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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第57号)

発行日:平成16年9月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. Second Stage: 「寺子屋」パイロット事業の第2段階−汗の結晶と政治家の英断

2. 「寺子屋」事業総合化計画の手順と方法(案)

3. 「教育の無い保育」と「保育の無い教育」

4. 二つの質問−生涯学習の幸運

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

お知らせ

第50回生涯学習フォーラム
【日時】 平成16年10月16日(土)15時−17時、のち「センター食堂にて夕食会」
【場所】 福岡県立社会教育総合センター
【テーマ】 (仮)「素読、朗誦、暗唱の教育論」
【事例発表者】 佐賀県多久市 柿木スミ子(元多久保育園保育士)
【参加論文】 (仮)「朗誦に見る『型』、集団活動に見る『型』」(三浦清一郎)

フォーラム終了後センター食堂にて「夕食会」(会費約600円)を企画しています。準備の関係上、事前参加申込みをお願い致します。(担当:朝比奈)092ー947ー3511まで


編集後記   真珠湾

  観光バスには、イタリア人がいた。スイス人も、台湾人も、オーストラリア人もいた。主流は当然アメリカ人である。日本人は筆者だけであった。ワイキキの浜は日本人が占領しているかのように見えたが、戦艦アリゾナの記念墓地は気が重いのであろう。「俺は"赤ん坊"だったのだ。関係ないよ」と思っても、胸の中にはちいさな棘のような億劫な思いがあった。国家の歴史は後世の国民にも重くのしかかるのである。パールハーバーはまぎれもない太平洋戦争の起点である。日本ではRemember Pearl Harbor(パールハーバーを忘れるな)というスローガンだけを聞いている。アメリカ側がどのような説明をするのか、気が重いのはその辺に原因がある。アメリカ側に日本の宣戦布告を故意に遅らせる政治的駆け引きがあったと主張しても今更後の祭りである。日本側全権大使のもたもたした頼り無い動きの映像を見ながら、"いつもこれだ"と納得してしまう。歴史は単純な事実を好む。事実として、真珠湾攻撃は宣戦布告前の奇襲である。不意打ちは今も昔も「卑劣」である。まして、当時の事情に照らして、相手の立場に立てば許し難い背信行為であろう。真珠湾以降アメリカが一気に結束して戦時体制に突入したことは周知の事実である。後日、ソ連が日ソ不可侵条約を一方的に破棄して中国戦線に参戦した事実を思い起こせば、日本人にも彼らの思いが理解できるであろう。
  戦艦アリゾナは今も海底に眠っている。メモリアルは戦死者も含めアリゾナそのものを真珠湾の記念墓地としたのである。ツアーは連日満杯でフェリーで艦上に渡るまで2時間?3時間待ちは当たり前という話であった。待ちくたびれた頃にわれわれの順番が来た。始めに奇襲攻撃の映像と組み合わせた歴史の解説があった。 


それぞれの歴史
  救われた事はバスガイドも戦艦アリゾナの映画解説もフェアーであった。事件の説明が感情的にならず、偏らず、当時の背景を客観的に説明していた。列強の帝国主義的植民地政策についても、英米蘭中のABCD包囲網のことも、対日石油禁輸のことも語られていた。戦争に限らず、歴史的事実はその時代の歴史的背景を抜きには語れない。現代の価値観で解釈すれば評価が歪むのは避けられない。記録映画の中のルーズベルト大統領の演説だけがRemember Pearl Harborと語っていた。それぞれの歴史解釈がある筈である。「卑劣な奇襲」という声も多い筈である。筆者が「行きたくない」と感じたのはそのことである。奇襲攻撃の映像を見れば大平洋艦隊が「戦時」に突入していたとは思えない。歴史解釈の巾の広さも、感情的説明の抑制も、アメリカが大人の国だという証明なのである。


それぞれの「今日」を煮込んでなべ囲む
  アリゾナから戻ってアメリカの家族と夕食に出かけた。3組の夫婦であったが、誰も真珠湾の事を語らない。それぞれの「今日」を煮込んでなべ囲む、の雰囲気であった。
  この句は出雲市の林みゆきさんの作である。「伊藤園」のお茶の缶に記されていた。私が感じた居心地の悪さをみんなも感じたのであろう。私に対する配慮もあったのであろう。真珠湾は奇襲なのである。日本外交の敗北なのである。作戦を立案した山本五十六司令長官の苦衷は察するに余りある。われわれの話は「それぞれの今日」の話題に終始した。
 


『編集事務局連絡先』  
(代表) 三浦清一郎 E-mail:  kazenotayori@anotherway.jp

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