2015年のMOOCの動向を振り返る

edSurgeに「MOOCs in 2015: Breaking Down the Numbers」という2015年のMOOC動向のまとめ記事が出ていましたので、この記事をもとに、日本語で少し解説を加えて紹介します。

2015年は、当初のMOOCへの関心の過熱ぶりはひと段落した感がある中、利用者の拡大や教育システムとしての普及に向けた取り組みが着実に進展している様子が示されています。

MOOC情報サイトのClass Centralのデータをもとに、以下のような点がコメントされています。

・MOOC登録者数は約3500万人にのぼり、2014年の約1700万人からほぼ倍増。Coursera(約1700万人)がMOOCプラットフォーム登録者数の半数近くとなっており、英国のFutureLearnが2014年の80万人から300万人に大きく伸びている。

・550以上の大学・機関から約4200コースが提供されており、2015年中に新規開講がアナウンスされたのは1800コース。

・コース内容は、キャリアアップにつながりやすいICTスキルやビジネススキル系のコースが増加し、人文社会科学系のコースが減少したが、バランスよく幅広い分野のコース提供が行われている。

・プロバイダーの新規参入は、アート系教育に特化したMOOCプラットフォームのKadenzeのみ。提供コース数の割合ではCoursera, edX, Canvasの順で、昨年と同様の傾向。

・提供コースの言語は、昨年と同じく英語が最大でスペイン語、フランス語が続く。ローカルMOOCのコース数増や、英語で提供中のコースの多言語化が進んでおり、16か国語で提供されている。

・2015年中に開講された新規2200コースのうち、Class Centralのユーザーレビューで評価が特に高かった上位のコースは以下の通り。有名大学ばかりでなく、テーマも幅広いです。

  1. A Life of Happiness and Fulfillment (Indian School of Business & Coursera)
  2. Introduction to Programming with MATLAB (Vanderbilt University & Coursera)
  3. The Great Poems Series: Unbinding Prometheus (OpenLearning)
  4. Marketing in a Digital World (UIUC & Coursera)
  5. Fractals and Scaling (Santa Fe Institute & Complexity Explorer)
  6. What is a Mind? (University of Cape Town & FutureLearn)
  7. Algorithms for DNA Sequencing (Johns Hopkins University & Coursera)
  8. Mindfulness for Wellbeing and Peak Performance (Monash University & FutureLearn)
  9. Programming for Everybody: Getting Started with Python (University of Michigan & Coursera)
  10. CS100.1x: Introduction to Big Data with Apache Spark (UC Berkeley & edX)

・Class Centralのユーザーレビューの大学への評価ランキングは以下の通りです(5コース以上MOOCを提供している大学で集計)。

  1. Santa Fe Institute
  2. Monash University
  3. Case Western Reserve University
  4. San Jose State University
  5. Australian National University
  6. Yale University
  7. The University of North Carolina at Chapel Hill
  8. University of Melbourne
  9. University of Queensland
  10. Wharton School of the University of Pennsylvania

これらのランキングは、Class Centralのユーザー分布も影響している感がありますが、THEなどのトップ大学ランキングで見られるものとはだいぶ異なっています。

2015年のトレンドとして以下の点が挙げられています。

・ビジネスモデルとして修了証発行からの収入拡大が進展しており、複数コースをまとめたセット受講プログラムの開発が進み、100以上のプログラムが提供中。UdacityのNanodegrees、CourseraのSpecializations、edXのXseriesとして提供されている。

・edXは大学との単位互換を推進して、アリゾナ州立大のグローバルフレッシュマンアカデミーで初年次教育科目の単位が提供されるなどの動きが進展。

・無料のコース修了証(受講認定証)の発行が廃止され、Coursera、edXとも修了証発行は有料に。コース受講無料で、有料のオプションサービスの開発が進みつつある。

・常時開講コースへの移行が進み、800コース以上が常時開講でいつでも受講できるようになった。当初は大学の授業をモデルにして期間を区切った形で提供されていたが、初回のみで再開講の予定が公開されていないコースが半数以上出ているなど問題があり、運営モデル自体が変わりつつある。

・高校生向けのコース開発が進む。特にedXとFutureLearnで大学入学準備や試験対策などのコースが提供されるようになり、高大接続に貢献する学習支援ツールとしてのMOOC利用の可能性が示された。

・実験的にMOOCに取り組む段階からシフトして、国際的なオンライン教育プラットフォームとして定着に向けた動きが進展した1年で、具体的なビジネスモデルの確立や既存の教育システムとの連携に向けた試みが目立った。

2016年は継続性確立のため、各プロバイダーで有料サービス開発が進んで、無料で提供される学習の場はさらに限定的になるのではないかという予想で締めくくられています。

また、Times Higher Education に先日掲載された記事「Moocs: international credit transfer system edges closer」では、欧州、北米、オーストラリアの6つ大学が連携して、MOOCの単位互換システムを準備中であることが紹介されています。MOOC参加大学の国際会議の様子を見ると、このような動きは他にも出てきそうな気配で、今年はMOOCを軸とした国際的な大学連携が進展する動きも進みそうです。