博士誕生の季節

 春の穏やかな晴天が続く中、みんな期末の課題に追われている。幸いなことに私は授業を取り終えて、修了試験も終えたABD(All But Dissertation)の身なので、この4年間で最も平和な期末を送っている。とはいえ、手放しで平和なわけでもなく、相変わらず空いた時間は片っ端から埋まっていき、仕掛かり仕事の待ち行列が積みあがっていく。一番厄介なのは、デザインしたゲームのプログラミングで、空いた時間の全てを投入してもさっぱりはかどらない。英語やプログラミングのようなスキルものは若いうちに学んでおくに限るなとつくづく思う。それに博士論文のプロポーザルも手がついていない。油断しているとすぐに時間は過ぎていく。周りにも昨年修了試験を終えたのにまだプロポーザルが通ってない人々が結構いる。
 そんな中、先週から今週にかけて、うちのプログラムから3人の新たな博士が誕生した。来週再来週でもう2人、ディフェンスが入っているので、その2人が無事にパスすれば、今学期は計5人の博士が誕生することになる。みんな一緒に授業をとっていた連中で、台湾人2、中国人1、ドイツ人1、アメリカ人1、アメリカ人だけ男で、あと4人は女性、という内訳である。うちのプログラムは教員も院生も女性が多く、男女比は3:7くらいになっていて、全体でアジア人留学生が6割以上を占めているので、アジア人女性がいちばん目立つ。
 博士研究と並行して、就職活動をすることになるのだが、留学生たちの多くは、米国内のテニュアトラック(テニュア-終身在職権、を取得できる可能性がある)の大学教員職を第一志望にしている。その次に米国内の大学や企業のインストラクショナルデザイナーなどの専門職が人気である。ひも付き奨学金などで留学してきた院生たちや、自分の国の大学などから職のオファーがあった人たちは自分の国に帰る。米国に残る人も国に帰る人も、みんなそれぞれにいい仕事を見つけている。大学院生の就職というのはタイミング次第で、年によってポジションの空きが多かったり少なかったりするし、ぎりぎりになって急にいいポジションがアナウンスされたりする。そんな不安定な中でも幸いなことに、ペンステートのインストラクショナルシステムズは、全米でも評価の高いプログラムで、教員達もこの業界では名の通った人たちなので、就職活動は比較的しやすいらしいのはありがたい。
 私自身も順調に行けば、来年の今頃には博士論文のディフェンスを終えて、なんらかの進路が決まっている状態になっているはずだ。修了試験を終えて以降、身の振り方を考えてきたのだが、自分の能力に対する評価など、軸として考える要素が日々変わっているので、これだ!という形ではまだ定まっていない。数ヶ月前くらいまでは、米国内どこかの大学でポスドクのようなポジションを見つけてもう数年研究修行したいなと思っていたのだが、最近は思うところあって、日本に帰って仕事することを前提に身の振り方をあれこれ思案している。
 でもまずは博士研究をきっちり進めて、終わるめどを立たせないと話が進まない。春の気候のよい時期に卒業したいなぁと強く思う。夏だと暑いし、冬まで引っ張ってしまうとむちゃ寒いし、ビザが切れるので更新するのが面倒だし。