教師のスパーク

 今学期の授業はいずれも面白い。特にAliの定性的研究デザインの授業とBarbaraのID理論とモデルの授業は、いい教師の授業をライブで受けるよさが味わえる。二人とも、専門分野の知識に裏打ちされた授業の構成で、レクチャーのスキルも学生とのやり取りも熟練している。3時間の授業の中で盛り上がりがピークになる時の彼女たちの迫力はすさまじい。Aliはマシンガンのような早口で、重要な論点を圧倒的な情報量で、かつポイントを外さずに話し続ける。Barbaraはファシリテーションが冴え渡り、議論で出てきたネタをふんだんに使って、クラスを理解へと導く。


 かたや若い教師たちは、まだ知識と気合がかみ合っていないところもあるので、そこまでスパークは出てない。Brianはトーク自体にものすごく迫力があるが、まだ専門知識と技術がかみ合った凄みは出ていない。Magyももともとのキャラ的に、そういう迫力は持っていない。しかし二人とも年季の入ってスタイルのできあがった教員が持ちえないような研究の発想を持っていて、そこから学ぶことがいろいろある。
 授業自体に面白さを感じられるというのは、教育機関が提供する重要な付加価値であると思う。そしてアメリカの大学でもそのための組織的な努力というのは普通に行なわれていて、その中で育った教師というのは自然とレベルが高くなる。多くの候補者の中で力があると認められた人が教師になるシステムがある程度確立されているので、急に人材層が薄くなるということはない。もちろん日本でも、ものすごいスパークを出す教師に出会う機会に恵まれたが、2年間でこんなに何人にも出会うことは経験したことがない。海外留学経験のある大学教師がおしなべて授業が上手い傾向があるのは、いい授業に触れる機会が多いということも影響していると思う。