テレビ電話のある世界

 前回のエントリーで、「ゲームとテレビが数少ない息抜きのひと時」というような記述をしたところ、日本に帰ってから共に家庭を持つ予定のとある方面から問題点を指摘された。現在の留学末期の生活の一部分を表現しようと試みた記述だったものの、たしかに適切さに欠ける言い回しだったと猛省。
 日本に婚約者をおいたまま再び渡米してきて、仕事自体は楽しくても単調で気が滅入りそうな研究生活を続ける状況で、テクノロジーの恩恵を受けている面は大きい。特に今はビデオスカイプが大いに活躍している。ほぼ毎日、顔を合わせて話ができるので、他の通信手段よりも距離感がずいぶん縮まる。しかも先日帰国した際にスカイプとカメラをセットアップしたおかげで、これまでかさんでいた通信料が大幅削減されて、ケーブルインターネット代の24ドル以外には何もかからなくなった。これだけで、WiiコネクトもTivoもスカイプもブログもメールもYouTubeも(先日からようやくのニコニコ動画も)カバーされる。
 ビデオスカイプについてふと考えてみると、子どもの頃に見ていたSFアニメとかでよく出ていた「テレビ電話」の世界がもう現実のものになっていることに気づく。ほんの数年前には質も悪くてまだまだだなと思っていたものが、音と動画のタイムラグがない状態で、タダ同然で利用できる。今更の感もあるが、でもこれはすごいことだと思う。
 このサービスも既存の電話会社ではなくて、少し前にはまったく存在しなかったソフトウェア会社が実現させた。電話サービスの延長ではなく、ユーザーからすればパソコンのアプリケーションの延長で利用される形で提供されている。その業界の流れを変えるサービスは、必ずしもその業界の既存プレイヤーが生み出すとは限らないということだ。
 そう考えると、教育にしても、新しい教育を生み出し、未来の教育を支えるのは、既存の大学や教育機関とは限らない。現在の学校が満たしきれていない学習ニーズはずいぶんあり、学校のスタイルが合わない学習ニーズもある。今はSFの世界の話のような絵空事として語られていることを真面目に捉え、そこに向かっていく道筋を見極め、その実現に必要な教育サービスを作り出すことができるのであれば、それは必ずしも現在のような学校である必要はないかもしれない。少し先を見て現在の問題に取り組んでいければよい結果につながるし、今やっている研究はそんな流れにあるのだからもう少しがんばってみよう、と自分に向けた気休めなんだか励ましなんだかわからない感じでまとめつつ。