少し前に日本で入手した「しゃべる!DSお料理ナビ」を最近よく利用している。このレシピを参照しながらここ一週間で、自分のレパートリーからは微妙に外れていた、肉じゃが、玉子スープ、ポテトサラダを作ったし、ネタに困った時のアイデア出しにも活躍している。
このソフトは、ニンテンドーDS用のお料理レシピソフトで、200種類ほどのレシピを利用できる。紙媒体のレシピには、検索の便利さで勝っていて、従来のマルチメディアレシピには、持ち運びの便利さで勝っている。検索の方法も、料理名、食材別、テーマ別などの複数の方法が提供されている。DSのハードの特長であるペン入力が活きていて、操作性もよくて快適に利用できる。ソフトの名前の通り、料理の手順を読み上げてくれるので、読まないといけない情報量も少なくて済む。
一般的にレシピの用途は、主に「料理のアイデア出し支援」という探索的用途と、「作りたい料理を作るために必要な情報提供」という検索的な用途があると思う。前者は紙媒体のレシピも結構強い。きれいな写真つきのレシピをパラパラと見ていれば、そのうち作ってみたい料理が見つかる。だが、後者の方は紙媒体だとあまり用を足さないことが多い。目次や索引が食材別、テーマ別、場面別など細かく分かれていても、もう一つ使い勝手が悪いし、情報を盛り込めばその分だけ重くなって使いにくくなる。
また、料理を作る場合、かなりハードコアに料理が趣味な人でない限りは、レシピがルーチンとして生活に入り込むのはなかなか難しいと思う。普段は手持ちのレパートリーのローテーションでレシピを参照する必要はない状態で、あるときふとテレビを見ていてうまそうな料理が出てきてから作ってみようと思ったとか、ジャガイモが余っていて悪くなるから使い切りたい、などの動機から始まる。そのためあるとき思い立ってカッコいいレシピを買ったとしても、本棚でほこりをかぶって忘れ去られるということになりがちで、たまに本棚から引っ張り出して使ってみても、使い慣れていないのでかえって効率が悪くなる。レシピのCD-ROMソフトウェアは、さらに面倒で本よりも使われる頻度は下がる。かろうじて、レシピ情報ウェブサイトは、その検索性の高さのおかげで利用されやすいが、いざ使うときは紙にプリントアウトして持ち運びよくする必要が生じる。
この「しゃべる!DSお料理ナビ」は、その辺りのデザイン上の課題をうまく消化していて、ユーザーの行動にあったデザインを提供できている点が優れている。料理のアイデア出しのためにパラパラとめくることもでき、手持ちの食材を入力して、それで作れる料理を検索できる。キッチンに持ち込んで、手順を参照しながら利用することもできる。DSでレシピという新規性だけでなく、この辺りの利便性が付加価値となっていることが人気の理由の一つになっていると想像できる。
学習支援的な要素も多い。作ったことのない料理を、手順通りに作れば美味しくできるというのはもちろん実現している。さらに、「お料理事典」として、切り方や下ごしらえの方法を項目別にしてあって、「たんざく切りってどうやるんだろう?」、「ごぼうのささがきってってどうやるの?」といった技術的な疑問も実演映像を見ながら解消できる。手持ちのレパートリーの料理においても、それまで我流で適当にやっていたところを、より簡単な方法やもっと上手に味を調える方法を教えてくれたりするので気づかされることも多い。以前は特に火加減調節はあまり気にせずに作業することが多かったが、レシピの指導のおかげで気をつけ方がわかってきた。
いくつか利用上の制約はある。実際にキッチンにおいてみると、結構水が飛んでDSがぬれることもあるのが気になる。それに音声認識が包丁でトントンと野菜を切る音を拾ってしまい、ナビゲーションのシェフのおじさんが「ん?」といちいち反応してくる。次に進む時は「オッケー」と言ってページをめくるのだが、これも途中でうざくなってペン入力でバシバシ飛ばして進むようになってしまう。この辺りは、キッチンで利用することを想定して作られていても、100%想定通りに機能しているわけではない。
それでも、これまでのいかなるレシピ媒体も凌ぐ利便性を提供しているし、マルチメディアレシピソフトウェアとしては、媒体ごとキッチンに進出できた初めてのレシピソフトではないかと思う。
つい先日、コーエーが「しゃべる! DSお料理ナビ まるごと帝国ホテル」を発売すると発表された。これも本作の利便性を踏襲しつつ、家庭で帝国ホテルの有名レストランの料理を作れるようにアレンジしたレシピが提供されるということなので期待できる。
このソフトに見られる、「ゲーム会社が主導して、ゲームで培ったインタラクティブメディアのノウハウを活かして、従来は接点のなかった業界と協力して社会に付加価値を提供する」という動きは、欧米ではシリアスゲームの枠組の中で起こっていることだが、まだコンシューマ市場でのビジネスモデルを確立するには至っていない。その一方で日本では、シリアスゲームの普及より先に、その精神とするところがよく実践され、ビジネスモデルも示されている。この辺りに任天堂をはじめとする日本のゲーム会社の持つ強みは活きており、高度な大作ゲーム分野で敗色が濃くなっている日本のゲーム会社の活路の一つがここにあるのかもしれない。
これ、いいですよね~~。これが欲しくてDSを買おうかと思っているのですが、wiiも欲しいのでかなり迷ってます。
もともと料理は得意ではないので(レパートリーが超少ない)、こういうのがあると助かるなぁ・・・と常日頃思ってました。
しかし、帝国ホテルのレシピまであるとは!あー迷う~~
>きのこさん
レシピはこっちも簡単でベーシックな和食がちゃんと入ってるので、
手始めにやるには帝国ホテルのよりもよいかもしれないですよ。
Wiiも楽しいですよ~。