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生涯学習通信

「風の便り」(第57号)

発行日:平成16年9月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. Second Stage: 「寺子屋」パイロット事業の第2段階−汗の結晶と政治家の英断

2. 「寺子屋」事業総合化計画の手順と方法(案)

3. 「教育の無い保育」と「保育の無い教育」

4. 二つの質問−生涯学習の幸運

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

「寺子屋」事業総合化計画の手順と方法(案)

● 1 ●  三つの目標
  (1)  子どもの居場所を確保し、活動プログラムを導入し、「生きる力」を向上させる。「生きる力」の中身は「体力」/「耐性」の育成を土台として、その上に「基礎学力」/「道徳的実践力」を培い、併せて各種の社会的活動体験によって「思いやりや豊かな感受性」を育てる。

  (2)  熟年ボランティアを中心とした有志指導者を発掘し、地域の活力を向上させ、併せて熟年指導者自身の「生きる力」を保持存続する。熟年の「生きる力」も少年のそれと基本的な相違はないが、子どもの指導を通した心身の活用によって、これまでに培った心技体の維持に努め、併せて子どもの指導を通して社会貢献を実践し、熟年期の役割と自尊感情を保持する。

  (3)  ウィークデー及び長期休暇中の寺子屋事業の恒常化に努め、「養育支援」のシステムを確立し、学童期の子どもをかかえる女性の社会参画条件を整備する。

● 2 ●  「寺子屋」プログラムの機能と役割
   小学生を対象とした「寺子屋」事業の中核機能は「保育」と「教育」を統合した安心で、安全な「居場所づくり」+「活動づくり」である。

● 3 ●  「寺子屋」事業の内容と方法
 (1)  放課後及び休暇中の子どもの居場所を確保し、異年齢の集団を組織化して、子どもの多様な活動を展開する。

 (2)  全小学校における「寺子屋」事業のシステム化によって、学童期の子どもをもつ家庭を支援し、特に、女性の就労及び社会参画の条件を整備する。

 (3)  対象は小学生、1年生から6年生までとする。

 (4)  活動場所は学校施設の開放によって確保する。

 (5)  活動の指導は町の内外から熟年を中心とした指導者を募り、研修、登録、指導プログラムの立案によって「寺子屋」有志指導者グループを組織化する。

 (6)  活動プログラムは「有志指導者」の指導可能領域を勘案の上、立案する。

 (7)  プログラムの時間帯は従来の「学童保育」の時間帯をモデルとして工夫する。

 (8)  パイロット事業の経験に鑑み、「寺子屋」プログラムへの参加は「有料制」とし、「有志指導者」に対しては行政判断による若干の「費用弁償」を行う。

 (9)  万一の事故に備えて指導者には指導を依頼する行政の責任で、参加児童にはそれぞれの家庭の責任で安全保険をかける。

 (10) パイロット事業の成果を踏まえて、活動方針及び指導の原則を継承し、参加児童の保護者からは「寺子屋」プログラム及び活動指針に対する同意書の提出を義務付ける。

● 4 ●  「寺子屋」事業総合化の前提となる行政上の準備作業とシステム整備の原則
 (1)  町行政は地域における子育て支援システムを確立するため、2004年度のパイロット事業を踏まえて、2005年度から「寺子屋」事業を全小学校に導入する方針を確立し、公表する。「寺子屋」の総合化事業は保育と教育を統合した「保教育」の事業である。それゆえ、従来から実施して来た学童保育にあたる「児童クラブ」や「放課後遊び場広場」事業など「子どもの居場所」に関する事業は、「寺子屋」事業の下に総合化する事を町行政の方針として確立し、公表する。

 (2)  「寺子屋」事業の拠点として、放課後及び長期休暇中の学校施設をコミュニティに開放できるよう行政は施設管理上の必要な措置を講じる。

 (3)  行政内部の意志決定及び連絡調整のシステムとして町長の責任指導に基づく「寺子屋」事業総合化委員会(「寺子屋プロジェクトチーム」(仮))を創設する。プロジェクトのメンバーは事業の実現に関連する人権対策課、住民課、生涯学習課、教務課および既存の実行委員の代表を想定する。必要に応じて拠点とする学校の代表者を加える。

 (4)  2004年度パイロット事業の経験と成果に鑑み、プロジェクトチームの主管担当課を人権対策課(女性政策係)とする。

 (5)  パイロット事業の最大の問題点は事務局の過重負担であった。それゆえ、事務局体制の強化を図る為、現在、児童館及び小学校の学習施設に配置されている学童保育担当の「指導員」を人権対策課(女性政策係)の下に配置転換し、事務分掌を女性政策係の指揮下に置く。

