オンラインゲーム世界探訪記

 多人数参加型オンラインゲーム(Massively Multiplayer Onilne Game = MMOG)の世界に飛び込んでもう4ヶ月以上が経った。最初に始めたA Tale in the Desertに加えて、今一番人気のWorld of Warcraftを始めてひと月が経った。コーエーの大航海時代も手をつけたのだが、さすがにMMOG3つを並行してやるのは無理だと悟って、最初の二つに絞った。個人的にやるとしたら一番好きな大航海時代をやりたいのだが、今はそうも言ってられない。それでも多くて時間を食う。そんなに時間がないのでたぶん普通のゲーマーほどにはできてない。ATITDの方は3つくらいしかテストをパスしてないし(全部で50個くらいある)、WoWの方はレベル16(種族:人間、職業:ウォーリアー)である。ギルドにはレベル60の人たちがたくさんいるのだが、どれだけやればレベル60までいけるのか想像もつかない。


 それでも、だいぶやりこんだおかげでわかったことや気づいたことがたくさん出てきた。一番面白いと思うのが、みんな気前がよくて親切だということだ。ATITDはギルドに入ったとたんにみんな手取り足取り教えてくれるし、ギルドで貯めこんだ道具やリソースも持たせてくれた。WoWでは、200人以上いる大ギルドにいれてもらったのだけど、そのきっかけはある村でなにげに服屋に入った時、中にいたそのギルドのオフィサーが声をかけてきて、タダでシャツ作ってやろうか?というので、いいね、よろしく、と頼んだところからギルドに誘われて、入ってみんなが集まっているところに行くと、あれこれアイテムを持たせてくれて、シャツとかよろいとかもらったものを身につけると(このゲームでは装備を変えるとビジュアルに反映される)、お~これお前にぴったしだなー、とか、他にもあるぞ、これも持ってけと、まるで田舎のじいちゃんちに行ったような状態である。
 その時に知り合った別のギルドオフィサーのキャラの名前はサブローという日本名だったりする。日本人か、アニメ好きかと聞いてみたら、どちらでもなくて誰か知ってる日本人の名前をもらってつけたと言っている。ATITDの方でも似たようなことがあって、キンジローという名前に反応して声をかけてきたのがいて、そいつはアニメ好きらしくて、いろいろアニメの話をしてくるが、こちらは何のことかよくわからない。キンジローという名が気に入ったので、他のゲームのキャラに使わせろと言ってきた。この辺の出来事からすると、どうやら日本人の名をCoolに感じるアメリカ人も世の中にはいるらしい。
 それはさておき、何でこの人たちはこんなに気前がいいのか考えた。一つには苦労せずに物を手に入れたり、作れたりすることがある。ゲーム世界では資源は豊富にあり、アイテムもモンスターを倒せばざくざくと手に入り、それを売って金を作ることも容易である。何かスキルを学ぶにしても、WoWでは街に行けばいつでも鍛冶屋とか洋裁屋とかがいて、鍛冶や洋裁のスキルを教えてくれるし、習うのは一瞬で光がビカーと降り注いでそれで習得できる。スキルレベルを上げないといけないにしても、始めからものが作れる。私のキャラは動物の毛皮収集と、金属の採掘と、釣りと料理ができる。森でクマやオオカミを殺したら、その毛皮をはいで街の道具屋に売れば銅貨数枚になる。それを繰り返して金を貯めることができる。銅の鉱脈を見つけたらそこでツルハシ持ってガリガリ掘れば、銅の塊が手に入る。みんなそんな調子で物量豊富にやっているので、仲間ができたら自分の要らないものとかを気前よく分け与えるようになる。現実世界でも、金持ちの子が仲間内で気前よく、アイスをおごったり、マンガ貸したりするが、何となくそれに近い気がする。あと、学習や作業に伴う苦労がないことと、仲間が自分より強くなるとか、地位が脅かされるとかいうことに対する心配がないということも大きいだろう。MMOGの世界はそういう世界をシミュレートしているという面がある。
 もう一つ、強く意識させられることは、人間の身体は現実世界にあって、それは(将来はそうでなくなるかもしれないが、少なくとも現時点においては)現実世界で面倒を見ないといけないということだ。(オンライン上の「住民」という言葉を使う人が多いことが象徴しているように)いくらバーチャルなゲーム世界をメインに生活していようとも、現実世界の生身の身体の面倒は見続けないといけない。パソコンに向かってばかりいると目が疲れ、体力が落ちる。そうするといくらゲーム世界でいい経験をしようとも、精神的に参ってくる。外で日に当たり、スポーツをして身体を動かすことで得られる活力というのは、ゲーム世界でいくらキャラが鍛えられても得られない。ゲーム世界で自分のキャラが健康そうであるのを見るにつけ、生身の自分も健康にしておく必要があるなと認識させられる。
 Geeが言っているように、ゲームをやっていると、意味空間の認知の仕方が変わってくる。日々生活していて見るもの感じるものが、ゲームに影響を受ける。MMOGだと、人とのコミュニケーションについても変わってくる。まだどう変わっているのか説明できないし、何かすごく面白いものがトランスファーしそうなのだけど、まだそれは何だかわからない。それが何かをはっきりさせるためには、もう少し奥深いところまで入っていく必要があるようだ。

