2008年02月23日

Serious Games Summit GDC 関連記事まとめ

 今年のGDCも盛況のうちに終了したようです(参加者の皆さまおつかれさまでした)。最初の2日間で開催された「シリアスゲームサミットGDC」の模様を紹介する記事が、各ゲーム情報サイトや海外のシリアスゲームブログに掲載されています。今年もライターの皆さんやシリアスゲームブロガー各位がいい記事を書いてくださってますので、順不同で一覧にまとめてみました。

Game Developers Conference 2008が米国サンフランシスコにて開催(GameWatch)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20080219/gdc_01.htm

“Serious Games Summit”レポート:シリアスゲーム情勢を通して見る、世界の中の日本(GameWatch)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20080220/sg.htm

東大研究員がシリアスゲームの現状を報告、”本当のシリアスゲーム”を見抜くために(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/1213712_1124.html

シリアスゲームの現場で奮闘するElectronic Arts(4Gamer.net)
http://www.4gamer.net/games/047/G004713/20080219041/

以下、英語のシリアスゲームサミット記事と、Wii Fitなど、興味深かったGDC関連記事です。

SGS Keynote: Sawyer, Smith On Serious Gaming For Life (Gamasutra)
http://www.gamasutra.com/gdc2008/index.php?id=17445

SGS: Djordjevich Talks Disaster Recover With GroundTruth (Gamasutra)
http://www.gamasutra.com/gdc2008/index.php?id=17509

SGS: Microsoft ESP: Taking Flight Simulator From Game To Serious Game(Gamasutra)
http://www.gamasutra.com/gdc2008/index.php?id=17494

SGS: The News Game: Using Neverwinter Nights To Teach Journalism(Gamasutra)
http://www.gamasutra.com/gdc2008/index.php?id=17481

SGS: Video Games To Build And Retain A TV Audience (Gamasutra)
http://www.gamasutra.com/gdc2008/index.php?id=17473

GDC '08: EA takes games seriously(Gamespot)
http://www.gamespot.com/news/6186239.html

GDC 2008: Out of the Box, EA Fuels New Ideas with Madden and Sims Titles(Watercoolergames)
http://www.watercoolergames.org/archives/000893.shtml

以下はシリアスゲームサミットではないですが、関連して面白かった記事を。

任天堂のネットワークのキーマンが語るWiiメニューの企画、デザイン、Wiiウェア(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/1213817_1124.html

宮本茂氏の”ちゃぶ台返し”も…… ”『Wii Fit』誕生物語”(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/1213735_1124.html

“Game God”、Sid Meierが語るゲームデザイン哲学(GameWatch)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20080221/sid.htm

GDC恒例(?)の「Spore」セッションが開催。今回の議題はコンテンツの共有について(4Gamers.net)
http://www.4gamer.net/games/020/G002026/20080222064/

MMOG界の伝道師ラフ・コスター氏が語る「理想の窓」(4Gamers.net)
http://www.4gamer.net/games/047/G004713/20080219023/

GDC 2008: Wii Fit, Creating a Brand New Interface for the Home Console(Watercoolergames)
http://www.watercoolergames.org/archives/000895.shtml

投稿者 tfuji : 22:04

2007年03月16日

シリアスゲームサミット関連記事

 GDC内で開催されたシリアスゲームサミットも盛況のうちに終了しました。詳細レポートはあらためてということで、今回は関連記事をご紹介します。

スクウェア・エニックスの乙部氏、GDCでシリアスゲームの重要性を強調(CNET)
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20344735,00.htm

手術はゲームのうまい医者にまかせたい!? 進んできた「シリアスゲーム」研究(Nikkei IT Plus)
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITew000009032007

サンフランシスコにてGame Developers Conference 2007が開催(Impress Game Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20070306/gdc2007.htm

GDC: Square Enix Shows Its Serious Side(Serious Games Sourse)(英語)
http://seriousgamessource.com/item.php?story=12989

GDC: SJ Klein Asks For Serious OLPC Content(Serious Games Sourse)(英語)
http://seriousgamessource.com/item.php?story=13017

GDC 07: Games need to get serious(GameSpot)(英語)
http://www.gamespot.com/events/gdc07/story.html?sid=6166803

投稿者 tfuji : 23:58

2006年04月07日

シリアスゲームサミットGDCレポート

 RBB Todayに寄稿した今回のシリアスゲームサミットレポートが掲載されました。

GDC2006 シリアスゲームサミットレポート(RBB Today)
http://www.rbbtoday.com/column/seriousgames/20060404/

 このコラムでは、今回のセッションの中からいくつかをピックアップしてレポートして、全体的な傾向を総括して、日本のシリアスゲームの状況にも少し触れています。

投稿者 tfuji : 01:37 | コメント (0)

2006年03月07日

シリアスゲームサミットDCダイジェスト

 シリアスゲームサミットGDCの開催まであと2週間を切りました。参加される方向けの予習をかねて、昨年10月に行なわれたシリアスゲームサミットDCから、3つのセッションの模様をダイジェストでご紹介します。

1.ヘルスケアと森林管理−ハーフライフ2:シリアスゲームモディング
ティム・ホルト (オレゴン州立大学リサーチアシスタント)
2.フードフォースによって飢餓と闘う国連
ジャスティン・ロシェ (国連世界食料計画、プログラムマネージャー)
3.ハズマット:ホットゾーン−ファーストパーソン・レスポンダー・ゲーミング
ジェッシー・シェル(カーネギーメロン大学エンターテイメントテクノロジーセンター)他

1.ヘルスケアと森林管理−ハーフライフ2:シリアスゲームモディング
ティム・ホルト (オレゴン州立大学リサーチアシスタント)

Valve社でハーフライフ開発に関わり、現在はオレゴン州立大学に籍を置くティム・ホルト氏は「何百万ドルもかけたようなゲームを開発したいとみんな思うが、何百万ドルもかけたように見えるゲームを作るには何百万ドルもかかる。何か代替案はないものか?」と切り出して、Modプロジェクトが一つの選択肢となるという事例を紹介した。

・市販ゲーム並みのクオリティでシリアスゲームを作るには、ゲームエンジンを利用したモディングが有効である。ハーフライフ2、アンリアル、ファークライ、ネバーウィンターナイツなど、開発キットが提供されたゲームタイトルが出ており、それらを活用することで高品質のシリアスゲームを開発できる。
・ハーフライフ2のエンジンはテクスチャの解像度が高いのが長所であり、病院シミュレーションのようなものを作る際には解像度は重要。さらに、豊富なサウンドデータや3Dモデルが利用可能。
・市販ゲームエンジンでMODを開発する際、作ったMODの商用利用はできず、ゲームをプレイするためにはそのゲームソフトを購入する必要があり、ゲームエンジン間の互換性はない、といった制約はあるが、開発効率は格段に高くなる。
・Pulse!!!は、ハーフライフ2エンジンを利用して開発された病院シミュレーションゲームで、海軍研究所の出資を受けた。スキンやテクスチャ、AIスクリプト、その他コードの修正によって、求めていた動きを再現できた。
・既存の市民の3Dモデルを医者に変えるためのコード修正を最小限にするために、最初から医者のモデルを作るのでなく、市民のモデルに医者らしいスキンをつけて歩き回らせ、少しずつ医者らしい行動をコーディングしていった。森林シミュレーションでは、同じような考え方で草のモデルを樹木に変えた。
・GNNVizは、ハーフライフ2のエンジンを利用して開発されたバーチャル森林シミュレーションで、連邦共同火災科学計画の出資により、オレゴン州立大で開発された。森林研究のためのデータ可視化ツール、コラボレーションツールとして利用されている。開発にあたり、樹木のモデルを拡大せずに、人のモデルを縮小して動きを遅くすることでマップバランスを調整した。
・既存の機能を使えば、開発の手間を大幅に省ける。たとえば、レーダーマップは、森林の統計データを表示するのに使った。シミュレーションのデータもゲーム外から取り込む形にすれば、ゲーム内のコーディングは減らせる。
・モディングを始める前に、ゲームをしっかりプレイして、何ができるかを把握しつつアイデアを練るべき。開発者コミュニティのWikiやメーリングリストなどのリソースも活用すべき。moddb.comには豊富な情報がある。

2.フードフォースによって飢餓と闘う国連
ジャスティン・ロシェ (国連世界食料計画、プログラムマネージャー)

