当サイトでオンライン版を運営している、生涯学習通信「風の便り」の編集長、三浦清一郎氏の新刊「子育て支援の方法と少年教育の原点」が学文社よりめでたく上梓された。
この本は、九州四国中国地方を中心に生涯学習研究者として活動されている氏のこれまでの講演、執筆、自治体等へのコンサルティング活動の成果をまとめたものである。タイトルの通り、子育てと少年教育に焦点を当てつつ、高齢化問題、男女共同参画、家庭保教育、学校の地域貢献、ボランティア振興など、地域が抱えている課題を分析的に捉え、状況改善の方向性を提示している。
とても参考になるのは、「教育学者としてどう社会に関わり、社会のために貢献していくか」という課題に、一つのモデルを示してくれていることである。三浦氏は社会教育の分野で長年研究を続けていて、社会教育行政にも、社会教育事業デザインにも明るい。最近の学校教育に関わる問題についても、そこらの教育書のようにごにょごにょと論点をにごしたりせずに、非常に明快に論じている。自治体での事業実践においては、教育システム変革論で言うところの、システミックなアプローチを取っていて、教育システムを全体的に捉えながら、システムの中の諸要素が調和して機能していくような形で改善策を導入している。「寺子屋」というコンセプトで導入された事業が、子育ても学校開放も高齢化対策も地域コミュニティ形成も、さまざまな問題に対応したパワフルなソリューションとして機能している。同書で紹介された寺子屋事業のその後は、生涯学習通信「風の便り」で継続的に紹介されている。
私も教育分野の研究者として今後の活動を考える上で参考にしているし、研究者としての専門性を活かして、こういうパワフルな仕事をいずれはぜひやってみたいと思う。