ついにWii(USA版)入手の顛末

 昨日ついにWiiを入手した。日本でもまだ品薄のようだが、アメリカでもまだ品薄。発売以来何度目かの挑戦の末、ようやく手に入った。
 Wii入手の挑戦は、日本にいるときに始まった。日本に滞在中にちょうどWiiの発売日に東京に居合わせたので、発売日の早朝、たくさん売っていそうで少しは買える可能性もあるかもと思い当たる店を周ってみた。ところが、いずれも前日のうちに整理券配布終了で全く歯が立たずに撃沈。早朝販売の店で買うには、前日から並ばないと全くダメだったらしい。抽選販売の店に行けばまだ買えたかもしれなかった。一消費者としての気合不足と情報収集不足を痛感した。
 買えなかったことを残念に思いつつアメリカに戻ってきてすぐに、気を取り直して再度挑戦。近所の家電店やスーパーを周ってみたが、いつ入荷か店員も全くわかってなくて、いつ行けば買えるのか全くわからなかった。近所のゲーム屋に行ってみると、店員が入荷情報を把握していて、金曜の入荷でWiiが何台か入るかもしれないという情報を得た。
 そこで金曜に朝から出直してみると、10時の開店直後から店内にはWiiの入荷を待つ人が待ち構えていた。一人の大学生と思しき客がウェイティングリストを管理していて、私はリストの9番目になった。その後続々とWii目当ての客は押し寄せ、昼前には20人くらいがリストに名を連ねた。平日だったこともあり、客のほとんどはクリスマスに子どもからWiiを頼まれて買いに来たお母さんお父さんたち。こういう時アメリカ人たちは、知らない人とでも気軽に話すので、放っておいてもワイワイと会話の輪が広がっていく。おかげで待つ退屈も紛れる。発売日以来の苦労話や近所の店の入荷情報などあれこれ話しながら過ごした。おかげで、この近辺の購入情報はだいたい把握できた。
 待ちリストを管理している大学生は、ただの客にもかかわらず、来る客みんなにWiiを買いに来たのかを聞いて、待ちリストの説明をして店員のように甲斐甲斐しく働いていた。そのうち他の客に彼を店員なのかと勘違いする人も出るようになって、「ボクは店員じゃないよ」と何度も断りを入れていたのには笑えた。
 待つこと3時間余りの午後1時半頃、UPSのトラックが店の前に止まり、店内の人々がざわめきたった。入荷のダンボールの数は結構ある。店員が荷物を仕分けた後、9台入荷したとアナウンスした。ちょうど私の番までが購入できることになった。後ろにいた20人以上の客たちは落胆しながら帰っていった。私のすぐ後ろの10番目のおばさんが落胆しながらもまだあきらめきれずに残っていた。近い番号の人たちとは一緒に話していたのでこのおばさんがどういう事情で今日買いに来ているかも聞いていた。余りにがっかりした様子で、もうクリスマス前には買えないと話していたのがつい気の毒になって、ぼくはまたすぐ買いに来れるから、とそのおばさんに自分の番号を譲ってしまった。おばさんはとても喜んでくれて、御礼に50ドルをくれたのは嬉しかったが、結局この日もWiiは買えず、私はもらった50ドルを握り締めて帰宅した。
 その後も買い物のついでに、Wiiを取り扱っている店に顔を出しては入荷情報を確認しつつ様子を見ていたところ、「日曜のセールに合わせてこの辺の店にWii入荷する」という情報を得た。そこで日曜の早朝、夜も明けぬうちから各店を周ってみた。すると前夜から並んでいたと思しき人々が店の前で防寒フル装備で座って待っていた。どこも店の入り口の張り紙に、今日入荷しますが台数は・・台です、と書いてあって、その台数分の人がすでに並んでいたのでアウトだった。アメリカ人の購買意欲は、ブラックフライデー(サンクスギビングの早朝大売出し)と、クリスマスにピークになっており、単にWiiがほしいというだけでなく、クリスマスに間に合わせようという気合がすさまじい。今回も完全に気合負けだった。
 クリスマスが明けて26日、人々の活動が平常に戻った最初の平日ということで、案外狙い目なのではないかと思って、朝から再びゲーム屋をのぞいてみた。すると店員は、今日からUPSは動いているので入荷の可能性はあるが確実ではない、と言っている。まだ店内にはWii目当ての客は誰もいなかったので、もしかしたら入荷はないかもと思いつつ、とりあえず待ってみた。店員は客からのWii入荷の問い合わせにオウムのように同じ返答をしている。時間が経つにつれてWiiの問い合わせは増えたが、ほとんどの客はすぐにあきらめて帰っていった。
 店員の予想よりもだいぶ早い午前11時半、UPSのトラックがやってきて、商品のダンボールがいくつか入荷した。客たちは列を作り始めた。私は一番前に並ぶことができ、レジの店員と話しながら待っていた。もう一人の店員が奥に荷物を運び入れ、仕分けた商品をカウンターに運び入れる。最初に来たのはPS3が2台。PS3も品薄でなかなか買えない人気商品だというのに、客たちはPS3には見向きもせず、なんだよPS3かよ、とがっかりしている。その直後、Wiiは2台だけ入荷、と店員のアナウンスがあり、私と2番目にいた男の子が今回の幸運を手にすることとなった。列の後の客たちは落胆の声を上げながら店を後にしていった。「ここのところいつもこんな感じで、店が混雑していると思ったら、UPSのトラックが来たとたんに、あっという間に閑散とするのよ」とレジの店員は苦笑していた。
 ゲームも一緒に買うかと聞かれたが、USA版の本体には「Wii Sports」がおまけでバンドルされているので、とりあえずはそれを試してみることにして、今回はゲームは買わずに済ませた。まず買いたいと思っていた「はじめてのWii」や「おどるメイド・イン・ワリオ」は、米国発売は来年なのでまだおあずけである。リモコンも品薄でなかなか買えないのだが、この時ちょうど在庫があったので、追加でリモコンを一台購入。ヌンチャクはまだ在庫切れで買えなかった。
 こうしてついにWiiを購入できた。これだけ苦労すると手にできた喜びも倍増する。すでに世界で何十万人もの人たちが同じようにあれこれ苦労して手に入れているということを思えば、これだけ購買意欲を刺激する商品を作るというのは大変なことだと思う。それに、購買者の意識や購買者の層に変化が起きているようで、従来の子どもに買い与えるという意識から、家族で利用するものを買う、という意識に変わってきている印象がある。テレビか何かの家電品を買うような感覚に近づいているのかもしれない。
 今回なんとか買えたのは、アメリカでは発売から1ヶ月余りが経過し、気合の高かった人たちの多くはすでに購入済みということと、クリスマス明けすぐは人々の購買意欲は平常に戻っていることで、かなり買い易くなっていたということもある。XBOX360も最近ようやく普通に在庫がある状態になってきたように、Wiiもあと少し経てばもっと買い易くなるのは間違いない。それがわかっていてもあえて並んで買ってしまおうと私も思わされたという次第である。
 今回は一消費者として、今までにない多くの経験をした。列に並んで人気商品を発売後すぐに買おうとする行為自体ほとんどしたことがなかったので、その不慣れさからくる数々の失敗を経験し、「人気商品を買うこと」という領域の知識を身につけたのち、難易度も下がった頃にようやく目的を達成できたという感じである。どんな活動にも専門知識というのがあって、それはバカにしたものではないなと考えさせられた。