・フードフォースは、1999年にコソボで亡くなったイタリア人活動家、ポーラ・ビオッカ氏によって提案された。
・プロジェクトの予算は、通常のWFPの活動予算からは支出しない方針で開発されたので、開発には時間がかかり、完成まで3年ほどかかった。5000ドルをゲーム開発のためのコンサルティング費をかけ、ゲーム開発の準備を進めた。
・イタリアのゲーム会社、ディペンドに案を持ち込み、マクロメディアディレクターで開発され、最終的な開発コストは475000ドルかかったが、その時点では成功の手ごたえを得ていた。
・フードフォースの対象ユーザーは8歳から13歳で、ゲームはWFPの実際の活動に基づいた6つのミッションから構成されている。
・当初からフリーダウンロードで配布する計画だったが、大容量データをオンラインでダウンロードしてくれるのか自信がなかった。しかし、同じように大容量データをダウンロードしてプレイするアメリカズアーミーの成功を見て問題ないと考えた。
・メディアからの反響は非常に大きく、自前のサーバーでは対応できないためにヤフーにダウンロードサーバーの提供を求めたら快諾してくれた。
・すでに1000万以上のページインプレッションで、210万コピー以上がダウンロードされた。最初の6週で100万ダウンロードを越えた。日本語版もリリースされ、数日で14万ダウンロードを記録した。中国語、スペイン語、ポルトガル語、ヒンディ語バージョンのリリースが予定されている。
・各国のゲーム会社はとても協力的。社会貢献とブランド認知のプラスになると考えられている。
・フードフォースはゲームだけにとどまらず、ウェブサイトには掲示板や各種ガイド、教員向けリソースなどが提供されている。
・子ども達の反応は予想以上で「大きくなったらWFPのような機関で働きたいという子どもたちの声が数多く上がっているし、学校で寄付金集めのような活動をする例も出てきている。」
・今後の活動は、資金確保の状況次第だが、続編やマルチプレイヤーゲームなどが検討されている。CD-ROM配布などでさらに多くの子ども達にプレイしてもらえるような活動が検討されている。

3.ハズマット:ホットゾーン−ファーストパーソン・レスポンダー・ゲーミング
ジェッシー・シェル(カーネギーメロン大学エンターテイメントテクノロジーセンター)他

このセッションは、カーネギーメロン大学エンターテイメントテクノロジーセンターと、ニューヨーク消防署の共同デモセッションで、シリアスゲームの事例として最も注目されているゲームのデモセッションとあって、会場は超満員となった。まずシェル氏による概要説明が行なわれた。
・ハズマットは、消防士が化学テロのような有害な状況下での救助活動を訓練するために開発された。開発期間は3年、アンリアルのエンジンを使ったMOD。
・シナリオは、ニューヨークの地下鉄駅構内で有毒ガスが撒かれた状況をシミュレートしている。
・通常の講義ベースの指導では、事態の深刻さがイメージできないが、このシミュレーションを使った訓練を行ない、事後分析のミーティングを行なうことで、状況をよりリアルに把握できるようになった。
・当初はピッツバーグ市の消防署と協力して開発していたが、途中でテロ対策へのニーズの強いニューヨーク市消防署と協力することになった。

その後、ニューヨーク市消防署の訓練プログラムチーフ、ニック・サンタンジェロ氏によって訓練の内容が紹介された。
・ニューヨーク市は11000人の消防士が働いていて、多様な建物がある街の特性から、さまざまな防災ニーズがあるものの、実際には熟練するほどの訓練機会を提供できないのが実情。9/11で多くの経験豊かな消防士を失い、訓練へのニーズはさらに高まった。そのため、新たな訓練方法を模索していた。

訓練インストラクターのトニー・ムッソフィティ氏と消防士たちによって、会場内でハズマットを使った訓練の実演が行なわれた。
・消防士たちは火の中に飛び込んだり、救急活動を行なったりすることには慣れているが、バイオテロのような新たなタイプの災害には慣れていないため、ハズマットはそうした場面に慣れるための訓練のために利用される。
・ハズマット内での訓練の後、クルーたちによって、事後ブリーフィングが行なわれ、状況確認や、判断の評価などが行なわれる。
・シミュレーションは詳細設定を変更でき、用途に合わせて条件を変えたり、難易度を調整したりできる
・ハズマットはリアリスティックに状況を再現していて、教室では提供できない環境を提供できる。訓練を行なってみて、消防士たちはみんな学習経験の違いを実感している。
・ハズマットは今後拡張していって、さまざまな災害ニーズに対応したシナリオを制作し、全米の消防士がこのシミュレーションを利用して訓練できるように展開していく計画である

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なお、これらのセッションと他のセッションの詳しいレポートは、GamasutraのシリアスゲームサミットDC特集ページ(英語)に掲載されています。
http://www.gamasutra.com/sgsdc2005/

投稿者 tfuji : 23:57 | コメント (1)

2005年06月25日

GLSカンファレンスレポート

 ゲームと学習、社会の関わりをテーマにした学術会議、GLS(Game+Learning+Society)カンファレンスが、ウィスコンシン州の州都マディソン、モノナテラスカンファレンスセンターにおいて2005年6月23、24日の二日間にわたり開催された。

 セッションはシンポジウム、プレゼンテーション、ワークショップの形式で計32セッション実施された。各セッションには「大学や高校の教室でのゲーム活用事例」「ユーザーが主導する変化」「教育とゲーム、教育におけるゲーム」「ゲームデザインイノベーション」「ゲームと学習とアイデンティティ」「ゲームと認知の理論」「ゲームの効果」といったテーマが設定され、そのテーマへの理解を深める内容の発表がそれぞれ行われた。ポスターセッション会場では、20の研究、開発事例が実際に体験できるデモとともに展示発表された。

 来場者は当初予定定員250人を上回る300名で札止め満員御礼。教育、心理、医療等、多様な領域の研究者、学校教師、ゲーム開発者、軍事、政府系団体関係者、など、これまでのシリアスゲーム関連のカンファレンスと同様に多様な顔ぶれの来場者が集まった。開催地の地元ウィスコンシンや米中北部からの参加者が目立つ一方、フロリダやカリフォルニアなど、シリアスゲームプロジェクトの盛んな地域からの来場者も多く見られた。イギリスや北欧など海外からの研究者も数名いて、中にはこのカンファレンスのためだけにはるばるやってきた韓国の研究者もいた。

 初日一つ目のセッションでは「ポップカルチャーと生活」のテーマで、MITのヘンリー・ジェンキンスと、ウィスコンシン大のジェームス・ジー、というシリアスゲーム研究分野を代表する二人が発表した。ジェンキンス博士は、東京の代々木公園でパフォーマンスをしているコスプレ(Cosplay)グループとヤンキーグループの二つのサブカルチャーを対比し、コスプレ文化は、米国の若者が憧れて取り入れ、米国の文化となりつつある日本発の文化であるのに対し、ヤンキー文化はアメリカ文化への日本の若者が憧れて取り込んでいる文化であると考察した。そしてそれらが一つの場所で繰り広げられていること、単に消費されるだけでなく創造につながるものであることから、文化の植民地化ではなく、コスモポリタン化が起こっているという考えを示した。また、生きていくうえで必要なスキルと学校の勉強で身につけられるスキルが、メディアの高度化、複雑化に伴ってますます進行していることなどに触れながら、メディアリテラシー教育は各教科カリキュラムの中に埋め込まれた形で実施されるべきであるとの見解を示した。

 ジー博士は、学ぶための読解力の停滞が見られる小学4年生のスランプと、大学生のスランプ現象について触れ、これらの現象に学校教育は対応できていないことを指摘した。そして遊戯王カードの複雑なルールと膨大な情報を理解し、遊びとして楽しんでいる子ども達や、リアルタイム戦略シミュレーションゲーム「ライズオブネイションズ(マイクロソフト)」のゲーム後に提供される統計データなどを例に挙げながら、ゲームの利用が教育問題解決に有効であるという自論を展開した。

 全般的に今回のセッションでは、多人数参加型オンラインゲーム(MMOG)絡みの研究発表が多く、MMOGの授業での利用、プレイヤー調査といった発表が10件を数えた。スターウォーズギャラクシー、セカンドライフを大学の授業で利用した事例、中毒治療の研究者の立場からのゲーム中毒者判定基準の研究、参加型デザイン手法の研究者からみたMMOGの可能性、リネージュのプレイヤー間コミュニケーションの研究、パブリックディプロマシー活動におけるMMOG利用の可能性、などの発表が行われた。いずれも興味深い発表であったが、中でもユニークだったのは「ギルドマスターのスキルはビジネスマネージャーのスキルに応用できる」という内容のカリスマギルドマスターによる発表だった。彼はウルティマオンライン、ワールドオブウォークラフトで、200人を超えるギルドのギルドマスターとして活躍する傍ら、大手IT企業のマネージャーとして活躍している。大学アメフト選手としても活躍した彼の経歴に関連して、会場から「フットボールのスキルと比べてどうか」という質問が来た際には「ギルドのマネジメントに比べればフットボールなんてたいしたことない。大ギルドを発展維持させるのは企業のシニアマネージャーに求められるマネジメントスキルが必要だ」と答えた。さらに「優秀なプレイヤーのギルドへの勧誘、作業分担、リソース配分、メンバーのモチベーション管理など、どれをとっても企業でマネージャーとして働いていてやっていることそのものだ」という意見は、研究者の視点からの発表が多かった中で、実際のプレイヤーの声には来場者の関心も高かった。

