中するために、帰国後の活動のための企画作業はあえて全くアウトプットをせずにいた。時にものすごく考えが湧いてきて書いてまとめておきたい衝動に駆られることがあったが、簡単な備忘メモをつけるだけにとどめておいて、頭の隅に追いやるようにしていた。


 僕はこれまでずっと企画系の仕事から研究へと進んできたので、何かの企画を考えることは日常的な生活の一部になっていて、何を見ても聞いても学習とからめて考えを掘り下げたり何かの企画を考える習性がついてしまっている。これは一種の職業病で、それをやらないというのは、不自然なことだったりする。
 それをあえて今回はやらずにいたらどうなるだろうかと試してみたところがある。勢いに乗って思いついた企画にその場でのめりこんでしまうことのマイナス面を感じるようになっていたからだ。思いついた勢いで進めてしまうと、他の重要な仕事の足を引っ張ってしまうことがあると感じたのと、勢いを失うのを恐れてその場でまとめてみても、少し時間が経ってみるとたいしたものではないものもあったりして、インスピレーションに身を委ねるだけではいい企画は書けないような気がしていたからだ。
 結果として、その時にはすぐやる必要のない余計な企画を考えて時間を費やしてしまう弊害をブロックでき、重要度の高い研究活動の方に集中できたというよい効果を得た。そして、思いついてすぐ手を出さなかった企画の方も程よく寝かして熟成が進んだものと、ちょっと離れたら魅力を失ったものが選別できたという効果もあった。今回の移動の機中では、熟成して引き続きいいアイデアだと思ったものに時間をとって考えてみたら、堰を切ったように企画が進んだ。おそらくアウトプットも程よく生産性が高まっているような感触があった。
 企画の仕事をする人間は、考えることが欲求化している側面があるので、アイデアを出すのはある種の欲求のようなところがある。その欲求に従って出したアウトプットは、時に輝きを放つ黄金のタマゴのこともあれば、凡庸なウ○コのこともある。いつも優れたものが出せる人はいなくて、常に出し続けることでようやくいいものが出せるようになる。だが、その時最も求められているものを出す力をつけるには、単に拡散的に思いついたことを出し続けていてはダメで何らかの別の工夫が必要になる。
 大事なのは、考える作業を惰性や流れだけで進めてしまうのではなく、意図的に縛りをつけたり、時間軸で考えて全体的な優先順位で考えたりして、「企画する自分」のメタ認知をコントロールすることなのではないかと思う。特に企画の規模やボリュームが大きな時ほど、このコントロールする習慣が力を発揮してくると思う。