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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第102号)

発行日:平成20年6月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 男女共同参画の核心-「なぜ家事はそんなに辛いのか!?」

2. 非権力行政」としての「社会教育」推進

3. お知らせ: 第84回生涯学習フォーラムin行橋-福岡

4. 形式と内容 -社会的承認と親睦のさじ加減-

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

お知らせ  

1  住民主導の保教育プログラム
8月23日(土)10:00-「豊津寺子屋」夏休み発表会
   場所:みやこ町豊津公民館大ホール
   問い合せ先:福岡県京都郡みやこ町教育委員会生涯学習課(0930-33-3114)

2  学校発「放課後子どもプラン」
8月29日(金)9:00-
神田小学校「放課後子どもプラン」第1回発表会
土曜日と夏期休暇のゆとりと充実:学校施設のフル活用-「学童保育」と連携-地域人材の投入
場所/問い合せ先:山口県下関市立神田小学校(下関市豊北町大字神田2519-1、
0837-86-0006、FAX86-5091

3  「学童保育」が主導する保教育
8月30日(土)9:00-
第2回「井関学童保育の夏休み子どもプラン」発表会
保育と教育をつないだプログラム。お盆を除く毎日実施。学校の理解を得て「学童」が地域と組めばここまでできる発表会。
場所/問い合せ先 山口県山口市阿知須、山口市立井関小学校内学童保育

4  福岡県桂川町 桂川東小学校創立50周年記念発表会

   日程:11/22(土)
   内容:「子どもの生きる力」をどう表現するか―「桂東朗唱組曲」ほか
 


■■■■■ 編集後記: 「白蓮幻想」 -「JR九州・浪漫鉱脈」- ■■■■■

  朗唱プログラムの編成に関わっているので、最近、詩や歌を読むことが多い。それも中高校生時代に愛読した藤村や白秋や晶子や啄木、牧水までさかのぼり,少し新しいところでは立原道造、三好達治、中原中也、伊東静雄、伊藤整などを拾い読みする。中年期に「甘い」と思って投げ捨てていた詩歌がこよなく胸に沁みるのである。
  折しも仕事の途中のJRの駅で「浪漫鉱脈」という「石炭」を主題とした観光パンフレットをもらった。若き日の柳原白蓮を表紙に飾った九州各地の旅の案内である。当の白連は細面の,いかにも慎ましやかな美しい女性である。仕事が終わったあともパンフレットを捨てきれずに家に持ちかえって机上に飾った。幻と現の交錯はここから始まる。もとより、天皇家の姻戚だというこの情熱家の女性には会った事も、生い立ちについての知識もない。彼女が嫁いで数年を過ごしたという伝説の石炭王、飯塚市の伊藤伝衛門邸は近年有名になったが筆者はいまだ訪れたこともない。事実にあまり興味はなく、彼女の哀しそうな眼差しだけが独り自分に語りかけているような気がするのである。彼女の数奇な運命についてはパンフレットの中の瀬戸内寂聴さんの短い解説を呼んだに過ぎない。それでもこの方の遠くを見つめるような、どこか哀しい眼差しは筆者の幻想を掻き立てる。我が人生のどこかで確実にお逢いしたことがあると思うのである。ぼけの始まりと思われても仕方がないが,熟年期の筆者には「熟年幻想」とでも呼ぶべき妄想がある。それは過去と現在を重ね,現と幻をだぶらせて余り不思議と感じない感情である。過日,山口県連合婦人会の総会でお目にかかった幹部のみなさまは例外なく先輩女性の活動家であったが,お茶をいただく四方山話の合間に彼女たちの若かりし日が彷彿と眼前に現れる。私は今どなたと話をしているのか、と思わず己に問う時もある。時に自分の年齢も忘れて話に夢中になっているのは、過去の彼女たちに話しかけているのではないのか?若かりし日にはかくのごとく語り,かくのごとく振る舞ったに違いないと確信のもてる方もいらっしゃる。現実の人間を己の想念が幻の人間に作り替えるのである。
 実に不思議なことだが、この世には時々,過去に間違いなく見た風景や逢った人が登場する。外国語ではデジャブ(de・javu)という。心理学用語では「既視感」と呼ばれ,「初めて経験したことが以前にも経験したように感じられる錯覚」をいう(岩崎民平編の英語辞書、研究社)。de・javuは英英辞典ではalready seenの意味である。筆者の熟年幻想の大部分はこのデジャブである。すでに人生を長く生き過ぎたのかもしれない。九州へ来た後の白連は伊藤伝衛門を捨てて、孫文の辛亥革命を支えた宮崎滔天の息子宮崎龍介と駆け落ちして、貧しい生活を添い遂げたという。白連の幻を思いながら久々に詩ができた。どこかまぼろしへのラブレターの響きになった。

幻のひとに

かのひとが不在の日々も
かのひとはまなかいに佇み
われを見つめるかのように
われに語りかけるかのように
そこにいる

かのひとはわが想い
かのひとはわが憧れ
かのひとはわが青い空

われは
折々に
振り返り
耳を澄まし
かのひとを基準として
勉励に身を処す

かのひとが喜び
かのひとが頷き
かのひとの励ましが届き
かのひとの微笑をさそえるよう
わがふるまいがふさわしく
わが行いが正しく
わが声もまたかのひとに届くよう
残された日々の遠くを見て暮らす

たとへ人がかのひとを幻だと言うとしても
現にかのひとはわが想いに実在し
わが日々を律する
かのひとはわが日々を飾る花となって咲き
風となってわが人生を吹き抜ける
 


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(代表) 三浦清一郎 E-mail:  kazenotayori (@) anotherway.jp

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