 地元紙「ウィスコンシンステートジャーナル」が翌日の記事で「(ウィスコンシン大マディソン校の)アカデミックラボのおかげで、マディソンはゲームを利用して教育を改善するという最近のトレンドの中心にいる」と誇っているように、マディソンには、ジェームス・ジー教授率いるシリアスゲーム研究者たちのラボが設置されており、そこでは複数の研究プロジェクトが展開されている。今回のカンファレンスでは、ラボ所属の研究者たちが発表者、セッションファシリテーターとしてフルに活躍し、この研究分野の推進に一翼を担う存在であることを世に示すことに成功していた。この分野全体にとっても、彼らのラボにとっても意義のあるカンファレンスとなったと言える。

投稿者 tfuji : 23:40 | コメント (0)

2005年06月20日

シリアスゲームサミットGDC2005 (8)

ジムとゲームで遊ぼう: COTSゲームに含まれる重要な学習の実演
Dr. James Paul Gee

ジェームズ・ジー博士はウィスコンシン大学の教授で、これまでに言語学、心理学、教育学などの分野で優れた研究成果をあげてきた。彼の近著「What Video Games Have to Teach Us About Learning and Literacy (2003)」では、ビデオゲームによってどのような学習や新たなリテラシー習得が起こっているかを語っている。このセッションでは、ジー教授が市販ゲームを実演しながら、ゲームの過程でどのような学びが起こっているかを解説した。以下、プレゼンテーション要旨。

ケース1: 忍者外伝(XBOX)
・シナリオを提供して、プレイヤーに忍者になって刀を持って戦うコンテクストを与える
・比較的で簡単な練習の機会を与え、操作方法を学ばせる=教育学で言うところのマスタリーラーニング(完全習得学習)のよい例
・プレイヤーが何者であるかを明確に指示を与える
・プレイヤーはあれこれ試して、制約やルール、何のゲームなのかを把握しようとする
=ジャンルを理解しようとするのは学習上重要な探索行為
・アイテムの花:適切なタイミングで情報を送る−−何が次に起こるかを理解するための認知支援
・練習−>スキルの自動化(Automaticity)獲得
・敵キャラ=最初は弱くてだんだん手強くなる
・各ステージで、それぞれ一連のトレーニングカリキュラムを提供している
・継続的に練習機会を与える
・失敗は成功のための経験として生きる
・目的達成失敗は、そのためのスキルが身についていないということ
・何かよいものを手に入れ、試練に直面し、新しいスキルを身につける−必要なスキルを身につけて敵ボスキャラを倒し、ミッションを達成して、スキルをマスターする
・この忍者キャラの持つスキルを使うためには、プレイヤーがそれを使いこなせるようになるためのゲームスキルを身につけないといけない。またその新しいスキルによって、次の新たな戦略を考えられるようになる

ケース2: フルスペクトラムウォーリア(XBOX)
・味方キャラに指示を出す
・学校教育は実践の前に自信を与えようとするが、ゲームは実践を通して自信を与える
・アバターはスキル習得には有効なツールであり、ゲームはそれをうまく使っている

ケース3: アニマルクロッシング(動物の森)(ゲームキューブ)
・教育とは、何かの役割を担うことを学ばせること
・学校で物理を学んでも、テストに通る方法を学ぶだけで、物理学者がどのように考えるかを学ぶことはできない
・ゲームはエキスパートがどのように考え、振舞うかを学ぶことができる。その意味で、ゲームの中の学習は学校での学習よりもよいところがあるのでは?

リテラシー:
いろんなゲームをプレイすることで、人はさまざまな視点を身につけることができる
たとえば、ワールドオブウォークラフトはシステムについて考えるのによい

投稿者 tfuji : 01:09 | コメント (0)

2005年06月05日

シリアスゲームサミットGDC2005 (7)

オンラインゲーム世界とシリアスゲーム
Dr. Edward Castronova

インディアナ大学のエドワード・カストロノバ準教授は、オンラインゲーム世界の経済活動研究の第一人者の一人である。このセッションでカストロノバ博士は、オンラインゲーム世界におけるプレイヤーの活動とシリアスゲームの接点について語った。以下、プレゼンテーション要旨。

オンラインゲームの世界は、リアルでは普通の人が素晴らしい身体を持った状態である。
リアルとバーチャルの違い:オンラインゲーム世界ではリアルな経済活動が行なわれている。eBayなどのオークションサイトではオンラインゲームのアイテムが売買されており、為替の売買のようなリアルな経済の実態となんら変わりはない。

社会が価値を定義するのであり、ゲーム世界の中に経済市場がある

バーチャル経済よりも信頼性の低い市場があるし、少なくともゲームプレイヤーは本気でゲーム内で経済活動に参加しているのであって、オンラインゲームの市場は彼らにとってはリアルである。

24時間稼動のゲーム世界で、数十万人いるプレイヤーが一日40セント使っただけでも膨大な経済規模になる。

ゲーム外でのアイテム売買:年間100万ドルとされるが、年間887万ドルとも言われる
ゲーム内でのアイテム売買:ゲーム外の二十倍の取引規模(20億ドル超)

性的な関係: 環境はリアルとは異質だが、関係そのものはリアルである
アバターを介したコミュニケーションの何が人をひきつけるのか?
安く、より多くのコミュニケーションができる上、社会的な不名誉を被らなくてすむ。自分自身についてをより理解できる

人工的な世界への参加:
全米人口の60パーセントがビデオゲームをプレイしている:1億4500万人でうち43パーセントが女性、平均年齢28歳(2001年は1億人)

スパイダーマン2の初日の映画興行収入114百万ドル
ヘイロー2の初日売上:125 百万ドル(メディアの初日売上で最高)

ワールドオブウォークラフトの2004年11月23日の一日の売上:24万本(一日のPCゲームの売上記録)
プレイヤーの2割以上がゲーム世界の住人であると自認していて、その18歳以上が大半で、そのうち3分の一以上が仕事よりもゲームに多くの時間を費やしている

ビデオゲームはもはや子どもだけのものではない
年間一人当たり$2000ドル規模の経済生産が起きている

バーチャル社会の法的な問題
- 財産
- 義務
- 差別
- 権利
- 害悪

アバターに媒介された社会
- 他の社会に影響する
- 学習機会である
- 活動パターンを発見できる
- 他の社会を拒絶する方法を提供する
 混乱、教育、革新、逃げ場所を提供する。

バーチャル世界経済には馴染まない活動: 睡眠やトイレ関連
オープンソースコミュニティ: 作り出すことは容易ではない
バーチャル世界は、社会を再構成するための実験である: 何が人々を幸せにするか?
希少性はリアル経済における主要な問題であるが、バーチャル世界においてはむしろ楽しみの一要素であって、リアル経済での捉えられ方とは全く異なる

関連情報:
http://mypage.iu.edu/~castro
http://www.ssrn.com/

投稿者 tfuji : 01:06 | コメント (0)

2005年05月28日

シリアスゲームサミットGDC2005 (6)

全般的測定によるゲームの教育訓練効果と費用対効果の確保
Dr. Michael Stiso

 教育訓練へのゲーム利用において、効果測定は重要であるが、適切な形で効果測定を行なうことはとても難しい。後づけの測定ではなく、開発段階で学習目標と想定される成果を設定し、その測定方法を含めてデザインしておくことが重要である。ゲーム利用によって期待される効果は学習効果と費用対効果の向上であるが、カイシステムズ社のマイケル・スティソ博士はその測定の考え方と方法を紹介した。以下、プレゼンテーションの要旨。

キーポイント:
1. シリアスゲームの利用によって、シミュレータなどを使った大掛かりな教育訓練よりも大幅にコストを抑えることができる
2. しかし、シリアスゲーム利用によって訓練効果が高くならなければ、費用対効果が高くはなりえない
3. 訓練効果の有無とは、訓練を受ける側が必要とするものを教えているかどうかである

シリアスゲームの利用のねらい:
1. 訓練効果
- モチベーションの向上
- 学習と習得の向上
- 訓練機会の増大
2. 費用対効果
- 学習効率の改善によるコスト低減
- 低コストでの訓練機会の増大
- 訓練機会の統合

「訓練効果が高くなければ、費用対効果が高まることはありえない」

ゲームにおける効果測定の三つの役割:
- 学習者のパフォーマンスを把握する
- 学習者へ結果をフィードバックしてパフォーマンス改善を促す
- ゲームでのパフォーマンスが現実でのパフォーマンスにどう反映されているかを把握し、ゲームデザインの改善を促す

