音楽ゲーム「Rocksmith」でギターが弾けるようになる学習環境

ここしばらく,いくつかのプロジェクトでリリース前の追い込みが重なりつつ,所属部局のあれこれの対応もあってだいぶ立て込んでいますが,その合間を縫って新たなプロジェクトを進めています。

藤本研究室の研究テーマの一つ「遊びの中の学び研究」の新規プロジェクトとして,音楽ゲーム「Rocksmith」を使ってギターが弾けるようになる学習環境の事例研究をしています。先日は「Rocksmith」だけで高度なギター演奏スキルを身につけたことで知られる,Audrey & Kate姉妹の志田さん一家を訪問してきました。

私の講演などで以前からたびたび紹介していましたし,テレビ番組にもちょくちょく出演されているので,この分野の研究に関心のある方はご記憶にあるかもしれません。志田さん一家が運営している「audrey123talks」のYouTubeチャンネルは,登録者数27万人超,最近はライブ配信もよく行なっていて,音楽系YouTuberとして活発に活動しています。Rocksmithを開発したUbisoftの主催ライブやYouTube番組に招待されて姉妹で演奏したり,Rocksmithコミュニティでは知らない人はいない著名Rocksmithプレイヤー姉妹です。

Ubisoftのライブ番組でDreamtheaterやDragonforceを披露する二人の様子

オードリーさんは,8歳からRocksmithをプレイし始めて,もう16歳。お姉さんが演奏する横で遊んでいた妹のケイトさんも,だんだんと一緒にギターやベースを弾くようになり,まだ10歳ですが,ケイトさんの方が幼い頃からこの環境で育っている分,上達も早い様子です。

今回の訪問では,これまでの活動を振り返ってその時々の様子について語っていただきつつ,ご両親の教育方針や地域の学校教育との関係の話,YouTubeやTwitchでのファンとの交流の話など,様々な側面から話を伺うことができました(訪問の様子をオードリーさんがブログに書いてくれてます。「ねこあつめ」を紹介する東大の講師さん・・・笑)。どんな環境で活動しているかを楽しく拝見しつつ,姉妹の演奏するドリームシアターの「メトロポリスパート1」とRushの「YYZ」を生で観せてもらいました。オードリーさんは普通に弾くだけでは飽き足らず,左利き用で弾いたり,足でベースを弾きながら普通にスコア95%以上で弾きこなし(もはや曲芸の域),ケイトさんのベースはRushのYYZを普通に弾けるほどの腕前(指引きがカッコいい)。最近はオリジナル曲を作曲して音楽ビデオも自分たちで制作していたり,制作したオリジナル曲がRocksmithのダウンロードコンテンツ化されたりと,既にRocksmithのプレイヤーだけにとどまらない音楽活動を展開しています。

普通にRocksmithを子どもたちに買い与えただけではここまでのレベルになることはまず無いので,なぜ志田姉妹がここまで上達したのか,どのような支援環境や関係性の中で継続してきたかを学習環境的な観点から探る事例研究です。YouTube上にその成長の過程が掲載されていることも貴重ですが,今回お話を伺ったことでとても多くの興味深い知見を得ることができました(志田家の皆さんに大変感謝しています)。多分このような研究は私しかやらないだろうというニッチな題材ですが,そういうテーマだからこそやりがいがあります。これから資料整理やデータ分析を進めて,成果発表したいと思います。