執筆はかどる

 今日はひたすら本の原稿を書いていた。昼頃開始して、食事やうちの金魚の水槽の掃除などして息抜きしながら、約12時間、正味7時間くらいひたすら書いた。だいぶはかどって、一つの章をほぼ書き上げた。これで全体の4分の一くらい。こういう日があと4回くらいあれば、計画通りに初稿があがる可能性もでてきた。
 本を書いて出版するというのは、音楽活動で言えば、曲を作ってアルバムを出すのに近い気がする。部屋にこもって物書きが本を書いているのは、ミュージシャンにすれば曲を書いてレコーディングしているようなものである。一冊の本を書こうとすれば、本はおそらく二百数十ページくらい、音楽のアルバムは50~60分くらいがだいたいの量的な目安で、それくらいのところを目指して創作活動を進める。
 量的なものは創作の結果であって、表現したいものに合わせて決まっていく性質のものだが、それでもだいたいの世の中の相場というものがある。CDの容量以上は物理的に入れられないし、それ以上になると、2枚組仕様ということになって、扱いが変わってしまう。逆に40分以下のアルバムは、買う側側にすればあまりお得感が無い。かといって、相場に合わせて適当に詰め込めばいいというものでもない。無理して曲数を増やしても捨て曲ばかりでは、アルバムとしての全体の価値が下がってしまう。
 これは書籍についても同じである。だいたいの世の中の相場があり、その枠を意識しながら創作活動は進む。一章の区切りが一つの曲で、一章、一曲当たりの長さはまちまちで、全体のボリュームの枠の中で何章、何曲入るかが決まる。今のところ7章立てで進めているので、オリジナルで全7曲。
 ネタ的にこのボリュームに到達しない場合、対談形式の章を入れて厚みを出すという手がよく使われる。企画として面白いものはそうする価値があるが、やり方が拙いと単なる埋め草原稿になるし、かなりうまくやっても、読者の思考にシンクロしにくいので、読みづらいものになってしまうことが多い。巻末に資料的なものを詰め込んで量を増すということもよくある。これも便利なこともあるが、実際にはあまり利用されない。著名なゲストに序文や解説を書いてもらうという手もある。これは音楽アルバムのボーナストラック的なお得感を高める場合もあるので、ベターな手段ではある。
 それから、一番多いのが、過去に雑誌や何かで書いたものや講演の内容に加筆修正して原稿化するという方法である。音楽であれば、シングルやミニアルバムとして出したものをアレンジし直して収録するようなもので、これは蓄積があれば一番確実な方法である。
 今回の執筆作業では、過去に発表した小論や講演をもとにして、一部アレンジし直しながら、あとはリフだけ使って曲全体は全て書き直すような形で進めている。過去に書いた時にはそれがいいと思って書いたものであっても、今見たら何じゃこりゃという感じのものも結構あって、ボツ原稿置き場には結構な量が溜まっている。一方で、調子が出てくると、ものすごくいいフレーズに転化できることも出てくる。この辺りの感覚はとても創作をしているという感じがする。
 最初は、一部のトピックを切り出して別の論文に仕立てて、懸賞論文に出したりしようかなどと欲張って考えていたが、実力のない新人がそんな余計な色気を出しても二つヘボい作品ができるだけだろうと思って、この作品の精度を上げることに集中することにした。すると余計な雑念が減って、おかげでペースが上がった。力の無いものが下手に欲張るもんじゃないなとつくづく思った。
 オールジャンルでアピールしてビッグヒットを飛ばせる本は書けない。でもこのジャンルに興味がある人にしてみれば、捨て曲無しのしっかりしたコンセプトアルバムとして気持ちよく楽しんでもらえて、さらにはこのジャンルの市場を少しは拡げるようなものに仕上げたい。それくらいのネタはあるし、多少の下積みもしてるはずで、よけいな色気を出さずに集中すればきっとできるだろうと願いつつ。