全般的測定(Pervasive assessement)
- 一回きりの測定ではなく、ゲームの開発サイクルの中で何度も行なう
- 訓練機器(シミュレータであれシリアスゲームであれ)の開発は、一度作ったら完成という性質のものではなく、継続的な改良が必要であるという前提

測定プロセス:
前工程〜開発時〜後工程の各工程
訓練領域分析〜システム開発〜訓練目標の設定
達成基準---訓練効果測定
デザイン基準---システム開発(---シナリオ・ストーリーコンテンツ、ゲーム要素)

前工程
- 方法
- 訓練内容構成する知識の収集
 - インタビュー(semi-structured)
- 認知的タスク分析
- 学習領域、業務領域分析
- 教育方法、内容の決定

訓練目標(例)
- 外敵の脅威への意識の維持
- 世論の形成が政府の意思決定に与える影響を理解する----

指導方略:
- シナリオベース
- 個別タスクの訓練
- 一斉訓練か個別訓練か
- 指導中心か発見中心か

パフォーマンス評価項目の決定(項目例)
- 予期しない脅威への対応能力の測定
- 世論と政府と政府の意思決定の関係についての知識を測定

課題
- 専門家へのアクセス
- 時間
- 開発ペース
- 教育をいかに組み込むか

開発過程の評価
- 方法の適切さ
- 試作とテストの実施
- 目的にあっているか
- 開発計画どおり進んでいるか
- ユーザビリティ
- 前工程の検証
- 調整の実施
- 難易度
- 時間とコスト
- ソフトウェア開発の進行との連動

後工程
- 方法が機能するかをテスト
- 目的
- 訓練効果の証明
- 強みと弱みの特定

課題
- 時間、費用、学習者へのアクセスが十分でない
- 実験的な統制には限界がある(特に軍事訓練のような環境では)
- 標準的な訓練評価方法が未確立
- 測定困難なスキルへの対応(より多くの専門家の参加が必要)
- 開かれた環境VS閉じた環境(自由度の高いシナリオで特定項目を対象とした訓練評価を行なうことの有効性)

シナリオベースドトレーニング
- 訓練過程の初めから終りまで適用すること
- 特定目的のために開発されたシステムとパフォーマンス評価が必要
- ゲームを個別の訓練機会において用いる

基本的な項目
1. 学習領域分析
2. シナリオ、ソフトウェアデザイン
3. 評価とトレーニング管理

その他
- 複数メディアの組み合わせ方を研究する方が、メディアの比較よりも有意義
- ゲーム開発者と研究室の協調が重要

投稿者 tfuji : 01:03 | コメント (0)

2005年05月21日

シリアスゲームサミットGDC2005 (5)

教育現場でのCOTS(市販製品)ゲーム利用状況の調査
John Kirriemuir

Kirriemuir氏は、イギリスにおける市販ゲームの学校教育利用に関する調査を2001年から継続して行なっている。今回の発表は、2005年度版調査の中間報告として行なわれた。この調査では、いわゆるエデュテイメントゲームは対象とせず、あくまでエンターテイメント用の市販ゲームが学校教育・学習で活用される事例を対象とし、それらの市販ゲームが教育にいかに活用され、どのような可能性を持っているかを示すことを調査目的としている。今回の調査の現時点での結論は次のようなものである。

1. ゲームの学校教育での利用は増加している。
2. ゲームを教室で利用している教師はその実践状況について喜んで語る。その同僚も否定的ではなく、むしろその活動を関心を持って注目している
3. すべての教師は、自身がゲームプレイヤーというわけではない
4. 教師達はゲームをゲームとしてみるというよりは、ホワイトボードなどと同じツールとみなしている。そしてそのツールがいかに教育・学習の役に立つかという興味を持っている。
5. 利用されるゲームは幅広く、タイクーンゲームやダンスゲームをはじめ、よりユニークなゲームが使われている。
6. 先端を行く教師達は、さらにゲームを利用していくことに興味を持っているが、そのための予算の確保が最大の障壁となっている。

プレゼンテーション要旨:
前回までの調査で、次のようなことがわかった。
・ほとんどの利用事例は、昼休みや課外活動、よい行ないのごほうび、うるさい子ども達を静かにさせるための道具といった、教科カリキュラム外の利用であった。
・イギリスでの事例は学術研究のための実験的利用が多かった。
・ほとんどすべての事例でWindowsPCが使われていた。プレイステーションが利用される例もわずかに見られた。
・「ゲームを学校で使う」という漠然としたコンセプトへの否定的な意見が全般的に見られた。
・その一方で、多くの教師たちはゲームを使うことへの関心を持っているが、次のような理由で挫折を余儀なくされている

1. 想定される同僚や役人、親からの(否定的な)反応
2. 実際に教室でゲームを使って成功した事例が少ないこと
3. ゲームに熟練した子ども達を相手にすることで、授業の目的達成やコントロールができなくなってしまう可能性
4. 市販ゲームがカリキュラム標準に沿った使い方ができると実証されていないこと
5. 学校のコンピュータは最新ゲームを動かすにはパワー不足であるということ
6. ゲームを教室で使う前に、教師達がゲーム自体を学習する時間が必要だということ
7. ゲームを使った授業をするには標準の授業時間が短すぎること

教育分野の人々は、ゲームを教室で使うことに対してさまざまな誤解や不安を持っており、それらは次の4つのカテゴリーに整理できる。
1. ゲームによって、 教師の役割が軽くなり、今までやっていたことの多くが不要になって、教師はただコンピュータの電源を操作するだけの補助者となってしまうのではないか
2. 子ども達の方がゲームに慣れているので、教師は置いていかれて無駄な存在になるのではないか
3. ゲームだと個別学習化が進み、子ども達同士のコミュニケーションを阻害するのではないか
4. 教師をトレーニングするコストよりもゲームを使ったほうが費用対効果がよいということになるのではないか

つまり、ゲームが教室に入ってくると、教師は不要になるのではないかという不安がその根底にある。
しかし、この調査でわかったのは、その逆で、ゲームによって教師が不要になることはない、ということである。

事例1: ズータイクーン
・ 算数の成績が極端に悪く、学習指導困難な小学校高学年の生徒10数名を対象に、「ズータイクーン」を使った教育を実施。
・ 週数回、授業時間のうち15分ほど、プロジェクターを使って授業に利用した。
・ ゲームをディスカッションのツールとして利用。何を買うか、どの檻を使えばよいかなど生徒達に意見を聞きながら、ゲームを進め、その結果を見ながらなぜそうなったのかを議論した。
・ 楽しい上に、 算数の知識(標準カリキュラムの「現実問題とお金」ユニットへの対応)、計画的思考、協調性、相互学習、集中時間ややる気の持続、といった面での改善効果が見られた。ごほうびとしての効果もあった。

事例2: ミスト
・ 小学校高学年の約30人の生徒を対象に、英語のクラスで「ミスト」を教材として使って、説明の仕方、聞き方、観察、クリエイティブライティングを教えた。
・ (ビデオ)子ども達の集中力、言葉の使い方、文章の組み立て方、授業の運営方法、ゲームの使い方、授業の終わりを告げた時の子ども達のリアクションに注目
・ この授業の導入の結果、標準テストのスコアが大幅アップした

事例3: ハリーポッターと秘密の部屋
・ 中学生30名のクラスで、メディア教育の授業で利用
・ 一人が操作して、他の生徒が指示をする形で、このゲームは何をユーザーに与えるか、映画とゲームのメディアの違いについてを議論をした
・ また、メディアとしてのゲームを他のDVDや本などのメディアと比較分析し、ゲームがもたらす楽しみは何かについてを議論した

事例4: Who wants to be a millionaire? (クイズミリオネア)
・ 小学校高学年から中学校の生徒を対象。クイズミリオネアゲームの無料ダウンロードを利用し、エディタ機能を使って教科に関連したクイズを作成
・ 簡単で感覚的にクイズ作成が可能で、クイズ問題のストックがあればよいと感じた
・ 子ども達は男女を問わずみんな楽しんでいた。子ども達の集中力は大変なもので、とくに音楽が子ども達の注意を引くのに効果があった。成績の悪い子のクラスでも効果的であった
・授業の導入にこのクイズゲームを使って、ゲームオーバーになったら通常授業に戻るという使い方をした

事例5: スクールタイクーン
・ 小学校高学年の30名クラス(3クラス)で利用。当初はシムシティ4を使う予定だったが、細かすぎて90分授業には使いにくいと考え、思考力、会計知識、計算力、社会性といった能力開発に役立つツールとしてスクールタイクーンを選択。
・ 子ども達にこのゲームを1時間ほどプレイさせ、その結果をもとに議論したところ、学校運営のさまざまな業務が学校運営の成否にいかに関わっているかということを考えるようになった

