最近、何となくひげをのばしている。日本にいる頃、というよりもつい最近まで、自分がひげをのばすとは想像してなかった。まあ、のばしているといっても、ちょっとあごひげがのびてるだけである。ヒゲ族の人々からみればたいしたことはない。というのも、のばしてみて気づいたのだが、私は案外ひげが薄い。鼻ひげなんてのばそうものなら、明治政府の下っ端役人のような貧相な感じになってしまって始末が悪い。それに下手にのばしっ放しにすると、遭難した山男のようになってしまう。ひげ初心者の壁に当たって思案したあげく、思い立ってWal-martでひげトリマー(18ドル也)を購入して使ってみた。使ってみて、なるほどヒゲ族はみんなこういうのでちゃんとみんな手入れをしてるのだなと納得した。これまで知らなかった新しい世界である。
自分で試してみることで、他の人のひげののばし方などによく気がつくようになった。しかし、いまいち自分のヒゲ面に慣れず、逆にきれいにのばすのもめんどくさいなと思ってそろそろやめようかと思っていたところ、私にとってのヒゲ族の頭領であるDr. Peckに久しぶりに会った。「おや、ひげのびてきたな」とニコニコしながら言われた。不思議なもので、その時を境に何となく、ヒゲ族の一員として認められたような気がして、悪くないなと思うようになった。ヒゲに限ったことではなく、何にしても環境や文化による影響というのは強い。周りにスモーカーが多ければスモーカーになりやすいし、デブが多ければデブにもなりやすい。なので何かを始めたり止めたりしたいときは、環境的な要因に目を配って、影響の強いところにあえて自分の身をおくというのは賢い戦略だと思う。