Age of Empires IIIやってみた

 今週はAERA(全米教育学会)ウィークのため、うちのプログラムの教授陣は半分くらいサンフランシスコへ出払っていることもあり、プロジェクトミーティングがキャンセルになったりして、少しスローペースな平和な週である。それで気が緩んで、先日ベストバイ(大手電器スーパー)に立ち寄った時に、つい魔がさしてリアルタイムストラテジー(RTS)ゲーム「Age of Empires III(AoE3)」をうっかり買ってしまった。通常49ドルのところ39ドルになっていたのに釣られた。日本語版は9000円以上するので、半額以下。すごい安い。
 AoEシリーズはなんだかんだでAoE2以降は結構チェックしていたりする。何せ中学でゲームから引退して以来(ドラクエIIIくらいで引退して、スーファミもPS1もセガサターンもその辺のコンソールは一切触ったことがない)、10年以上もゲームから遠ざかっていたところを引き戻されたきっかけがAoE2で、ゲームとしての面白さよりもむしろ、進化したゲームが持つ教育的な可能性にインパクトを受けた。それは今のシリアスゲームの道に進む最初のきっかけみたいなものだった。初めてAoE2をやった時、なんてすごいゲームなんだろうと感心して、休みの日なんかにかなりの時間を費やした。なかなか飽きなかったので、ある時封印してやめた。
 いつもは買ったその日にソフトウェアをインストールするなんてことはやらないのだけど、自分の中ではAoEシリーズは今も別格なようで、今回も速攻でインストールしてプレイした。やってみるとやはり相当ヤバイ。果てしなくやっていられる。ゲームを丸二日間やり続けて死んだ韓国人がいたけど、このゲームはそんな感じでポックリ死ねるくらいに寝食を忘れて没頭できる。RPGやシューティングにはそんなに熱くならないのだけど、RTS系はかなり自分にとってツボらしい。本作は特に、グラフィックの美しさは尋常ではない。この手のゲームでこれはやり過ぎでしょうと突っ込みたくなるほどの凝り方で、大砲が建物に当たってボコボコになっていったり、兵隊が吹き飛ばされたりするところは、メルギブソンの映画「パトリオット」のよう(公式ウェブサイトのこの辺を見ると少しはイメージがつかめる)。キャンペーンモードは、アメリカ開拓史をベースにしたストーリーで、ネイティブアメリカンとの関係の部分なんかは、政治的な配慮がされた描写がされている(ゲームの詳しい内容は、公式ウェブサイトの他、4Gamerの連載がよくまとまっていて面白い)。
 グラフィックのきれいさとかはあるのだけど、プレイ感自体はAoE2の頃からたいして変わらない。それだけAoE2の完成度が高いということではあるのだけど、ゲームの楽しさと没頭度は、グラフィックやサウンドなどの効果は不可欠なものでもない。ある程度質が高ければ十分機能する。そんな効果は何もない数独のようなパズルゲームをやっている時も同じように没頭できる。ゲームルールの作り方と、デザインのバランス次第なのだと思う。そしてそれは娯楽用のゲームに限らず、学習ゲームのデザインにおいても同じことだ。教育分野で研究されているほとんどのゲームのように、糖衣で不味い薬を包んだような教育ゲームではなくて、学習がゲームプレイに丁寧に埋め込まれていて、自然に没頭できる形で学習できるゲームは、プレイ感が全く違うと思う。そういうゲームを作る技術は、教育学系の研究成果は多少の足しになっても、研究の延長線上からはそうした技術は生まれない。そこはある種、発明の世界みたいなもので、知識をベースに試行錯誤して、ちょうどよいバランスを見つけ出す作業になってくる。飛行機の発明みたいなもので、最初にライト兄弟が飛行機を飛ばすまでは、航空力学や機械工学のような研究をいくらやってもそれだけでは飛行機は飛ぶようにはならなくて、飛行機を実際に設計して微妙な調整をしながらちょうど飛ぶポイントを見出したから飛んだのだ。教育ゲームやオンライン教材は、そういう意味ではまだ空を飛んでいない。手に羽をつけてバタバタやったり、飛ぶ気があるのかわからないような方法で適当にやってお茶を濁していたりする。そういうのにはあまり付き合いたくなくて、自分がこっちだと思う方向で試行錯誤していくことに集中したいと強く思う今日この頃である。でもAoEジャンキーである限りはそれも無理なので、AoE3はそのうち封印の憂き目に合う。短い間だったけど楽しかった。ありがとう。