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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第107号)

発行日:平成20年11月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 教育公害の足音

2. なぜ家事はそんなに辛いのか

3. 豊津寺子屋の男女共同参画

4. 「一筆啓上家族への便り」

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

豊津寺子屋の男女共同参画

1 「保教育」の理念も「コミュニティ・スクール」も早すぎました

 男女共同参画理念の実践として出発した「豊津寺子屋」も5年目の半ばを過ぎました。3町合併後の行政は、子育て支援は「発達支援」であり、「働く女性の支援」であり、「少子化防止策」であり、熟年者の「地域活動のステージ」であり、「コミュニティ・スクールの創造」であり、要は、「福祉」と「教育」と「まちづくり」を融合した「複合機能」なのだということをついに理解しませんでした。
役場の事務局は「男女共同」係から「福祉」へ、次に「住民課」へ、今は「生涯学習課」へと変わりました。合併した新しい2町への広がりも実現しませんでした。「保教育」の理念も「コミュニティ・スクール」も明らかに早すぎました。行政の縦割りも変わりません。女性の立場に立つことを忘れた現行の「子育て支援」策をもって「少子化」を止めるということは不可能であると断じて間違いないとおもいます。
 「保教育」方式の「豊津寺子屋」を実現した自治体にも、ついに女性課長は誕生しませんでした。女性の願いや発言が大事にされないことは明らかであり、顧問を務めた筆者の力不足もまた明らかになりました。それゆえ、来年の春には顧問職を辞することを決めました。出発の原点に戻って、これまでの実践の点検をしておきたいと考えました。今回は、指導場面における男女共習の原則がまもられているか、否かの確認をしてみました。

2 男女共習は守られています

Q1  「男の子だろう!泣くんでない」などと叱っていますか?

A:   男の子だから、女の子だからと、叱り方の区別はしていません。叱る時は「行為」を叱り、できるだけ子ども自身を叱らないように注意しています。男女とも、好ましい言動やファッションについては、「頑張っているね」、「やるね!」、「似合うね」、「かわいいね」などとほめています。禁止事項は「止めなさい」、「だめです」、「イエローカードです」等と叱ります。それでも効き目がない時は「なんかい言ったら分かるか!!!」と大きなこえで叱ります。最後の最後は塾長が尻を叩きます。

Q2  男の子と女の子で日常の活動準備、掃除、キャンプ、魚釣り、料理、芋掘りなどの作業に際して役割を分担していますか?

A:   性別の役割分担はしていません。すべての作業は男女共通です。寺子屋は「異年齢集団」から構成する班別の小集団なので、学年による「能力差」・「体力差」に基づく作業分担を考慮するときはあります。しかし、掃除、準備、後始末など義務的作業については男女の性別による区別はもとより、年齢による区別も出来るだけしないようにしています。

3 女子児童の活躍範囲は著しく拡大しました。

Q3  プログラムに男女別の取り組みはありますか?

A:  男女すべて一緒です。寺子屋が実施するカヌーからニュースポーツまであらゆる身体活動を男女共同にしました。山登りも、釣りも、芋堀りも、料理も、裁縫も、染め物も、お手玉も、おはじきも、キャンプファイアーの薪積みも、男女共習です。多くの子どもは、「豊津寺子屋」の存在なしに体験することはなかったであろうことをたくさん体験しています。特に、「女の子らしさ」の中に閉じ込められていた女子児童の活躍の地平線は格段に広がったと思います。

Q4  班別活動の「班長」さんは男の子でしょうか?

A:  リーダーの選出に男女一切の区別はしていません。女の班長さんもたくさんでました。幼少年期から女子児童の多くが仲間集団の協力と秩序の維持を担当し、リーダーシップの何たるかを学んだ筈です。名簿の順序から責任の重さまですべての活動を男女混合で行って来ました。

Q5  「男の子」と「女の子」は意思決定や発言において対等でしょうか?

A:  当然です。すべて対等です。

Q6  言葉使い、礼儀、作法などの指導で男女の区別をしていることはありますか?

A:  いわゆる「ジェンダー」の最も反映される領域ですが、指導上の区別は一切していません。髪型、服装、坐り方などで「女の子」が指導者から「かわいい」、「似合う」、「ちゃんと坐ろう」などのコメントを受けることはあるかもしれません。それらは髪を「三つ編み」にしているとか、スカートをはいているとか、リボンを付けているとか、子どもの置かれた場面に応じたものです。

Q7 励ましや賞賛で男女の区別をしますか?

A:  一切していません。最も使われる殺し文句は「君だったらできる」です。挑戦を褒め、練習を褒め、努力を褒め、可能性は無限だと励まします。「努力すればできるようになる」。「筋がいいではないか!」。「将来が楽しみだな」。そして集団を叱り、集団を褒めます。12月13日(土)9:30-は3学期寺子屋の発表会です。「君だったらできる」と褒められて来た子ども達が論語カルタ100句の朗唱に挑戦します。


 

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