昨日6月28日に、東京大学・大学総合教育研究センター公開セミナー 「世界最大の『学び方を学ぶ』コミュニティ作り」を開催しました。
今回は久々に200名規模の公開セミナーを企画から当日の進行まで担当しましたので、無事に終わって安堵しました。思えば福武ホールのラーニングシアターでのイベントは久しぶりで、以前BEATセミナーを担当していた頃からもう4年ほど経っていて懐かしく思えるほどです。
今回のセミナーでは、コーセラで190万人以上の受講者を集めて最も成功したMOOCの事例の一つとして知られる「Learning How to Learn」の講師でミシガン州オークランド大学のバーバラ・オークリー教授にご講演頂き、Q&Aセッションで日頃オンライン教育に携わっておられる教員の方々や、学習者の立場で来られた多様な職業・年齢層の参加者の方々からの質問にお答え頂きました。
講演は、「Learning How to Learn」で扱っている学習法の話や、MOOCで学ぶ意義、MOOCを作ることの可能性など、オンラインコースの作り手にも学び手にも興味深い内容でした。
作り手側の我々にとっては、オークリー教授がこのコースの開発にかけた費用がわずか5000ドルで、自宅のガレージを簡易撮影スタジオ化して、リタイアした夫のフィルさんが一から撮影や編集スキルを学んで制作したものだったということが深く感銘を受けた話でした。
地方大学の普通の大学教員だったオークリー教授が、まるで日曜大工のように材料を揃えて、自宅で夫婦で作った「DIY MOOC」とでも言うような手作りオンラインコースを公開したら、世界中からものすごい反響があり、瞬く間に世界的人気講師になって講演依頼が次々入るようになったという話です。これは大学の組織的な活動の成果というよりは、むしろ人気You Tuberのサクセスストーリーに近い印象です。
何億円も投資してMOOCに参入したのに、受講者が集まらずに撤退した米国の大学の話や、巨額の開発費をかければ質の高いコースが作れるわけではないという指摘もありましたし、世界の有名大学のようなリソースがなくても、コース開発の工夫と、講師の運営へのコミット次第で、世界で勝負できるオンラインコースを提供できるという、MOOC時代の可能性を象徴するような事例です。
実際、「Learning How to Learn」を受講するとわかるのですが、講師自身からのコメントや参考情報が豊富なメルマガが毎週届いて、継続的に学習者をサポートする講師の熱意や、ボランティアとして活動する学習者が学習コミュニティの核となっている様子が伺えます。
我々も東大で今後どういうスタンスでコース開発に取り組むべきかを考える上で、とても参考になる話を聴くことができました。
なお、このセッションの模様は、大学総合教育研究センターが運営する「東大TV」で公開される予定です。