朝8時前に起床して軽く朝食を取ったらすぐに空港へ出発。9時過ぎの飛行機でデトロイトへ飛び、12時半の便でLAへ。移動中は、読みかけたままになっていたゴールドラットの本を読んで過ごした。学期が終わって自由の身になって、ようやく読みたくても手がつけられなかった本を読める。ただ、少し本から離れたいという気もする。気がつくと、学期が終わってから休みという休みを取ってなかったので、少しゆっくり休みたい気もする。
うちに入国許可関係の書類を忘れたのに気づいた。今回帰国したときにあちこちでやる予定のプレゼンで使う予定だったデモ用ゲームの付属品も忘れた。まったく何をやっているんだか。
空港から乗り合いタクシーに乗ってホテルへ。昨日見たロスト・イン・トランスレーションを思い出した。たしかに独りで旅している時はあんな感じだなと思った。あの映画で表現している感覚は、アメリカ人でだけでなくみんな共有できる感覚だからヒットしたんだろう。日本は安全だが、アメリカは地域によっては危険さを感じるという点が違う。ホテルの近くは昼間でもなんとなく嫌な感じで、タクシーの運ちゃんにもこの辺はあまり安全じゃないから気をつけろと言われた。
荷を降ろしてさっそくカンファレンスの会場へ。受付にはMITチックなGeekな兄ちゃんたちがいた。会場に行くと、40人くらいの人々が談笑していた。レセプションというから多少は食べ物があるのかと思いきや、レモネードと野菜スティックとパンがあるだけだった。期待していたのは自分だけでもなく、話した人たちはみんなそんな様子で、ボランティアの学生が近所のバーガーキングで買ってきたのを食べているのを見て自分も買ってこないとなどと言っていた。
食べ物もないし、早めに撤収しようかなとも思ったのだが、実は案外こういう日の方が重要人物に接触するのには好都合なことがわかった。みんな手持ち無沙汰なので、暇つぶしがてらにいろいろ説明してくれるのだ。教育用ソフト会社の副社長から、新製品の歴史教育用シミュレーションゲーム “Making History”のデモを見せてもらった。第二次大戦のヨーロッパ史の主要国の長として意思決定をすることを通して、歴史の因果関係や国家間関係を理解するように作られている。ゲーム部分はターン制の「大戦略」風のつくりなのだが、教育的なユーザー支援機能が豊富に提供されている。財政や軍事などのアドバイザーがそれぞれの立場からのアドバイスを提供してくれたり、レファレンスでさらに詳しい情報を学習できたりする。しかもログも記録でき、結果のグラフやチャートも簡単にエクスポートして、授業のレポート作成等、教育の場で利用するための機能も搭載している。マルチプレイヤーゲームなので、生徒同士で対戦もでき、チャットで外交もできるのだそうだ。シナリオ編集機能があって、教師が特定のシナリオを作成できるようにもなっている。よくできたソフトなのでぜひ成功してほしいと思った。
イスラエルから来たソフトウェア会社は、親の離婚を経験した子ども向けのセラピーゲームをデモしていた。セラピストのおばさんとプログラマの若者のコンビなのだが、どうもビジネスに慣れてないといった印象だった。この分野のビジネスで経験豊かなマーク・プレンスキー氏がこのソフトに関心を持ちそうな財団や団体も視野に入れるといいよとアドバイスしてくれたのだが、あまり関心を示さずに「我々は大手販売元を探している」という返事をしていた。意欲はわかるが、ニッチなソフトなのでなかなか厳しそうだ。
帰り際に、このカンファレンスの主催者側の研究者であるKurt Squireと挨拶した。彼は歴史教育にCivilization IIIを導入した学習効果を研究した論文を書いている。彼の出身のIndiana Universityは、ISD分野ではPenn Stateとも関係が深いので、Penn Stateの教員のことも知っていた。Serious Games Japanの話は興味を持っていて、日本のゲーム業界が我々の活動に関わってくれるのを期待している。レセプションはまだ続いていたが、もう十分だと思ったので会場を後にしてホテルへ。新たな知り合いもできて、まずまずの初日だった。