事例6: DDR
・ 中学から高校の女子の体育教育にDDRユーロミックスとダンスマットを利用
・ 女子生徒たちはみな積極的に参加。昼休みも課外活動の時間も熱中してやる姿が見られた
・ 男子もやりたがったが、女子ほどはうまくなく、男子が自信を持ちがちな体育で女子が積極性を発揮するという効果があった
・ あまりによく使うため、ダンスマットがすぐ壊れてしまうという問題が発生した
・ やる気の低かった生徒の参加率向上、運動能力の改善への意欲向上

事例7:レゴを使ったゲーム開発学習
小学校、中学校レベルの生徒を対象にレゴプログラミングによるゲームソフト開発を通した学習、コンピュータクラブでの課外活動時のプログラミング学習事例

事例8: アウステルリッツの戦い
・ 大学学部レベルの西洋文明史の授業にてブレイクアウェイ社の「アウステルリッツ」を利用。アウステルリッツの戦いにおけるナポレオンの戦術や戦略的意思決定への理解を深めるためのツールとして用いられた。シナリオモードで学生をチームに分けてそれぞれのエリアの戦闘の責任を与えてプレイさせた。

「ゲームを使った教育における教師モデル」
以上のような事例を通して、ゲーム利用教育を成功させる上で求められる教師モデルが見えてきた。
・ 「ガイドとしての教師」モデル: 教師がゲームを操作し、シナリオ内でいかにプレイを進めるべきかを子ども達に考えさせる。生徒が操作を交代することも可。一台のコンピュータをプロジェクタにつないでクラス全体でゲームする。
・ 「審判としての教師」モデル: クラスをチームに分け、チーム内で協力して、相手チームとは競争してゲームをプレイさせる。教師は課題と答えを設定し、生徒達を支援し、ゲーム後の議論を取り仕切る。
・ どちらのモデルにおいても、すべての参加者はコミュニケーションに参加する必要があり、教師とゲームは授業の軸として機能する。(つまり、教師は重要な役割を果たす)

投稿者 tfuji : 00:57 | コメント (0)

2005年05月14日

シリアスゲームサミットGDC2005 (4)

ケーススタディ:ビジネス広告と公共広告のためのアドバゲーミング
Dr. Ian Bogost

 ジョージア工科大学助教授で、二つの会社のファウンダーでもあるイアン・ボゴスト氏は、アドバゲーミング(広告用途のゲーム利用)の概念と実践事例を解説した。アドバゲーミングはインターネットの普及以前から行なわれていたゲーム利用手法であり、近年になってその動きが拡大している。以下、ボゴスト氏のプレゼンテーション要旨。

アドバゲーミングの定義: ゲームと広告メッセージの組み合わせ
広告のタイプには、 商業広告、意見広告、政治的メッセージ、をはじめとして多様なものがある。
アドバゲーミングの手法には、次のようなものがあげられる。

(1) プロダクトプレースメント(メディア内での商品露出)
-Tapper-Budweiser
- Tony Hawk's Pro Skater
- Super monkey ball- ドール
- The sims- インテル、ペプシの商品露出

(2) ライセンス契約、スポンサーシップ
スパイダーマン2ゲーム:完全ライセンス供与
プレイボーイ・ザ・マンション:部分的な映像利用
カレーハウスCoco壱番屋ゲーム
Kool-Aid Manゲーム(Atari2600)

(3) 特注開発
Nabisco World: ミニゲーム
Jeep Mountain Madness
Howard dean for Iowa
America's Army

(4) その他
エバークエストII- ゲームアカウントでのピザ注文と決済
PEPSI × NINTENDO DS
ilovebees-XBOX game
Disney's Virtual Magic Kingdom

アドバゲーミングの可能性: 二種類の広告アプローチ
1)デモンストレーション: 直接的な情報提供(商品・サービスの利用法の紹介など)
2)関連付け: 間接的な情報提供(ユーザーの生活シーンと商品を関連付ける)

関連付けを意図したアドバゲーミングの方が普及しており、広告主は広告メッセージとゲームを融合させることに力を入れている。

アドバゲーミングに対する誤解
- ゲーム市場の成長はユーザーをひきつけるゲームのメディアとしての潜在能力によるものであるという誤った認識
- ゲームをプレイさせることとメッセージを伝えることの関係性への配慮の欠如

そうした誤解を解いて、デモンストレーションと関連付けの性質の違いを理解し、ゲームが広告商品に対してユーザーからどのような反応を得たいかを吟味することが必要である。

ブランド露出、登録者数確保、クリックスルー数、といった消極的な広告効果ではなく、より実質的な内容を伴った効果を求めるべきである。定量的な効果を求めると、逆にアドバゲームの有効性を損なう。質的な効果は従来のブランディングが無意味であるということを示す。広告との直接的な関連性を掴むことは困難である。定性的な効果を求めるには、従来のブランディングよりも高次な目標達成を目指すことが鍵である。

商品広告のアドバゲーム比較:
マウンテンデューゲーム: ゲーム内でのマウンテンデューの位置づけに意味がない
J2Oゲーム:飲酒によって生じる場面(トイレでの用足し)と関連付けることで、J2Oはアルコール分解に効く飲料であるというメッセージを伝えている

Swedish fish開発から得た知見:
- ゲーム開発者の性質: 広告を知らない、配布方法に関心がない、ゲームのことだけ考えている、効果測定はわからない、堪え性がなくすぐに機嫌を損ねる
- ウェブ開発会社: ゲームを知らない、ウェブを作るのとゲームを作るのを同じように考える、自分達の仕事の領域に立ち入られるのを嫌うが、すでに広告代理店に踏み込まれていることが多い
- 広告代理店: ゲームをやってもゲームのことがわからない、視覚的なイメージに気が向いている、配布方法やキャンペーンとの組み合わせを考慮しない、初歩的な効果測定手法にこだわる
- キャンペーン企画会社
- ブランドマネージャー:ゲームを知らない、ゲームは子ども向けだと思っている、以前ゲームを広告に使おうとして痛い目にあっている、配布方法に気が向かない、開発者や出版者に比べてエゴが強い

ゲーム開発者へのアドバイス
- ゲームをメディアの一つとして位置づけて考えること
- ゲームの利用シーンを説明し、文書にする練習をすること
- 関係者と早期から頻繁に連携すること
- 広告代理店から可能な限り逃げること(ジョーク)
- プロトタイプにはいい面と悪い面とがある
- 知的財産権の保護に気を配ること

シリアスゲームとアドバゲーム:
奇妙な仲間?
シリアスゲームは社会変革を志向したもので、アドバゲームは個別具体的な事象に変化をもたらす。アドバゲームは商品・サービスに関するメッセージやアイデアを伝える。プレイヤーは体験し、判断し、考える。マーケティングにも政治活動にも共通して機能する重要な役割を持つ。
政治活動向けのアドバゲームは、政策的な主張やイデオロギーをゲームプレイに内在し、態度変容の触媒的存在として機能する。メッセージとユーザーが触れる社会の中での文脈とを関連付ける必要がある。

投稿者 tfuji : 00:25 | コメント (0)

2005年03月25日

シリアスゲームサミットGDC2005 (3)

 ケーススタディ:「セカンドライフ」を利用した多人数参加型シリアスゲーム環境の構築
 Cory Ondrejka (Vice President, Product Development, Linden Labs)

非戦闘型のMMOG「セカンドライフ」を開発したリンデン・ラボ社の副社長によるスピーチ。
シリアスゲームの特徴(RPG要素のない現実世界的空間、ユーザーによるコミュニティの発達)技術的な工夫(ブロードバンドを前提としたストリーミング配信など)、現在の利用状況(2万ユーザー、ゲーム内外でのアイテム販売の経済効果200万ドル超)の話に一通り触れた後、ユーザーによってゲーム内に作られたシリアスゲーム的仕掛けが紹介された。

 ビンゴゲームの派生版のようなゲームをユーザーが開発、実際にゲーム外で商品化されて売られるほどのヒットとなった。研究者による参与型研究も盛んに行なわれており、キャンパス・セカンドライフというコミュニティを提供、テキサス大オースティン校のコースがセカンドライフ内で行なわれたり、ビジネス実証研究、社会学の研究などが行なわれている。

セカンドライフに関するさらに詳しい情報:
Social Science Research Network (SSRN)
オンラインゲーム経済関連論文など

テラノバ
MMOG情報ブログ

セカンドライフブログ

brigadoon

braintalk.blogs.com/live2give

投稿者 tfuji : 03:31 | コメント (0)

2005年03月13日

シリアスゲームジャパンセッション発表資料・プレス記事

シリアスゲームサミットGDC「シリアスゲームジャパン」セッションの発表資料(藤本)を掲載しました。
Games and COTS Serious Games and COTS games in Japan(PDF)

