先週と今週、ゲーム関連のミニワークショップを二つやった。一つ目は、「エンターテイメントゲームをプレイして学ぶ学習デザイン」と題して、Learning & Performance Systemsの院生を対象にした75分のゲームプレイセッション。教育ゲームの話題が増えていく中で、関心はあるけど自分ではゲームをやらない院生たちのために、学習の視点でエンターテイメントゲームを見ていく際にどこに焦点を当てればよいかという解説と、そのポイントごとに例として一つずつゲームをプレイしてもらって、最後に振り返りディスカッションを軽くやる、という流れ。
この手のゲームセッションは、ゲーム経験の浅い人が対象だと、ゲームがどんなものかをつかむのに時間がかかったり、つかめないままだったりして散漫になりがちなのだが、今回は参加者の中にゲーマーが一名混ざっていたおかげで、ファシリテーションのきっかけがつかめて何とかポイントをおさえた形でまとまった。教育系の研究者は自分ではゲームやらない人が多いので、ゲーム研究にせっかく興味があっても、なかなか踏み出せなかったり、踏み出したはいいけど微妙に的を外していたりするので、こういう機会を通して、リテラシーを高めつつ、よくできたゲームからインスパイアされることが必要になってくる。
もう一つは、私の博士研究コミッティの一人であるMagyが提供しているゲームデザインセミナーの時間に、私が自主研究でここしばらくデザインワークを続けてきた自作ゲームのプロトタイプのお披露目とユーザーテストのセッションをやった。今開発中のゲームは、選挙をテーマにした政治的なパズルゲームで、ゲームのコンセプトとメカニックは出来たので、それをペーパープロトタイプ化して、ボードゲームの形でみんなにプレイしてもらった。ボードゲームの盤とかコマを半日かけて工作した。こういうものつくりの作業は楽しくて、果てしなくやっていられる。そして自分の作ったものをみんなに試してもらうのも、また楽しい。今回のゲームが実質的に私の初シリアスゲーム作品で、デザインが意図通りに機能するかやや不安だったのだが、ルールを一通り理解させるのに手間がかかった以外は、みんなコンピュータが処理するところの面倒な計算も、手で計算しながら熱心にやりながら遊んでくれた。
紙のプロトタイプがうまくいったので、今度はプログラムを組んでコンピュータ上で動くプロトタイプを作ることになるが、そこは自分の手には負えない。デザイン上の工夫をすればするほど、書くべきコードが複雑になり、ますます手に負えなくなる。Magyはハードコアなプログラマなので「フラッシュなんかより、C#でやった方が断然簡単だわよ」みたいなことを笑顔でのたまう。プログラマにすればそうかもしれないが、こちらはあいにくノンプログラマである。どうしたものか。
ともあれ、自分で立てたコンセプトをもとに、プレイアブルなプロトタイプが作れるところまで来たので、ノウハウ的にはあと何種類か違ったタイプのシリアスゲームをデザインすれば、少しはものになるかなという気がしてきた。軽めのワークショップであればそんなに負担なくやれるということがわかったことも、今回の成果だった。
CBT教材や模擬操縦装置には教官が進行状況を監視する管理機能がありますね。飛行模擬装置ではコクピットの中にディスプレイがあります。操船模擬装置では部屋の中を小さく囲ったブースの中にあります。ゲームの舞台裏のデータを見ているようなものです。ゲームのことを学習する学生にも、舞台裏のデータを見せると有意義かなと思いました。ゲームを開発する時のデバッグにも役立ちそうです。
>君島さん
管理機能を取り入れたゲームの開発も進んでいるようです。
ある面、ゲームの方が訓練シミュレータよりも進んでいるところもあります。
特に米軍は教育訓練用ゲームの研究開発にとても熱心に取り組んでいます。
既存のシミュレータ技術のかなりの部分をゲーム技術をもとに開発したものにリプレースするような勢いです。
日本の自衛隊にもそういう流れがいつかくるのでしょうか。
藤本さん。私の発言の意味は、学生にゲームの外部仕様を理解させるだけではなく、ゲームの内部処理も理解させるのはどうかというアイデアです。
>君島さん
そうですか。おっしゃる通り、ゲームを作ろうという意欲を持った段階では、内部処理を理解するのは不可欠だと思います。
初心者には始めから見せても消化できないと思うので、どのタイミングでどんな形で示すかが問題なんだろうと思います。