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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第44号)

発行日:平成15年8月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 「受動と擬似」環境からの解放 −少年の「日常」とは何か?−

2. ようやく、学校開放! 繰り返すか?独善と蒙昧

3. 「非常」の顔

4. 第37回生涯学習フォーラム報告 「サマープログラム」

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

第38回生涯学習フォーラム

日時:9月20日(土)15時〜17時

場所:福岡県立社会教育総合センター

テーマ:男女共同参画の進展

発表者:交渉中

参加論文:男女共同参画寸劇

ーシナリオII「みやこ小学校6年さくら組」の背景(仮題)(三浦清一郎、永渕美法)

フォーラム終了後センター食堂にて夕食会

事前参加申込みをお願い致します。(担当:肘井)09ー947ー3511まで

 

編集後記−「宿題解決夏休みキャンプ」をやろう!

      −学校外「アウトソーシング」と「学習契約」の実験−

  夏の終りである。月見草に幽かに秋風が立ち、ツクツクボウシが蝉しぐれになると胸を締め付けられるように切ない。そのようにして少年の日が終わったことが昨日のことのように懐かしい。夏休みは日本の季節感を際立たせる。

   ペンシルヴァニア大学の藤本 徹さんから日本の新聞記事がメールで届いた。情報化時代と一言で言うが、アメリカから日本の新聞記事を教えてもらうというのだからすごい時代に生きているものである。記事は8月13日の毎日新聞、中身は「夏休み宿題」のアウトソーシング(戦略的外部委託)である。筆者は「学習契約」の実験と解釈している。今井文恵記者の手になるものであった。

『「宿題ビジネス」が大盛況だという。5泊6日すべてお任せのキャンプも今夏、登場した。忙しい親たちに代わって、宿題も“外注”される時代なのだ。

 日本旅行が主催するのは、その名も「夏休み宿題解決キャンプ!」。南アルプスのわき水で有名な山梨県白州町で8月8日から5泊6日し、自然の中で、宿題に取り組む。

 すでに締め切ったが、18人の参加児童は造り酒屋や町役場を見学しながら自由研究の「ネタ」を探す。研修を受けた大学生や大学院生のリーダー3人が相談相手。図鑑や辞書、顕微鏡なども主催者が用意していくという。もちろん、宿題のドリルをしてもいい。

 小中学生向け自然体験ツアーでは実績を積んできた同社だが、6日間の「宿題解決」企画は初めて。事務局の小山重幸さんは「自由研究や感想文に苦労する親御さんからの希望が多く、新設しました。今回も最後の5日目の夜は『追い込み』で大変でしょうね」と話す。キャンプ期間中は親は安心。過去のツアーでは、親だけで別の旅行に出かけたケースもあったという。(以下省略)』

    ここにはビジネスと同時に「学習契約」の発想が根底にある。指導者をアウトソーシングするという戦略も見える。生涯学習フォーラムが関心を持って来た分野の課題である。われわれも、第一線から引いたらNPO法人『少年クラブ』を結成して、一緒にやろうと言い暮らして来たプログラムである。残念ながら、いまだ実行には及ばなかった。生涯学習の「請負」システムを商売人に先きを越された、というのが実感である。われわれ自身、過去の経験から子どもの宿題の解決などは簡単なことである。

   「少年クラブ」にとって、宿題は「仮」の看板である。本命は子どもの態度と姿勢を一変させることである。巻頭小論で論じた通り、子どもの日常は受動的で擬似環境にどっぷりと浸かっている。礼儀作法もなっていない。この状況を打開するためには能動的で、子ども自身が活動するプログラムの面白さを教えなければならない。当然「生きる力」の基本となる「体力」と「耐性」のトレーニングは必修の課題である。一週間程度の合宿ではできないのが残念であるが、保護者の信頼が得られれば繰り返して実施する。やる以上は結果を出して世間に納得していただく。英語を教えながら子ども達の礼儀作法を指導した大学院時代のアルバイトを思い出す。礼儀も作法も社会生活上の「表現」力である。数カ月で一変した子どもを見て親が感動したことを覚えている。親の願いは、「親思い」で、「人生に立ち向かって行く子ども」の顔が見たいということである。「少年クラブ」を立ち上げる日に備えて当方の体力・気力を鍛えておかなければならない。折から、ふたりの友人を「むなかた市民学習ネットワーク」の「有志指導者」に推薦した。いつかはご一緒に「少年クラブ」の指導をやってみたい。それを思えば、熟年の「生きる力」の重要性は少年のそれに劣らない。

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