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生涯学習通信

「風の便り」(第56号)

発行日:平成16年8月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 180度の路線転換 −選挙に勝てる生涯学習−

2. 第48回生涯学習フォーラム報告: 地域における子育て支援の方法

3. 教育の臨界点(Critical Point) −「量」が「質」に転換する時−

4. ボランティアの失望

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

第48回生涯学習フォーラム報告
地域における子育て支援の方法


   今回はこのところ集中的に論じて来た子育て支援論を具体的に検証してみることになった。発表は、福岡県宇美町の「子育てネットワーク『うーみん』」の代表である川上利香さんと「子育てネットワークin九州」の事務局長を勤める相戸晴子さんのお二人にお願いした。片や自治体、片や全九州にわたる活動であるが、二つとも最先端の事例である。論文参加は「『子育て支援』最優先時代の生涯学習システム−公民館/社会教育事業経営指針の抜本的転換−」(三浦清一郎)である。今回の三浦論文は中身を再編集して「風の便り」56号の巻頭小論の独立の記事として紹介することにした。


● 1 ●  宇美町の実践
(1)  『うーみん』と「ゆうゆう」の誕生
   『うーみん』は子育てネットワークの名称である。ネットワークの拠点施設は「ゆうゆう」である。『うーみん』の発足は平成14年。『うーみん』の要望が実って翌平成15年「ゆうゆう」が開設された。拠点施設は古い民家の改築によるものであるが、施設の設計/運営方法を検討するにあたって、子育てネットワークと行政の協働が始まったと川上さんは指摘する。
   ネットワークの形成は町が主催した「保育サービス講習」の受講者が中心になったという。通常の行政研修では、そのような具体的結果を生まないのであるが、宇美町では行政のフォローが特段によかったか、或いは受講生の中にグループの組織化を手掛けるキーパーソンが存在したのであろう。なぜ、子育てグループが生まれ、それがなぜネットワークにまで組織化できたのか、音頭をとったのは誰か?などなど具体的な経緯を伺うのを忘れたと後で気付いた。

(2)  活動内容
   『うーみん』の活動は「選択型」である。生涯学習原理と同一である。月に一度の定例会、不定期の講演会、バスハイク、人形劇などのイベント、月1回の子育てカレンダーの発行である。当然、「ゆうゆう」の運営補助も行う。様々な親子の関係を作る支援をし、出会いの切っ掛けを作ることに重点をおいている。筆者は、論文発表の中で活用を「選択しない」保護者にどう対処するのかと、お尋ねした。選択型支援の致命傷は「選択しない」市民の支援はできないという点である。「選択権のある親」が選択しようと選択しまいと勝手であるが、とばっちりは明らかに子どもに来る。研修会でも、相談事業でも、子育て支援でも、問題は「選択しない親」にある。従来の社会教育行政はここに目をつぶって来たのである。子育て支援事業の多くも同じ轍を踏んでいる。
   同じような問題は「ゆうゆう」の運営でも起る。「ゆうゆう」もまた選択型支援だからである。子育ての場を提供しても、情報を提供しても、育児相談を開設しても、「選択しない親」にとってはネコに小判である。町は運営費に年間600万円を支出している。支援のサービスは、未就学児を抱える家族の何パーセントに届いているのか?1日平均12組の利用があると報告されたが、利用者はリピーターが多いのではないか?対象人口全体の中でサービスの受益率はどの程度か、税金を投入している以上、サービスの浸透率の点検は公民館の場合と同じく重要である。


● 2 ●  「子育てネットワークin九州」の活動プロセス 
   相戸さんの指摘は現代の子育て支援が当面する重要問題を浮き彫りにしている。まず、第1は、「子育て支援施策」が氾濫している時代という認識である。支援策が氾濫状態であるにも関わらず、明らかに少子化は止っていない。それは適切な支援策がないということを意味している。第2は親が子育ての力量を形成していないという指摘である。子育て支援は大人の生涯学習でもあるべきであるが、実際は配給と受給の関係に留まっているという分析である。親の育ち合いの「場」が必要なのはその為である。もちろん、ここでも「選択する親」と「選択しない親」の生涯学習格差は拡大する。「この指とまれ」方式の宿命である。生涯学習フォーラムと同じく、子育てネットワーク研究会も志縁の人間関係を基盤にしている。手作りの子育て支援実践研究交流会である。通称は"子ねっと研"である。

(1)  目的
   目的の第1は「子育ての担い手の主体的な力量を形成すること」である。換言すれば、「子縁」を切っ掛けに形成する生涯学習グループである。
   目的の第2は地域の実践を大切にしている人々のネットワークを作ることである。ネットワークは、活動モデルの交流と相互の学習がテーマである。子育て支援方法論の生涯学習でもある。
   子育て支援は民間の力だけでは解決しない。支援は国策であるべきである。少子化の防止は国の第1課題だからである。当然、行政との協働が不可欠である。言うは易く行うは難い課題である。行政はいまだ子育て支援の重要性を認識せず、その方法にも無知である。

  (2) 「子育てネットワークin九州」
   関係者の思いは、志と実践を共有するたくさんの人々が登場する仕組みを作りたい、ということである。したがって、実行委員会もできるだけ多くの方々が参加できるよう地域移動型を工夫した。開催資料ではプロフィールを大切にし、人々の出会いを演出している。賛同する学生ボランティアも歓迎している。「子どもの実行委員会」も試行している。最大のテーマは「出会い」である。そのために事前学習会やサロン、交流会や夜なべ談義など随所に交流の仕掛けを設けている。

九州大会のスローガンは「根を張れ、つながれ、九州交流集会2004」である。スケジュールは以下の通りである。

日時: 2004年10月2日(土)12:45−10月3日(日)12:00
会場: 福岡県社会教育総合センター
(820ー2402 福岡県糟屋郡篠栗町金出3350−2)

詳しいプログラムは事務局長の相戸晴子さん(092−947−3511代表)までお問い合わせください。また、インターネット御利用の方は以下のアドレスにどうぞ。

http://www.nopr.jp/~konet/

 

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