オンラインゲーム世界探訪記」への5件のフィードバック

  1. はじめまして。
    専門学校でeラーニングシステムの研究開発を行っています。といってもCRIをチョっとかじった程度です。よろしくお願いします。
    私は学生への話のネタと、社会見学のつもりで基本プレイ料金が無料になった「フリフオンライン」というゲームをやりはじめて、まだ1月ですが、今までに無い感覚にどっぷりハマりました。妻があきれるほどです。
    それと同時期に、検索エンジンgooの辞書サイトの「今話題の言葉」に、シリアスゲームの話が出ていて、シリアスゲームジャパンのメーリングリストを購読し、「私の夢&銀行」を入手し、このページにたどり着きました。
    学校では、最近個人情報保護法のからみで、教職員向けのセミナーを行いました。その中で「匿名性」が詐欺行為などの温床になっているからうんぬんという話をしたのですが、MMOGを実際体験して「匿名性もいいところがあるものだ」と思いました。もちろん一部では問題もありますが、大半の人はみんな「いい人」を演じている。気前がいい。私も実社会ではケチなのに、アイテムなんかはホイホイ人にあげてしまう。
    このブログを読んで、なるほどな、と思った次第です。WoWはGameWatchのレビュー記事(http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050701/wow1.htm)で見ましたが、私がアホなほど英語が苦手なのと、お金がかかってしまうことで躊躇しています。英語の勉強になるかなと思っても、日本のユーザのような特殊な略語や隠語が飛び交っていてはどうかと思うし・・・というところです。
    長々と書いてしまいましたが、MMOGとeラーニング、シリアスゲームには大変興味があります。金沢には会社がOK出せば(^^)行きたいと思っています。よろしくお願いいたします。

  2. デュークラさん、こんにちは。
    こちらこそよろしくお願いします。
    英語版のMMOGは、確かに略語とかはありますが、そんなにパターンは無いのでそれだけ慣れれば英語の学習にはとてもいいと思いますよ。座学よりもやはりLearning by Doingの方が効率がよくて、MMOGはそのためのいいフィールドになっています。WoWは社会人プレイヤーの割合も高いので、言葉も結構ちゃんとしてますし。
    ところで日本のMMOGなら断然「大航海時代オンライン」がおすすめです。
    匿名性の問題はゲーム内では言われているほどひどくはなくて、インチキなゲーム外取引とかに手を出さなければリスクはそんなにないと思います。やってみるとそれがよくわかると思います。
    金沢にもぜひいらしてください。

  3. ありがとうございます。
    有料版のMMORPGは、なかなか手が出せないところです(家庭を持つ身の経済的理由)。ですが、WoWなら、「英語の学習効果」を説得できれば、なんとかなるかなーと思っています。
    実は桃鉄も1月前ほどからハマって(知ってはいたがやったことがなかった)、教育効果を実感しているところです。
    ということで、わが身をもってシリアスゲームを実践してみて、いろいろ考えたいなと思いました。
    ※なぜ「大航海時代」をお勧めになるのかを知りたいのですが(過去に何処かに書かれておられましたらごめんなさい)。

  4. > ※なぜ「大航海時代」をお勧めになるのかを知りたいのですが(過去に何処かに書かれておられましたらごめんなさい)。
    簡潔に申し上げると、とてもできのよいMMOGであることと、教育的潜在価値の高さです。桃鉄をおやりになってお感じになったのに近い感動を得られることと思います。Webサイトからダウンロードして無料で2週間プレイできますよ。

  5. 教育的潜在価値の高さと聴くと、がぜん興味がわいてきました。桃鉄でのあの感動が味わえるとなると・・・早速無料プレイをやってみたいと思います。
    ありがとうございました。

コメントは停止中です。