また当セッションの模様がメディアで紹介されました。

IGDA日本の新氏ら、日本におけるシリアスゲームの動向を発表(Gamewatch)http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050309/gdc_seri.htm

【GDC 2005】日本のシリアスゲームの動向に世界の関心が集まる(ファミ通.com)
http://www.famitsu.com/game/news/2005/03/09/103%2C1110339365%2C37135%2C0%2C0.html

[GDC#05]日本のシリアスゲーム,DirectXなど2日目の見どころ (4Gamer.net)http://www.4gamer.net/news.php?url=/news/history/2005.02/20050222174241detail.html

投稿者 tfuji : 22:59 | コメント (0)

シリアスゲームサミットGDC2005 (2)

Theory of Fun by Raphael Koster

「Theory of Fun(楽しさの理論)」の著者であるRaphael Koster氏は、人間の情報処理、認知の仕方に絡めて、なぜ人が楽しいと感じるのか、ゲームが持つ価値や機能について次のように解説した。

 人は頭脳に入ってくるデータを扱う際に、それらをパターン化して理解しようとする。パターン化できない状態が続くと、ストレスを感じて、理解しようとするのをあきらめてしまう。パターン化できるようになると楽しくなってそれを追求するが、そのうち慣れてしまって飽きてしまう。子どもたちは、ズボンのはき方を覚えるのにひと月もかかるが、物事のパターンを発見するのはとてもすばやい。パターンは頭脳の中のパターン貯蔵庫のようなものに収められる。この機能がないと人間は情報認識がうまくいかなくてまともに生きていけない。

 ゲームは認知問題のパズルであって、パターンを学習するまで人はそのゲームで遊ぶ。いったんパターンをつかんでしまうと飽きてしまう。○×ゲームは誰もが退屈なゲームだと知っているが、数学的にはとても意味の深いものである。知っていることとそれを使って物事を考えることが別であることを示している。

 基本的にすべてのゲームはエデュテイメントである。物事の関係を教え、探索することを教え、正確に物事を行なうことを教える。ゲームはストーリでもなく、グラフィックでもない。それらは全てゲームを構成する要素である。

 ゲームは多様な見方をされる。たとえばドラマのソプラノはマフィアの話ではなくて、つながろうとする家族の話である。映画のダイハードは爆発や銃撃を描いた映画ではなく、妻と再会しようとする男の話である。同じようにゲームを人々は違った世界観で見ることを知る必要がある。プレイヤーはゲームを可能な限り予測可能な状態に置こうとする。それは熟達を意味するが、同時に飽きられることを意味する。それは全てのゲームが持つ宿命である。

 長く親しまれてきたゲームの多くは、競争的要素を含んでいる。競争はプレイヤーの楽しみを継続させる要素である。多人数参加型ゲームのデザイナーは、プレイヤー同士が楽しみを生むパズルを提供しあうような環境を作ろうとしている。また我々は、ゲームはプレイヤーを一つの解へ導くものでなく、何通りものゴールや解釈が可能なパズルを提供するものであるべきだという議論をしてきた。

 ゲームは別々のところにいる人々の間を橋渡しをする。ゲームの提供するパズルがアートの提供する価値と違わぬところまで来ている。娯楽のため作られるゲームとアートとしてのゲームとの差は存在しない。

 適応性や柔軟性は新しい状況に対応するのに不可欠である。ケイブマンの時代には狼について学ぶことは重要だったが、重要なものは変わる。しかし学校はいつまでも狼のことを教えているようなもの。もっと関連したスキルを学ぶ必要があるのだ。そうした状況に、ゲームはどのようにかかわることができるか?

投稿者 tfuji : 22:43 | コメント (0)

2005年03月12日

シリアスゲームサミットGDC2005 (1)

シリアスゲームサミットGDC2005
場所:モスコーニウェストコンベンションセンター (Game Developers Conference内)
日時:2005年3月7〜8日

 昨年から始まったシリアスゲームサミットGDC、今年もGDCのチュートリアルセッションの一つとして開催された。昨年の参加者数が約300人だったのに対して、今年は450人以上の参加者数となった。昨年は一部屋のみだったが、今年は3部屋に拡充されて、セッション数も大幅増となった。開催前のプロモーション時の扱いも、今年は格段に大きな取り上げられ方をされていて、シリアスゲームのGDC内での存在感の高まりを示しているようであった。

 サミットの冒頭、シリアスゲームコミュニティの顔であるBen Sawyerが登場し、これまでのシリアスゲームムーブメントの現状を報告しつつ、今回のセッションの見所などを紹介した。「30年前からゲームはエンターテイメント以外に使えるんじゃないかと考えられていたが、ではどんな風に使えるのか、というのがずっと課題だった」という導入で切り出しつつ、ここ2年ほどでシリアスゲームコミュニティが大きく成長してきたことを解説した。ここ一年のうちに、開発されたシリアスゲームの事例、市販ゲームを教育等の現場で活用する事例は順調に増え続け、シリアスゲーム開発に投資する組織、機関も増えていることを紹介した。そしてエンターテイメント用の市販ゲームとシリアスゲームのオーバーラップが進みつつあるなか、「すべてのゲームはシリアスである」と考えていく必要があると述べた。

 最後に今後開催される予定のシリアスゲーム関連のカンファレンスの予定が紹介された。6月のウィスコンシン大のシリアスゲーム研究者グループが主催するGLSConference、Digra、8月のGames for Health、そして次回のシリアスゲームサミットDC(10月31日,11月1日)と、半年の間にイベントが目白押しとなっている。開催場所は広い北米のあちこちに散らばっており、それぞれに主となる参加者層が異なっている上、テーマの焦点や領域も異なる。この1年でシリアスゲームコミュニティは大きく成長したが、このイベント予定をみると、次の1年もさらに発展を続けていく準備を着々と進めているようであった。

投稿者 tfuji : 22:42 | コメント (0)

2004年12月04日

シリアスゲームサミットDCレポート(5)

パネル:従来型e-learning/学習管理システム(LMS)のためのゲームモデル

パネリスト:
Doug Nelson (CEO, Kinection, Inc.)
Andrew Kimball (CEO QBInternational)
Shon Bayer (Developer Enspire Learning)
Paul Medcalf (Director of Multimedia InSite Interactive)

「-- 今日のeラーニングシステムの大半は、これまで何百年と続いてきた講義と教科書による教育スタイルに強く影響を受けています。自由なスタイルが必要なゲームをSCORM標準に合わせた形でラーニングマネジメントシステム向けのゲームをいかに開発するかは、ゲームデザイナーにもeラーニングマネージャーにとっても完全に謎となっています。その結果、たいていのeラーニングシステムは、HTMLとShockwave/Flashと、簡単なJavaアプレットといった基本的なテクノロジーで開発されています。このパネルでは、eラーニング向けのゲームデザインの方法と、各種学習タイプごとの事例を紹介します。また、ラーニングマネジメントシステムに利用されるテクノロジーと最新のゲームテクノロジーの差がどのように問題となっていくかについても議論します。--(セッション概要より)」

- 三位一体となった教育用ゲームデザイン
教育用とのゲームデザインに主要な三者:
題材(Subject matter): 内容を形成する情報ソース。本、論文、専門家
インストラクショナルデザイナー:題材を学習素材として構成する
ゲームデザイナー:双方向性や娯楽要素をユーザーに与える

- エンターテイメントと教育を統合したゲームデザインには、インストラクショナルデザイナーとゲームデザイナーの密接なコラボレーションが必要となる
- ゲームデザイナーは本来、エンターテイメントを呼び起こす経験に重点をおき、インストラクショナルデザイナーは教育的な経験に重点をおく
- 教育のためのゲームの使い方として(1)きっかけのためのゲーム、(2)評価のためのゲーム、(3)指導のためのゲーム、などがある

- 学習内容の区分は知識、スキル、態度・信念の3種類あり知識は記憶、理解、応用といったタイプに分けられる
- 学習可能性は、f(コンテンツ)(デザイン)(メディア)(製品形態)と表せる
- やる気には内的動機(達成動機など)と外的動機(競争、報酬、評価など)に分けられる
- LMSは単線的な学習で、ビデオ教材中心。ゲームとは対照的
- ミニゲームの形式は短時間の学習に向く
- 新しい知識の習得には、オープンクエスチョンや協働学習を取り入れるなど学習環境を変えることが有効
- 企業はゲームを買うのでなく、ソリューションを買ってくれるので、ゲームを売る提案をしてもダメ

投稿者 tfuji : 02:25 | コメント (0)

2004年11月21日

シリアスゲームサミットDCレポート(4)