 (6)  通信、連絡、印刷、広報、記録など指導事務以外の事務作業が集中する時期に合わせて、年間4か月程度の季節的なアルバイトの雇用が可能となるよう予算措置を行う。

 (7)  「他薦制」を厳守し、50−80人程度の「有志指導者」の追加募集/研修/登録/指導計画の作成を2004年度内に完了する。

(8)  パイロット事業の第1期を担当した現行の「実行委員会」を強化すると共に、新規に「寺子屋」プログラムを導入する小学校区に「(仮)実施準備委員会」を組織化する。

 (9)  従来の活動に支出された経費は「寺子屋」事業費として総合化し、財政当局の指示の下で一括管理が可能となる方法を採用する。

 (10)  「有志指導者」に対しては労働の対価は支払わないが、コミュニティの感謝の象徴として指導活動に対する費用弁償を予算計上する。当面の指導回数は、「130人×8回×3小学校」程度、指導回数換算2880回分(1指導時間は3時間を基本単位とする)を想定している。

 (11)  2005年度の実施を目指した総合化事業の準備作業は2004年度内から開始する。それゆえ、行政内部及び議会関連の事前了承が不可欠である。

 (12)  「寺子屋」事業は、2004年度のパイロット事業を含めて、行政と民間の「協働」を前提とするPublic Private Partnershipの方式(自治体経営における民間活力の活用法)による典型的な事業である。事業の方式に多くの人々が慣れていないので町行政は有志指導者への感謝を表明すると共に、行政方針を内外に公表して事業の哲学を追認することが肝要である。指導の成果は言うまでもないが、予算上の行政効率は想定される指導回数換算2880回分の指導謝金を「時給650円×時間数」で計算して、費用弁償費の総額と比較してみれば一目瞭然であろう。
     また、「見えない計算」であるが、寺子屋の指導活動によって活力を取り戻した熟年層が医療や介護の世話にならないことによって生ずる町の「回避支出」を想定すれば財政上の効率は更にアップする。

5  パイロット事業から確認した「豊津寺子屋」の哲学と原則
  (1)  選択的参加の原則と有料制
  「寺子屋」プログラムは家族が選択する。したがって、参加しない家族に対する行政サービスと税金還元の公平を期するため、パイロット事業が確立した一日/100円の有料制を継承する。料金の負担に耐え得ない家族に対しては現行のルールの範囲内で適切な行政的支援を行うものとする。

  (2)  対象は小学校全学年、異年齢集団の活動の重視
  児童期の保育と教育の重要性に着目し、異年齢集団の教育効果を最大化するため、全学年から希望者を募集する。ただし、学校施設の開放や十分な有志指導者の確保など前項に列挙した行政上の前提条件が整わない場合には、限定募集または地区を限定した開講もやむをえない。

  (3)  「寺子屋」プログラムの制約
   「寺子屋」はボランティアの貢献に依存している。活動プログラムの内容は「有志指導者」の指導能力の範囲内で工夫する。


  (4)  パイロット事業の成果の継承
  「寺子屋」運営の原理・指導原則・活動のきまり等はパイロット事業の考え方を継承する。

  (5)  生涯学習の視点に立ち地域の多様な資源のフル活用
  学校を拠点としながらも、「夏休み寺子屋」が実施したように、町内外の生涯学習施設や自然条件を活用したプログラムを引き続き工夫する。

  (6)  子どもの元気、指導者の元気、女性の元気、保護者の感謝
  三つの元気と保護者の感謝がカギである。「寺子屋」活動と保護者をつなぐ「寺子屋通信」や「有志指導者」の社会的貢献を認知する広報活動などには鋭意努力を続ける。

  (7)  認定研修の徹底
  安全・安心の観点から「寺子屋」の「有志指導者」は、すべての認定研修プログラムを終了しない限り指導者としての活動は許可しない事を厳守する。「有志指導者」の認定講習は「子どもの現状理解」と「指導方法原理」の二部構成とする。
  また、2004年度のパイロット事業のなかで例外的ながら指導時間の遅刻、無断欠席など子どもの安全にかかわる事態も生じたので、2005年度からは不適切な指導態度を徹底排除するため「有志指導者の活動原則(仮称)」を策定して指導の安全と厳密を期すものとする。

 

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