シリアスゲームとゲーミフィケーション

 昨日、日経ビジネスオンラインの「超ビジネス書レビュー」で拙著を取り上げていただきました。
『シリアスゲーム』で社会問題を解決! ~マジメと娯楽は両立できる(日経ビジネスオンライン 超ビジネス書レビュー)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20110902/222404/
 この本書いたのは、もう4年前になるのですが(もうそんなに経つのですね・・・)、ここ最近、ゲーミフィケーションがバズワード化して急に一般層へ広まりつつあるので、その流れで関心を持っていただく方もおられるかと思います。
 それで最近もシリアスゲームとゲーミフィケーションの違いが分からないとか、同じものなのかとかという質問をいただいたり、ツイッターでそういうつぶやきを見かけたりすることもあります。
 たしかに似たところもあるし重なっているところも結構あります。分かりにくいところが誤解される向きもあるかと思いますので、少し解説しておこうと思います。
 まず、シリアスゲームとゲーミフィケーションの共通点は、「ゲームの社会的用途への応用を志向している」点にあります。
 シリアスゲームの関心は、エンターテインメントゲームの分野で発達したデザイン手法や関連技術をエンターテインメント以外の分野で活用する、というところにあります。ゲーミフィケーションもこの点は共通しています。シリアスゲームの以前から存在するゲーミング&シミュレーションという研究分野も同様です。従来のゲーム産業にとってはニッチ領域であるというところも共通点と言えば共通点でしょう。
 一方で、シリアスゲームは、あくまでゲームとしての枠組みでの社会的用途でのゲーム開発と利用を志向した考え方ですので、メディアの形態としても「ゲーム」として開発されるものが多いです。この点、ゲーミフィケーションは、ゲームデザインの手法やゲームメカニクスの要素を活かしてエンターテインメント以外の分野のサービス開発に活かそうという考え方ですので、メディアとしての形態はゲームであることにはこだわっていないところに一つの違いがあります。
 シリアスゲームは「ゲームの中に社会的テーマを取り入れたゲームの開発や娯楽以外でのゲームの利用」であるのに対し、ゲーミフィケーションは「もともとゲームでない社会的な活動やサービスにゲームの要素を取り入れて、ユーザーの満足度や利用継続を図る活動」という点が大きく異なります。
 また、シリアスゲームはソーシャルゲームの普及以前からの取り組みであることから、ソーシャルゲーム以前の従来型ゲーム産業からの影響が大きく、ゲーミフィケーションは、新興のソーシャルゲームのサービスやデザインからの影響を色濃く受けている点も違いと言えるでしょう。
 シリアスゲームの枠組でゲーミフィケーションを捉えると、「アドバゲーム」と呼ばれる企業プロモーションや営利活動促進のためのゲーム利用に近い流れにあって、むしろ「アドバゲームのソーシャル化とモジュール化」という側面が強いように見えます。ソーシャルゲーム以前の伝統的なゲーム開発者が見ればあまりゲームっぽくないものをゲームとして売っているソーシャルゲームの台頭があって、そのなかで「ゲームっぽくないゲーム」にユーザーが慣れてきたことが、ゲーミフィケーション普及の背景にあると思います。
 シリアスゲームとゲーミフィケーションを対比してみると、いくつか面白い論点があって、事例とか、海外で起きている議論なども面白いので、折を見て取り上げたいと思います。