June 13, 2010
教育ゲームデザイン研究の進展
欧米、特に米国の教育工学分野にはGame-based learningを研究している研究者が結構な数いて、教育用途のゲームのデザイン枠組の研究を行っている。つい先日送られてきたTechtrends(AECTの学会誌)の最新号にも論文が出ていた。
Preparing Instructional Designers for Game-Based Learning: Part 1
Atsusi Hirumi, Bob Appelman, Lloyd Rieber, Richard Van Eck
http://bit.ly/aLABXE
教育現場で利用される教育ゲームや、シリアスゲーム(従来の教育以外の分野で利用されるゲームも含んだより広い用途のゲーム)について、ここ1〜2年で取り組まれている研究の数がかなりのボリュームに及んでいるようで、分厚い論文集がいくつも刊行されている。
最近海外で刊行されたシリアスゲーム関連書 2009-2010(1)
http://seriousgames.jp/2010/06/20101.html
国内で同様の研究も数々行われているのだけども、海外のこれらの研究成果をレビューしたうえで取り組まれているものはそんなに多くないような印象を受ける。その印象があたっているかどうかは国内の研究をもう少しきっちり調べてみて確認したい。
今見えている研究課題がいくつかあるのだけど、あれもこれも独りではやりきれないので、少しチームで研究する体制をとりたいなと思うんだけども、今の本務の仕事との兼ね合いや何やらでいろいろと難しいところがあるのが悩ましい。
May 29, 2010
37歳になりました
はからずして毎年、年初と誕生日は自分の状態を振り返る時間になっている。今年は幸い何も予定のない週末に重なったので、しばらくぶりに少しゆっくりリフレクションの時間をとることができた。
今年の前半で、延々と7年半にも及んだ留学生活もようやく幕を引くことができ、4月から本格的に帰国後の人生が始まった。いろいろあったし、振り返れば後悔や反省することだらけだけど、とにかく自分の目指したところまでやりきれてよかった。それで良くも悪くもいろんなことが水に流せて、どうでもよくなることが案外あるのだと知った。論文がまとまらない昨年後半が一番しんどかったし、修正していた今年の年初も相当厳しかったけど、あれもこれも終わってみれば全部どうでもよくなった。
つらかったことだけ水に流せればいいのだけど、それと一緒にがんばる意欲も流れていってしまった感じもする。本来はこれから学会誌向けに論文書いたりとか、もっとがんばった方がいいことはたくさんある。けれどあまりに消耗したせいか、自分を起点にして何かを始める意欲がわいてこない。2カ月ほど経って、だいぶ前向きな意欲が戻ってきたので、モチベーションが復活するのは時間の問題だと思う。今はただ、授業の準備や仕事の〆切に追われつつも、博士論文という重荷のない穏やかな日々を、楽しく静かに送っている。
国内での活動は、いろいろ考えて悩んだ末に、留学を始めるときに送り出してくれた師匠のところにいったん戻ってお世話になることにした。これまでの人生でも、大事な岐路に立って悩んでいると、あるタイミングですっと道が開けるように物事が決まってきたところがある。今回もそんな感じで、決まってみればもともとそっちに進んでいたような不思議な感じがしている。
ここ数年、研究や執筆、プロジェクトなど自分のミッションのために直接的に時間を使える生活を送ってきた。4月からは組織に属して、人のミッションのために自分の時間の大部分を使う毎日を送ることになった。自分の性分として、人のミッションと自分のミッションの方向性が異なるところでは働く意欲がわかず、大きな組織に属するのに向いてないところがある。今回も、小さな組織に属するいろんな不便があっても、自分のミッションに近く、自由度の高いところを優先して選んだ。
組織に属さないフリーランスな生き方と、組織に属した組織人としての生き方、どちらがよいかと言ったらそれはその側面だけでは測れないところがある。組織に属してなくても自分の望まない何かに従属して生きざるを得ない状況というのは案外多いし、組織に属しているからといって、束縛だらけで何もできないということはない。どちらにも制約はあるし、自分の力量や工夫次第で制約でなくなることは多い。(人を雇ってたりしたら話は違うけど)結局のところ、職業人としての自分個人のスタンスは、提示された仕事をベストの体制で請けることの方が大事で、フリーでやるか組織の一員としてやるかというのはどうでもいい形式的な話だったということに気づいた。
そうこうするうちに、いつの間にか30代も後半の終わりの方に近づいていて、自分の人生の捉え方も変わりつつある。「将来」というのは若い頃には遠い未来の話だったけども、実はもうその将来を生きているのではないか、という捉え方もできる年齢になってきた。果たして自分はこういう将来像を描いていたのかと考えると、まだ道半ばであって、今の自分が考えている「将来」がさらに先に続いている感じがする。多分もう少し歳をとれば、この捉え方もまた変わっていくのだろう。若い頃にああすればこうすれば、と後悔する気持ちは湧いてこないわけではないけど、チャンスはあったのにできなかったのも他でもない自分自身だ。たぶん、後悔する暇があったら、その分これからをどうしたいのか考えた方がよい人生を送れるだろう。
