シリアスゲームサミットD.C.終了

 シリアスゲームサミット二日目。朝一のセッションはMMORPG「シティ・オブ・ヒーローズ」のリードデザイナー、ジャック・エマート氏によるキーノートスピーチで、「ゲームデザイナーには朝8時半はつらい」とぼやきつつ、デザイナーの立場から教育とMMO世界の接点や可能性についてシティ・オブ・ヒーローズのゲーム世界で起こっている事例を交えつつ語ってくれた。
 午後、事前にアレンジを手伝った韓国のウィ助教授の研究グループによる発表には、40人以上の聴衆が集まり、発表内容も素晴らしくて大成功。教育用途のMMO研究の動きが活発化している中、ウィ先生のグループの取り組みはすでに実証研究を何度も行なっている点で先行しており、聴衆からの関心も高かった。
 この他にも今回のサミットは、MMO関連のセッションが豊富だった。博士研究でやろうとしていたテーマもだいぶカバーされていたり、抜けていた要素が見つかったりで、だいぶ練り直しが必要なことを認識した。プロポーザル提出を帰国後に延期したのは好判断で、最初の計画通りに無理やり終わらせていたら、かなり面倒な手戻りが発生していたことだろう。いい研究をやるには時間と手間がかかるし、自分がちょっと考えて思いつくようなことはすでに誰かがやっている。しかも、自分よりずっと勤勉で優秀な人たちが手間と時間を掛けてすでに取り組んでいるので、励みになるし張り合いがあってよい。これで日本から戻ってきたら、冬休みはまた文献に埋もれて生活する毎日となりそうだ。
 今回も結構な人数の参加者と話をしたが、海外でもシリアスゲームジャパンの知名度もずいぶんと上がっているのがわかって嬉しかった。それに来年東京で開催されるDigra(Digital Games Research Association)カンファレンスも、みんなすっかり楽しみにしている様子。特にヨーロッパからの参加者の意欲は高く、Digraはヨーロッパ中心の学会なのだなという印象を受けた。
 もう一つ今回のサミットで大きかったのは、研究、開発、会社経営とも、すでに成功したり軌道に乗ったりした経験をもとにしたセッションが出てきたことだ。シリアスゲームの動きが始まってから3年ほど経っているので、2003年辺りに着手された大規模プロジェクトやスタートアップ企業の成果も出始めている。その中で得た経験が共有されながら、次の成功プロジェクトにつながっていくことだろう。
 あいかわらず参加者の中には、「ほんとうに具体的で、すごい成果が出たという研究事例がないのが不満だ」という声もあるのだが、そんなすごい事例が出てきて、みんながいけると確信を持った頃に腰を上げるようでは遅いのである。すごい事例が出てないことに対して、「だからその分野が当たりかどうか確信が持てない」という姿勢の研究者は、残念ながら半分終わっている。何かすでに確立された安定分野の職業に鞍替えした方がよい。「その程度の研究で発表なんかしやがって、このやろう」ということであれば、研究者としてはまあ普通。別にこのやろうと思う必要は無い。まだ誰もやってなかったり、みんなが寄ってたかって研究しているのにブレイクスルーがないところでこそ研究でもビジネスでもやっていく意味があるのであって、その意味がわからない人はどんなに偉そうなことを言っていてもあまりたいしたことは無いと思った方がよい。そういうところは日本でもどの国でも同じなんだなと感じた。
 二日間通して新しいネタが充実していたので、今書いている本にもだいぶ追加したいことが増えた。もう原稿をあげているのでいろいろと悩ましいのだが、構成の中で無理の無い部分だけ追加して、後はまた別の機会に、という感じになりそうだ。