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風の便り

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生涯学習通信

「風の便り」(第62号)

発行日:平成17年2月

発行者:「風の便り」編集委員会


1. 憧れの先生

2. 「自主学習」時間の時間割 −放課後児童健全育成事業のジレンマ−

3. ゆとり教育の崩壊−プログラムの不在−

4. 第54回生涯学習フォーラム報告

5. MESSAGE TO AND FROM

6. お知らせ&編集後記

「自主学習」時間の時間割 −放課後児童健全育成事業のジレンマ−

  新年度の準備に追われる「豊津寺子屋」の実行委員会では、「自主学習」環境を制御すべき具体的なプログラムの設定を巡って種々意見の交換が行われた。以下は具体的な「自主学習」時間割を作成する上で配慮が必要であると指摘された考え方や活動プログラムの中身と方法の一覧である。


1  「自主学習」を子どもの自主性に任せてはならない
  「保教育」の概念を全面に打ち出した「豊津寺子屋」事業がいよいよ新年度から本格的に始まる。学童保育の担当者が苦労したであろうように、「豊津寺子屋」でも、平日の放課後は、一度に子ども達は集合できない。子ども達が全員揃わない前半の1時間30分と全員が揃う後半の1時間30分はプログラムの対応を工夫しなければならない。学校の授業はさみだれ式に終わる。それゆえ、前半は、三々五々に集まってくる子ども達を収容して、静かに自主学習をさせなければならない。特に、今回は学校の協力が得られて、初めは、本校舎内の三つの教室に、順次、授業の終わった子ども達を収容する。それゆえ、低学年の授業が修了しても、高学年の授業は続いていることになる。集合した子ども達が走り回ったり、大声を出したりすれば、授業の妨害になるばかりか、預かった子ども達の教育効果は吹っ飛んでしまう。当然、「寺子屋」は信用を失い、"それ見たことか!"と学校側の失笑を買うことになるであろう。宿題をしなさい、本を読みなさい、というようなことでは保教育の指導をしたことにはならない。しつけの行き届いていない子ども達に「自主学習」を指示しただけでは事は全く解決しないのである。「自主学習」といいながらも、自主性が確立していない子どもの自主性に任せて放置すれば、「自主学習」環境は崩壊する。恐らくは、これまでの学童保育が苦労したであろう「自主学習」のジレンマがここにある。かくして「自主学習」といいながらも、全学年の児童の授業が終了するまでの約1時間30分の活動の「中身と方法」が問われることになる。それが「自主学習」の時間割である。学童「保育」が学童の「保教育」になるためには「自主学習」の時間割が決め手である。

2  「授業の束縛」からの解放

  わくわくする時間ーくつろぎの時間をどう始めるか!? 授業が終わって帰ってくる子ども達は解放感に溢れていることだろう。それを再び「自主学習」とか「宿題サポート」という固い「学習」概念の中に閉じ込めてしまうのは「酷」というものである。しかし、校舎内では高学年の授業が続いているのだから、スポーツや遊びに外を駆け回らせるわけには行かない。授業から開放された「くつろぎの時間」が必要であり、子ども達のエネルギーの方向転換を図る「わくわくする飽きない時間」の工夫が不可欠である。全学年が揃うまでの「待機」時間は、『自主学習ー宿題サポート』の総称で呼んでいるが、中身は子ども達を「学校授業の枠」から解放できるわくわくするような楽しいことから始めなければならない。学童の「仕事」が勉強であれば、授業は「義務」であり、授業の終りは「義務」からの解放である。「義務」は束縛であり、その反対語は自由である。それゆえ、学童のくつろぎの時間は自由の感覚に溢れた「義務」からの解放でなければならない。当然、「仕事」の反対語は「遊び」である。室内遊びから自主学習時間割を始める理由がここにある。


3  低学年の自由感溢れる遊び

  低学年児童は長い集中や緊張には耐え得ない。だからこそ学校の授業も早く終わるのである。それゆえ、放課後の低学年の活動は気楽にくつろいで、楽しめる室内遊びから開始するのは必然である。しかし、学校の授業が平行して行われている以上、「寺子屋」の1時間目は通常、身体活動や大掛かりな遊びには使えない。体育館も、運動場も高学年児童が使用している可能性が大きいからである。
それゆえ、遊びは室内遊びに限定せざるを得ない。もちろん、室内遊びと言っても、中身は子どもの活力を取り戻し、好奇心や興奮をかき立てるようなものを工夫する事が重要である。授業に集中していたことを前提にすれば、気も、心も、肩や首筋、背中や足腰等の肉体も、がちがちに凝り固まってしまっているだろう。彼らが自由時間に奇声を上げて走り回り、ボールを蹴りまくるのは肉体と精神の凝りと固さをほぐすためであることは言うまでもない。しかし、「自主学習」の時間帯はまだ校舎内で高学年の授業が続いているのだから、凝り固まってしまった心身をほぐすにしてもそれなりの手だてが必要になるのである。まずは寝ころんで背伸びをすることから始める。それゆえ、畳やじゅうたんを敷いた家庭科室を使うのが理想である。寝転んだり、車座に坐ってできる活動はなにか?それがカルタや読み聞かせであろう。紙芝居もいい。将棋やトランプゲーム、碁なども室内ゲームには適している。子ども達が十分リラックスしたら、次は「宿題サポート」に代表される自主学習を始める。まずは気息を整えるための音読である。先生に従って一行ずつゆっくり声を出して読んで行く。高学年生を含めて、全員が揃ったら又音読があるので、「初めの歌」とは別に俳句カルタや短歌を応用すればいい。子ども達が気息を整え、気分を一新した段階で宿題はもちろん、読み聞かせ、読書、漢字の練習、計算練習、音読練習、カルタ取り、作文練習、家族や友だちへの手紙の練習、スケッチ、その他子どもが騒がない工夫をした室内遊びを導入することができる。


4  低学年による整理整頓活動

   通常、学校の授業は4時30分には終わる。1?6年までが揃えば、原則として、運動場や体育館に集合することになる。そのため、4時15分には使用した本校舎内の教室を清掃し、翌日からの学校活動に支障を来たさないように配慮しなければならない。本活動開始前の整理整頓は、日常の生活習慣を確立する上でも、社会的役割や責任を教える上でも重要な機会である。指導者は掃除の手順、整頓の方法、グループごとの役割と責任の分担などを徹底することが重要である。掃き掃除はもとより、寝転がったところはふき掃除が必要である。タオルも絞れない近年の子どもには絶好の練習機会である。遊びに使ったカルタでも、碁将棋でももとの箱に収め、学校の備品類は指導者の指示でもとの場所に戻す。整理整頓は教室を利用した低学年の児童の役割であり、責任である事をしっかりと教え、整頓活動を習慣化することは自立の第1歩になる事は疑いない。「来た時よりも美しく」は「寺子屋」活動の原則であることは言うまでもない。
 

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