ギターヒーロー2の学習支援機能

 Guitar Hero II が11月上旬に発売された。前作Guitar Heroの発売時はものすごい売れ行きで、しばらくは在庫無しの状態で推移していたが、今回は豊富に流通しており、店側もギターコントローラーのでかい箱を置くためのスペースをわざわざ用意しているおかげで、クリスマス商戦の販売機会損失は免れているようだ。
 私も日本から戻ってきてさっそく入手して、暇をみつけては遊んでいる。続編の宿命で、初めてプレイした時の強烈なインパクトはないものの、プレイ感覚の良さは前作と同じで、さらにいろんな曲を楽しめるところがよい。今回もMegadeth、Rush、Heart、Motley Crue、Gun’s N’ Roses、Danzig、Avenged Sevenfoldなど、かなり濃いところが選曲されている。個人的には前作よりも馴染みのない曲が多いなと思ったりしたが、ボーナス曲でVoivodが入っていたりするところに心奪われた。こんな選曲では日本で受けないと思うが、これで十分にマーケットにアピールして、売上ランキング上位に入るというところがさすがアメリカである。床屋でVan HalenどころかOzzyまでかかっている国だけのことはある。デトロイトタイガースの若いピッチャーが右腕の炎症で故障扱いになっていたのが、よくよく調べてみると単にこのゲームをやり過ぎただけだったという話も出ていたりする。FMラジオを聞いていても話題にのぼっていたりするし、このゲームの収録曲はよく耳にする。
 前作から新たに追加された機能に「プラクティス」モードがある。このプラクティスモードはすごい。プレイしていてクリアできない曲が出たときなどに、このモードを利用すれば、自分の苦手なパートだけを選んで、スピードを落として反復練習できる。次々とクリアして、だんだんレベルが上がってくると、ある段階でどうしても弾きこなせないパートのある曲が出てくる。そういうときにこのプラクティスモードは真価を発揮する。前作では曲の始めから最後までプレイする必要があったが、今作はギターソロならギターソロ、コーラスパートが苦手ならコーラスパートだけを選んで集中特訓できる。できないことをできるようになるには根気が要るが、このモードはその負担を軽減して、上達するのを支援してくれる、優れたパフォーマンスサポートシステムになっている。また、前作から新たに追加された要素として、結果表示の際に、パートごとの達成率がフィードバックされるようになった。これを見ると、自分がどのパートができていないかも数字で把握できるので、プラクティスモードと合わせて参照するとさらに学習効率が良くなる。
 この機能を使って反復練習をしていると、自分ひとりではできないレベルまで練習に没頭できる。それを続けていると、少しメタな認識として、広く物事の上達の仕方への認識が変わってくる。今まで挫折していたいろんなこともこんな感じで捉えれば、もう少し上達できるんじゃないかという気になってくる。何か一つのことに打ち込んでやることの効能には、こうした物事への取り組み方のメタな認識が高まることにあると思う。このギターヒーローはそうした一つのものに打ち込む支援をしてくれ、結果として密かにプレイヤーの学習そのものへの認識に作用している面があるように思う。
 技能獲得のためのいわゆるEPSS、エレクトリック・パフォーマンス・サポート・システムの優れたモデルの一つとしても参考になるので、音楽好きで学習支援テクノロジーに関心のある人にはぜひ試してもらいたいゲームである(ギターヒーローはUS版のみしか出てないのだけど、日本ではコナミの「GuitarFreaks V2 & DrumMania V2」にもプラクティスモードが追加されているそうなので、おそらくだいたいのところはイメージできるはず)。