教育研究者とゲーム

毎日新聞のWebサイトMainichi Interactiveのゲーム関連ニュースは結構充実していてたまに読むと結構面白いニュースが出ていたりする。今日はそのページではないのだが、毎日のサイトでオンラインゲームに関して教育研究者と称する人が書いた記事を読んだ。
ひきこもりに大流行の兆し インターネットゲーム 
 教育研究者を自称して、全国紙にこういう記事を出すのはやめてもらいたいと言いたくなるような低レベルの内容である。オンラインゲームがひきこもりを助長するということがその趣旨なのだが、研究者を名乗りながらもアプローチがまるで分析的ではなく、ひたすら情緒的である。人気のオンラインロールプレイングゲームをプレイして、自分の主観でよしあしを判断しているだけ。「やり始めて3カ月、私には何がおもしろいのか、さっぱり分らない。」のだそうだ。しかも結びのフレーズがこうくる。「そこには、自分よりも力の弱い者を襲い、ストレスを発散する”悪魔の心理”があった。」ルポライターがこういうものを書いているなら、別にどうでもいいのだが、この人は教育研究所所長を名乗っている。失礼ながらこういう人ほど、自分の経験の範囲外のものを理解する力がない。自分が理解できないものに「悪魔の~」とか「心の闇」とかネガティブなレッテルを貼って思考停止に陥る。分析的にものを考えられなければ、ひきこもりの子どもを助けようとしても、合理性を欠いた、民間療法的なものしか提供できないだろう。自分が思考停止するだけなら勝手にしてもらって構わないが、読者にまでそれを伝染させてしまうので有害としか言いようがない。こういう人にメディアで教育を語らせていたら、親たちはますます子どものことを理解できなくなる。
 この教育研究所所長が述べるネットゲームがひきこもりを助長するというのは、現象面を一面的に捉えたに過ぎない。弱いものいじめを助長するとか、暴力性を増すというのはネットゲームがもたらすものではない。昔からある不登校やおやじ狩りは、ネットゲームによって生じたものではない。また、ネットゲームとひきこもりを結び付けているが、そうしたゲームの性質は、ネットにつながっていることとは関係がない。オンライン同時プレイの環境が、今までにないコミュニケーションスタイルを生みつつあり、それが新しい教育につながる可能性があるのだが(たとえばこういうもの)、そうした視点はこの記事にはない。逆に、この記事をゲームを知らない親などが読むと、どのゲームも暴力的で害があると曲解するだけである。これを読んで、喜んで曲解をしてしまうような親たちが彼のお客さんなのだろうが、彼らと子どもたちの距離は離れていくばかりだろう。
 日本の自称教育評論家や教育研究者が「非ゲーム世代」に施したマイナスの教育は相当根が深い。しかし、ゲームが教育の敵ではなく、逆に最強の武器になり得るということを社会に示すいい例を提供できれば、流れも変わっていくことだろう。

教育研究者とゲーム」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。PennStateの検索で引っかかりやってきました。今はSan Diegoにいるのですが大学院からOfferをもらい、まだ行くとは決めていないのですが二週間後くらいに大学に呼ばれて訪問する予定になってます。またちょくちょく来ます。正式に入学を決めたらいろいろお伺いするかもしれません!よろしくおねがいします。

  2. こんにちは。そうですか。Penn Stateが気に入るといいですね。San Diegoからだとこっちは寒く感じるかもしれませんね。
    ここ数日でようやく雪も解けて暖かくなってきましたが。
    なんでも遠慮なく聞いてください。

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