レクチャー:流動的学習環境の未来とその評価
スピーカー: Aaron Thibault (IC2デジタルメディアコラボラトリー、研究開発コーディネーター)
「--学習装置としてゲームを利用するのは新しいことではないが、その利用法、そしてさらに重要な学習結果測定の方法は、まだ未成熟であると言ってよいでしょう。ゲームが学習の場における刺激的なテクノロジーであるのと同じように、刺激的な学習効果をもたらしてくれることを人々は期待しているため、効果測定は非常に重要なキーワードとなっています。しかし、まだ我々はゲーム学習の効果測定については無声映画の時代にいるような状態です。このセッションでは、これまでのゲーム学習の効果測定研究を整理し、特に多様な選択肢や経験を織り込んだ流動的学習環境としてのゲームと、従来型の教育方法の比較しながら解説します。参加者はゲーム学習のための測定ツールの概要と、この研究分野が展開する将来像についての知見が得られるでしょう。--(セッション概要より)」

テキサス大オースティン校のIC2デジタルメディアコラボラトリーの研究員として学習用ゲームの研究開発に携わるThibault氏は、レクチャーで次のような点について言及した。

- マルチプレーヤーオンラインゲーム(MOG)は、結びつきの強いコミュニティを形成し、ゲーム世界内での社会的、経済的活動を生んでいる。また、その複雑な環境の中で、学習やメンタリングが起こっている。

- ゲームを使って教えられることは、ゲームの有効性に関する研究から明らかになっているが、ゲームから何を学んでいるか、何が一番学べているのかについては、正確には把握しきれていない。

- ゲームデザイナーは面白さを創造することに関心があり、インストラクショナルデザイナーは人々を学ばせることに関心がある。インストラクショナルデザイナーは確立された学習支援の手法を用いるが、想像が及ぶ範囲はゲームデザイナーよりも狭い。楽しさと学びの融合が新たな分野の学習のために確立できれば、より大きな成果につながる。

- 従来の学習効果測定は、標準テストや成績評価で行なわれてきた。ゲームの学習効果測定のためには、新たな測定モデルを確立する必要がある。

- 生体反応測定もゲーム中の脳や身体の反応を通してどのような学習が起こっているのかを測る手法として活用されている。MRIや、眼球運動測定、脳波測定などの各種手法があるが、これらですべてをカバーできるわけではない。

- 新たなゲームの学習効果測定の枠組み作りのために、次のような分野の方法が活用できる
 ・認知心理学
 ・ゲームデザイン
 ・ビジネス交渉
 ・複雑系理論
 ・社会ネットワーク理論
 ・マシンラーニング
 ・ニューロバイオロジー
 ・教育理論
- たとえば、ヴィゴツキーの構成主義理論や、チクセントミハリのフロー理論なども活用できる。
- 学習者はゲームプレイヤーであると同時に、ゲームの中で自分の環境を構築するゲームビルダーでもある。ゲームの中で何かを作り上げることで何かを学んでいる。
- ゲーム内のエージェントは、教師やメンターとして機能する。フィードバックシステムは、評価者である。
- ゲーム内の活動は、社会的であり、リアルタイムな中で常に変化があり、人々をひきつけ、環境に埋め込まれたものである。この環境の中での学習は、流動的であり、抽象的なものである。

- 学習効果測定は、人とエージェントの協調型ネットワークがベースとなる。
- 起こっている学習は、確立、改善、維持、変更、統合、操作、など、どのようにも解釈が可能である。
- 学習者の反応から学習するAIの活用も有効である。学習者の対応に合わせて適切な知識を提供し、学習者ごとの知識マップを生成し、方策、技術、手順などを示す。

- ゲームの学習効果測定は次のような項目への対応が第一歩となる
 ・環境に埋め込まれた知識
 ・知的コラボレーションツール
 ・過程参照図とバーチャルツール
 ・社会的関係性
 ・リアルタイムフィードバック
 ・人間同士の相互作用
 ・ランキング

Digital Media Collaboratory(ゲーム学習に関する論文などを掲載)
http://dmc.ic2.org/

投稿者 tfuji : 01:44 | コメント (0)

2004年11月13日

シリアスゲームサミットDCレポート(3)

パネル:ゲームは将来の人の振る舞いをどう形成することができるか?
パネリスト:
ジム・ジー(ウィスコンシン大学教授)
デボラ・リーバーマン(カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)
エレイン・レイボーン(サンディアナショナルラボ、アドバンストコンセプトグループ)
デビッド・ラジェスキー(ウッドロー・ウィルソン・インターナショナル・センター・フォー・スカラーズ、ディレクター)

「-- 複雑な専門知識の深く理解するには、個々の行動を起こす論理を形成するような対人関係のシミュレーションと、その中で他者と交流できる環境を提供することが必要であると考えられています。ゲームがそれにどこまで対応しているかという点については議論がありますが、ゲームが幅広い学習科目において人々の態度を変える潜在能力を持っているということは明らかです。ウィスコンシン大学教授で「What Videogames Have To Teach Us About Learning And Literacy(ビデオゲームが学習とリテラシーについて教えてくれること)」の著者であるジム・ジー教授がリード役を務めて、ゲームと行動変容の関係、そしてその応用について議論します。(セッション概要より)--」

ジム・ジー(ウィスコンシン大学教授)
「知識伝達のレベルは3段階。1. 知識伝達は簡単である、2. 知識伝達は無理である。何かを知ってもらうには教え込む必要がある。3. 知識伝達は可能、だが難しい。実現するには何らかの働きかけが必要。3番目が教育理論の現状認識である。」ジー教授はこのように切り出し、彼のこれまでの研究からの知見を以下のように整理した。

- 知識伝達は手軽でも低コストでも手っ取り早いものでもない。大変なことである。だがゲームは知識伝達にとても向いている。

(1) 学習結果について
1. 学習は学習環境がもたらすものであり、ツールがもたらすものではない。
2. コンテンツは事実でなく実践(ゲームプレイはこれがすべて)

(2) 初期条件について
3. 学習(挑戦)への方向付けを提供するのであり、手順(間違い)を示すのではない
4. すでに持っている知識を活性化すること
5. カルチャーを認識すること
6. 染み付いた誤った考え方をそぎ落とすこと
7. 目的(全体像)と機能性(自分が達成できるイメージ)を示すことでモチベーションを生み出すこと
8. 社会性を高めること

(3) 習得
9. 習得ができることを第一に
10. 時間をかけてたっぷり練習機会を提供

(4) 学習条件
11. 教え込みを減らして、多くの習得
12. 事実や決まった手順でなく、理解の仕方を教える
13. 常に近くにいつつも、新しい学習の余地を生むだけ距離を持つ
14. 入念な学習状況の自己確認を奨励する
15. 事実を学ぶことでなく、理解を促すフィードバックを与える
16. 事例を比較させる
17. 多様な文脈における概念を教える
18. 何通りかの説明方法を活用する

(5) 言語
19. 行動イメージの中に新しい言語を組み込む
20. 対話と報告を活用する
21. 予測と期待を活用する
22. 適切なタイミングで情報を与える
23. 一方的な説明(講義、モノローグ、テキスト)に対して心の準備をさせる

例:Rootlearning.com( http://www.rootlearning.com/ )、Full Spectrum Warrior(Xboxのシューティングゲーム)

以下、他の3名のパネリストからは次のようなことが言及された。

デボラ・リーバーマン(カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)
- 行為を通した学習(Learning by doing)は重要であり、ビデオゲームはそれを生み出すのに有効なメディアである。
- ゲームデザイナーはそのゲームによる学習目標をきちんと定めることが重要
- クライアントはゲームでどのような教育ができるかを具体的に理解しているわけではないので、どのような学習が行なわれるべきかをクライアントとよく話し合った上で開発を進めるのが早道
- ゲームはリアルな経験をもたらす。メディア上でのインタラクションは社会的な営みであり、感情的なやり取りも行なわれる。
- ゲームは人をひきつけ、フロー状態(完全没頭した状態)を引き起こす。
- ゲームは参加型のメディアであるので強力である。プレイヤーの興味をひきつけ、ゲームを進める過程で意思決定や学習を促す。事実を学ぶためのゲームではなく、行動を促すゲームを提供すべき。
- ゲームはロールモデル(お手本)を示す。プレイヤーはゲームキャラクターの行動から学ぶことができる。ゲームにはよい行動や成果に報酬を与える仕組みがある。こうしたフィードバックは現実生活にも影響する。
- ゲームは達成を通して、自己効力感を生む。
- ゲームは広い文脈の中の一部として扱えるので、ゲームのネガティブな面を心配する必要はなく、ポジティブな効果に目を向けていけばよい

エレイン・レイボーン(サンディアナショナルラボ、アドバンストコンセプトグループ)
- ゲームは文化的経験を与えるものである。プレイヤーはその環境下で何かを実行する自信をつける
- ゲームは一連のアルゴリズムであり、その中でプレイヤーは将来起こりうる問題にどう対処するかを理解できる
- ゲームでAddiction(中毒状態)を生み出すことは重要だが、ゲームへのAddictionだけでは十分ではなく、そのゲームが模している現実世界にAddictionを起こすのが重要