でもあまりしゃかりきになって、過度にポジティブで前向きにやるのは疲れる。少しスローダウンしたい時には休み休みやりたい。うまく行く時もあれば、行かない時もある。できる人と比べるとへこむこともあるし、もっとやらないとと自分を焚きつけすぎることもある。そういうところは以前と変わらないし、自分の基準を変えない限りはいつまでたっても満たされることはないだろう。体力や気力もいつも万全とはいかないし、いろんな波はある。なんかそういうことをちょっと受け入れられるようになったかな、というのが37歳になっての今の心境。これからもがんばります。ごきげんよう。
May 05, 2010
「デジタルゲームの教科書」刊行
「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」が来週から発売開始されます。アマゾンでは先行予約中です。
執筆参加した人間が言うとやや手前みそですが、ゲーム業界の基礎知識や最新トレンドがしっかり詰まっていて、ゲーム業界に関心のある人全般にお勧めできる内容です。前述の「デジタル教材の教育学」ともども、ぜひご一読ください。
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『デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド』
著者: デジタルゲームの教科書制作委員会
スーパーバイザー: 松井悠 / 新清士 / 小山友介 / 池谷勇人 / 記野直子/ 中村彰憲 / 佐藤カフジ / 岩間達也 / 徳岡正肇 / 小野憲史 / 中田さとし/ 藤本徹 / 鴫原盛之 / 七邊信重 / 三宅陽一郎 / 八重尾昌輝 / 大前広樹/ 藤原正仁
ゲーム業界はどのように形成され、どのような状態にあり、そしてどこへ向かうのか。デジタルゲームの過去、現在、そして来るべき未来を俯瞰。ゲームの産業、カルチャー、そしてテクノロジーにまつわる24テーマを、各分野のオーソリティが鋭く論じます。ゲーム業界に関わる人、そして業界を志す人のための必読書です。
A5判 536ページ
ISBN: 978-4-7973-5882-7
定価: 2,380円(本体)+税
目次:
第1部:ゲーム産業の基本構造
第1章:ゲーム産業の全体像
第2章:ゲームが消費者に届くまで
第3章:ゲームとゲーム産業の歴史
第2部:世界のゲームシーン
第4章:転換期を迎える国内ゲーム市場
第5章:北米ゲーム市場
第6章:アジア圏のゲームシーン(韓国・台湾・中国・東南アジア)
第3部:ゲーム業界のトレンドシーン
第7章:ネットワークゲームの技術
第8章:PCゲームとオンラインゲームの潮流
第9章:アイテム課金制による無料オンラインPCゲーム
第10章:ソーシャルゲーム
第11章:携帯ゲーム(iPhone、Androidなどの携帯ゲームアプリの現在とその可能性)
第12章:日本タイトルの海外へのローカライズ
第13章:海外産のゲームの日本展開における課題(ユーザー数世界No.1のMMOが日本で運営されない理由)
第14章:シリアスゲーム
第15章:デジタルゲームを競技として捉える「e-sports」
第16章:アーケードゲーム業界の歴史と現況
第17章:ゲーム業界に広がるインディペンデントの流れ
第18章:ノベルゲーム(デジタルゲームを使用した1つの表現)
第19章:ボードゲームからデジタルゲームを捉える
第20章:ARG(Alternate RealityGame)現実の世界を舞台とする代替現実ゲーム
第4部:ゲーム開発の技術と人材
第21章:ミドルウェア
第22章:プロシージャル技術
第23章:デジタルゲームAI
第24章:ゲーム開発者のキャリア形成
「デジタル教材の教育学」刊行
先日お知らせした「デジタル教材の教育学」が刊行されました。先週からアマゾンなどネット書店でも購入できるようになりましたので、あらためてご紹介します。
デジタル教材研究の歴史的な経緯や主要な論点、開発と評価の実際などを網羅的に論じてます。デジタル教材開発に携わる方にはもちろんのこと、シリアスゲームに関心のある方にも、教育学分野の知識を得るための基礎文献としてお使いいただくとよいかと思います。ぜひご一読いただければ幸いです。
主要目次
序章 デジタル教材と教育学(山内祐平)
第I部 デジタル教材の歴史と思想
1章 個人差に対応する:CAI(重田勝介)
2章 学びの文脈を作る:マルチメディア教材(西森年寿)
3章 議論の中で学ぶ:CSCL(望月俊男)
第II部 デジタル教材の活用と展開
4章 第2言語習得での活用:CALL(山田政寛)
5章 企業内教育での活用:eラーニング(古賀暁彦)
6章 学びと遊びの融合:シリアスゲーム(藤本 徹)
第III部 デジタル教材のデザイン論
7章 デジタル教材を設計する(松河秀哉)
8章 デジタル教材を評価する(北村 智)
9章 デジタル教材の開発1:おやこdeサイエンス(中原 淳・山口悦司)
10章 デジタル教材の開発2:なりきりEnglish!(島田徳子)
終章 デジタル教材と学びの未来(山内祐平)
