テレビのチャンネルを適当に変えていたら、CNBCで「The Business Of Innovation」という番組をやっていた(日本の日経CNBCでもやっていたらしい)。人工知能研究や教育工学の分野では「Goal-based Scenarios」などで著名なロジャーシャンク博士がメインコメンテーターとしてしゃべりまくっていたので見入っていたら、セカンドライフのCEOのフィリップ・ローズデール氏がゲスト出演していた。
彼はルックス的にもメディア映えすることもあってか、あちこちのメディアに登場しているのを見かける。今回も、この番組の後にやっていた別の番組はCNBCヨーロッパのビジネストークショーのリピートだったのだが(こちらは日本では放送してない模様)、そこでもローズデール氏が出演していた。
セカンドライフについては、日本の一般メディアで毎日と言ってよいほど取り上げられているので、どんなものかを一般の人に認知されるくらいに普及している。一年前のシリアスゲームサミットでローズデール氏が基調講演をやっていた頃は、日本ではほとんど認知されていなかったと思うので状況はずいぶん変わった。
この盛り上がりを懐疑的に見る向きも多いし、実際にプレイしている人は盛り上がりに比してそれほど多くない。メディアによって過剰に盛り上げられているのがやや胡散臭く見える感もある。これはうまくいくとかいかないとかさまざまな予測もある。世の中でさまざまな談義が行われている間、一つだけ確実なことは、セカンドライフを開発したリンデンラボは着実に次の手を打っているということだ。現時点の使い勝手や利用状況を見て判断するのは早計で、今議論されているような課題は作り手の方も把握していて、それらにどう対応していくかを誰よりも真剣に考えて前に進んでいることだろう。ローズデール氏のテレビでの受け答えを見ていると、ビジョンをきっちり語りながらも、変に浮かれたところや過剰に風呂敷を広げるところがないので、このブームに飲まれずにしたたかに波を乗りこなしているような印象がある。
もし今後、セカンドライフが失速したとして、ほら思ったとおりだ、と評論するのは簡単だけども、予測が当たったといっても何のことはない。作り手の彼らは毎日濃い経験の中で成長している。今のセカンドライフがこのまま成功しないにしても、次の成功を手にするための経験を確実に積み重ねている。バーチャル世界の重要度はこれから増して行くのが確実な中、このことをどう見るかだろう。セカンドライフに世の中が沸き立っているのは、セカンドライフ自体がすごいというよりも、先にあるバーチャル世界がリアルに入り込んだ世界の一端を垣間見せてくれているからだろう。