ゲームと非ゲームとシリアスゲーム(3)

 シリーズ3回目、これでいちおう完結です。前回の「ゲームと非ゲームとシリアスゲーム(1)」と「ゲームと非ゲームとシリアスゲーム(2)」も合わせてご覧ください。
★シリアスゲームと非ゲームの違い
 シリアスゲームと非ゲームの違いは、「それがゲームであるかどうか」にある。ゲームかどうかを分ける基準については、前回まとめたのでそちらを参照してほしいが、基本的にはそのコンテンツのゲーム性の度合いの問題で、ゲーム要素がそのコンテンツを代表するものかどうかで区別するのがよい。「ゲーム以外の要素も入ったゲーム」なのか、「ゲームの要素も入ったマルチメディアコンテンツ」なのか、どちらに区別できるかでだいたいのタイトルは整理が可能だろう。
 シリアスゲームはゲームにそのアイデンティティがあり、非ゲームは「ゲームに非ず」という点にアイデンティティがある。概念上はこの点が明確な違いとなる。ところが、非ゲームは「(従来の)ゲームに非ず」という意味でも使われていることは前回にも述べた。非ゲームのこのアイデンティティは、シリアスゲームと重なっていると言ってよい。さらに別の側面から見ると、シリアスゲームと非ゲームの共通点として、「教育・学習や何かの用途を意図したコンテンツ」というところが挙げられる。この点においても、シリアスゲームは非ゲームと概念的に重なっている。
 つまり、シリアスゲームと非ゲームは、文字通りの非ゲームという意味で捉えれば、ゲームではないという点で別のものだが、「何かの用途のための、従来のエンターテインメントゲームとは異なるゲーム」という点では同じものだと言える。
 こう考えていくと、「非ゲームはシリアスゲームか?」という質問にはイエスでもありノーでもある、その理由は上記の通りで、非ゲームという用語の持つ二つのアイデンティティのどちらを採るかで答えが変わるということになる。


★まとめ
 以上、エンターテインメントゲームと非ゲームとシリアスゲームの概念の区別の仕方について議論してきた。ここまで述べてきたことを簡単に整理して、このテーマのエントリーのまとめとしたい。
・エンターテインメントゲーム、シリアスゲーム、非ゲームとも、その境目のあたりはそれぞれに重なっており、区切りははっきりしない。
・シリアスゲームとは、「エンターテインメント性のないゲーム」ではない。エンターテインメントゲームとシリアスゲームの違いは、基本的には「作り手の意図」と「使い手の意図」の要素がその違いとなる。
・一般に言われる非ゲーム系コンテンツには、文字通りの「ゲームでないコンテンツ」と「非(エンターテインメント)ゲーム」の二つの意味が含まれている。
・シリアスゲームと非ゲームは、非ゲームの意味の捉え方によって、共通する部分としない部分が変わってくる。
 シリアスゲームの概念のさらに詳しい考え方については、拙書「シリアスゲーム-教育・社会に役立つデジタルゲーム」(藤本徹 著、東京電機大学出版局)をご参照ください。