デビッド・ラジェスキー(ウッドロー・ウィルソン・インターナショナル・センター・フォー・スカラーズ、ディレクター)
- 数年前、オランダでシミュレーションを見て、その可能性にひかれてゲームに関心を持つようになった。それまで関心を持っていたeガバメントについてはもうどうでもよくなって、行政分野でのゲームの活用(gガバメント)への関心が高まった
- 行政分野では、予算編成やエネルギー問題のような数多くの複雑な問題がひしめいている。いずれも政策実行が伴うものであり、担当者は適切な判断をもとに問題解決にあたらなければならないが、大変な困難が伴う。ゲームはそうした問題状況をシミュレートして、訓練機会を提供するのに向いている。
- 「ブラックスワン」と呼ばれる全く予期できない難事(9/11やベルリンの壁崩壊など)が起こる。それに対して対処する訓練はどうやったらできるか?ゲームを通した訓練によってそうした事態への気構えを形成できる
- ゲームは次の4つの機会を提供できる
 (1) システムの全体の動きを見る力をつける。全体を見る能力はリーダーシップを取るのに重要。シムシティやズータイクーンのようなゲームはそうした機会を提供するゲームの一例。
 (2) 知の共同体経験。人々と知恵を集めて問題に取り組む機会。
 (3) 安全な失敗の場。失敗が許されて奨励される環境だと人は学びやすい。ゲームはそんな環境を提供できる。
 (4) 驚かされる練習。予期せぬ緊急事態でどう振舞うかを練習できる。

投稿者 tfuji : 00:08 | コメント (1)

2004年11月05日

シリアスゲームサミットDCレポート(2)

ラウンドテーブル:資金調達と研究アジェンダ

 "-- このラウンドテーブルでは、シリアスゲーム開発に関して重要な課題についてを議論します。資金調達については戦略、補助金獲得テクニック、潜在的な資金源に関する議論が期待されます。また、リサーチアジェンダについては、今後シリアスゲーム開発を支えるブレイクスルーを生み出す研究努力と資金調達がなされるべき、認知科学やコンピュータ科学分野の研究に関する提案を整理する議論が期待されます。(セッション概要より)--"

 この様な議論を期待して、会場には50人ほどの参加者が集まっていたが、開始時間を15分ほど過ぎても予定されていたファシリテーターが会場に現れない。ぽつぽつと他の会場に向かう人が出始めたところで、参加者席からEric Zimmerman(Rules of Play: Game Design Fundamentals の著者)が見かねてファシリテーター役を買って出たところでラウンドテーブルがスタート。Ericが流れを説明し、資金源となる補助金提供機関がリストアップされた。たとえば、SBIR/STTR(政府のスモールビジネス革新研究補助制度)、NSF、民間企業、DARPA、陸軍、NIST、Home Land Securityなどである。そしてそれらに申請して補助金を得たことがある参加者から次々に情報提供がなされた。「補助金サイクルは短くなっている」「金額は減少傾向」といった現状の厳しさを示すコメントや、「企画段階で取れる小規模の補助金もうまく活用すべき」「早い段階で具体的なものが見せられることが重要なので早期にプロトタイプを作ること」「具体的な研究計画があるなら補助金申請を考えるべき」などのアドバイスがなされた。

 開始時間が遅れたために、研究アジェンダの話は十分に踏み込めなかったが、Ericの機転の効いたファシリテーションのおかげで、参加者各自の持つ知識や情報が共有され、有意義な議論の場となった。Ericがいなければこの場が成り立たなかったことを参加者の誰もが理解しており、口々にEricの健闘を称えた。

 参加者はいずれも研究ネタや開発案件を持っている研究者や開発者なので、交わされる議論は具体的であった。このサイトに何の情報があるとか、自分の財団が公募をやってるぞといった話が次々と飛び交い、いくつものプロジェクトが意欲的に動いている勢いが感じられた。シリアスゲームプロジェクトはその性質上、ビッグビジネスよりもスモールビジネス、あるいは大学の研究室が主軸を担う要素が大きい。そのため、そうした小規模なゲーム会社や大学の研究室がその創造性を発揮できる元手を確保できる環境の存在が、このシリアスゲームの盛り上がりを支えている。日本でのシリアスゲーム推進を考える上で、この経営/研究環境の違いが与える影響は大きく、この点をどう乗り越えていくかが重要な課題であると考えさせられるセッションであった。

次回以降の予告:
Day 1
パネル:ゲームは将来の人の振る舞いをどう形成することができるか?
レクチャー:流動的学習環境の未来とその評価
パネル:オープンソースは開発コスト、時間、プロセスの特効薬となるか?
パネル:伝統的e-learning/学習管理システム(LMS)のためのゲームモデル

Day 2
パネル:シリアスマルチプレーヤーゲーミング:何が必要か?
レクチャー:教育の再構成
レクチャー:学習ゲーム用エンジン開発の舞台裏
レクチャー:体験学習の評価方法

投稿者 tfuji : 01:19 | コメント (0)

2004年11月01日

シリアスゲームサミットDC レポート(1)

 シリアスゲームサミットDCが、ワシントンDCのLoews L'Enfant Plaza Hotelにて、10月18日、19日の二日間にわたって開催されました。これから数回に分けて、そのサミットの模様をご紹介します。私が参加したセッション以外についても、他の参加者のノートなどを参考にできるだけ紹介します。
Mon-KeynoteFullHouse.jpg満員のメイン会場 (Photo by Bill Crosbie)

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キーノートセッション: Jim Dunnigan
"--ジム・ダニガン氏は、古くはボードゲームの頃のウォーゲームから、最新のウォールストリートのシミュレーションモデルまで、長年にわたって我々の言うところのシリアスゲーム開発を手がけてきた開発者と言えます。また彼は、軍の教育訓練用の戦争ゲームやシミュレーション活用にも携わってきました。そうした長年の経験と知見から、これからのシリアスゲーム開発のためのアイデアや将来像について語っていただきます。(セッション概要より)--"

「この分野に関心のある人々がこうして集まってくるのは素晴らしいことだ。だが、残念なのは30年前にこのグループが存在しなかったことだ」というサミット開催への賛辞から始まり、ダニガン氏はテンポのよい語り口で、次のようなことを論じた。

・シリアスゲームの開発は難しい。商用ゲームのようにヒットビジネスではないのでビジネスとして成り立たせるのは大変だし、現実世界の複雑な状況を再現しなければいけない。だがマーケットは巨大である。
・いまや軍勤務者の90%は戦争に関わりのない仕事をしている。戦争シミュレーションだけでなく、多様な業務課題に対応したゲームが求められている。
・シリアスゲームはAddiction(中毒症状、熱中)を生み出すことが何より重要である。
・世の中の仕事は一定の手順とルールによって構成されている。それらをいかに面白く再現できるかが鍵である。どんな仕事でもユーザーがはまれるゲームにすることはできる。
・教育訓練にゲームを使う長所は、低コストで安全な訓練機会を実現できることである。最近のフライトシミュレータはあまり起こらないがミスが致命的になる状況を訓練するのに使われている。
・昔の紙と鉛筆のウォーゲームはとても複雑だった。それをプレイできるというだけでかなりのスキルだった。実際、そうしたボードゲームにはまっていた人たちでゲームデザインの道に進んだ人が結構いる。
・複雑な状況をモデル化するにはオペレーションズリサーチやシステム分析が有効である。そうした知識はゲームデザインのツールとして役に立つ。
・利用可能なAIの精度は完全とは言えないが、ある程度ユーザーが満足するレベルの作り込みで十分である。
・開発サイクルをできる限り短くする必要がある。すばやいプロトタイプ化を繰り返せ。

MonDunniganFullHouse.jpgキーノートセッション (Photo by Bill Crosbie)

 ダニガン氏の論点の多くは、シリアスゲームコミュニティでこれまでに議論されてきたことである。目新しくないと言ってしまえばそれまでだが、まだこの分野に馴染みの浅い人たちがシリアスゲーム開発の論点をレビューするのにはとても役立つ内容だった。また、長年の経験から述べているダニガン氏の問題認識と、コミュニティメンバーが議論している問題認識が重なっているということは、我々がシリアスゲーム先駆者の知見を土台にして、現実的な方向に進んでいるということを示していると言える。この二日間のサミットの幕開けにふさわしい基調講演だった。

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他の参加者のノート(英語)もあわせてご覧いただくと補足ができると思います。
Ian Bogost (Water Cooler Games)
Bart Pursel (Penn State)


投稿者 tfuji : 00:20 | コメント (0)