「セカンドライフ」世界を理解するための本

 最近日本でも話題になっているオンライン社会生活シミュレーションセカンドライフの公式ガイドブック「Second Life: The Official Guide」はアマゾンの洋書ランキングで36位まであがっていた。テレビでも紹介されたりし、ゲーム系以外の講演イベントで開発者が呼ばれたりして、関心が高まっているとは聞いたが、たしかにすでに人気の「洋ゲー」といったレベルを超えて、一般に普及している様子がこの辺りにも現れてきている。
 このガイドブック、「地球の歩き方」のような旅行ガイド風で、セカンドライフの世界を旅してみるにはちょうどよい。英語だけど読み易いので、セカンドライフの日本語版が出る前にヘッドスタートを切りたい人や、すでに始めているけど今ひとつ入り込めないという人にはちょうどガイドになる。私もセカンドライフは土地を持たずにたまにイベントを見に行ったり、名所散策するだけの超カジュアルユーザーなので、知らない情報がたくさん載っていて重宝している。
 このガイドはセカンドライフ自体を理解するのにとてもよい本だが、セカンドライフに興味のある人にはその世界の背景を知るための文献として「スノウ・クラッシュ(ニール スティーヴンスン 著、早川書房)」をおすすめしたい。バーチャル世界「メタヴァース」と現実世界を行き来しながら展開するSF小説で、1992年に出版されてベストセラーとなった。セカンドライフの開発者たちはこの小説に大いにインスパイアされて、かなりの部分をこの小説で描かれている「メタヴァース」をモデルとしているので、その意味ではセカンドライフの元になった作品とも言える。SF小説が未来世界のイメージを人々に伝えるという役割を果たしているが、この作品もそういうところを大いに兼ね備えている。
 バーチャル世界のイメージを映画「マトリックス」のような感じで捉えている人には、さらに豊かなイメージを持つことができるだろう。マトリックスはかなり影響を受けていると思うし、日本刀を振り回す主人公の描き方は、タランティーノが「キルビル」でやっているところに通じる。
 セカンドライフの周辺にいる人たちが「メタヴァース」と言っているのを聞いて、あぁなるほど、と反応している時は、この小説に描かれた世界を共有している。なので、少しセカンドライフにはまってみようと思っている人は、こちらも合わせて読んでみてください。

The Apprentice LA

 一月も二週目に入り、テレビ番組も通常の編成に戻ってきた。ゴールデンタイムのドラマ番組は、みんなシーズン途中でクリスマス前に一休みしていたのが、徐々に再開している。Friday Night Lights、Boston Legalは今週から始まり、Prison Break、Heroesなどももうすぐ再開する。「24」シーズン6は来週から始まり、アメリカンアイドルも新シーズンの放送が始まる。
 ドナルドトランプの弟子の座を争うリアリティショー「アプレンティス」もLAに舞台を移してのシーズン6放送開始となった。「You’re Fired」が流行語となるくらいに話題となったこの番組も、マンネリ化して新鮮味を失ってきていた。Wikipediaには視聴率の変遷が出ていて、回を追うごとの人気低下がはっきり現れているが、英国をはじめ、世界各国で同じフォーマットの番組が制作されていたりして、影響力は大きいといえる。前にも書いたように、この番組はトランプ自身とスポンサーの大手企業のインフォマーシャル的要素が強いので、営業面の強みが番組の継続につながっている面は大きいことが想像できる。この後のシーズン7もすでに制作が決まっているとのことだ。
 今シーズンは、視聴率回復のために、いくつかのルールを変えて演出のフォーカスを変えることで、刺激を加味している。ロケ地をLAに移したことはまず一つ大きな変更点。それから勝者と敗者の待遇格差を拡大したこと。勝者は豪華マンションに滞在できるが、敗者は庭のテント暮らし。勝った方のプロジェクトマネージャーは翌週もプロジェクトマネージャーを続けることができ、敗者を決めるボードルームでトランプに助言を送ることができる。
 一週目の放送は、これらの変更点がうまく機能して目新しさを出していた。それに加えて、今シーズンから、これまで準レギュラーだったドナルドトランプの娘、イヴァンカがアドバイザーとしてレギュラー出演するようになった。彼女のキャラクターが番組の面白さをかなり盛り上げているところがあって、この辺りは演出の作戦が成功しているように見える。彼女が「トランプの娘」というポジションに期待されるところをよく理解しているのかそれとも素なのか、トランプや前任のキャロリン(先シーズン終了後、彼女自身トランプにクビにされて、今度はビルゲイツのリアリティーショーで雇われたそうだ)以上に激烈なコメントを加えて、いい味を出している。
 毎シーズン、挑戦者は多彩な顔ぶれである。弁護士、ネットベンチャーや不動産会社の経営者、コンサルタントなど、こんなところに出てこなくても十分成功しそうな人たちや、明らか自分のキャリアの歩を誤っていて、トランプの会社にはどう見ても合わなそうな人や、ここでみっともない負けっぷりをさらして、その後のキャリアは大丈夫なのかと心配してしまうような人たちが、毎度毎度懲りずによく出てくるものだと思う。挑戦者の素人さんたちの豊かなキャラクターも、この番組が続いている成功の要因の一つになっている。

DDRとWiiでエクサゲーミング

 普段は大学のプールに通って泳ぐのを日々の運動の中心にしているが、冬休みの間は休業中なので泳げない。たまに外を歩いてくることもあるが、それほど運動量は高くないし、天気が悪いと行えない。そういう時には身体を動かす系のゲームが重宝する。
 昨年の冬はEyetoy: Kineticが威力を発揮したが、最近はすっかり飽きてしまって、たまに筋トレのガイド(インストラクターが指示を出してくれるのに合わせてやると、良いペーシングになる。でもこれではフィットネスDVDとなんら変わらない)として使うだけになってしまった。
 この冬は我が家にもWiiスポーツが新たに投入され、結構良い運動機会を提供してくれている。ボーリングやゴルフは大して運動にならないが、ボクシングはちゃんと振らないと勝てないので懸命に振り回しているうちに汗だくになり、結構な運動量になる。運動不足がたたり、今話題のWii痛も経験した。
 ただ、これは上半身の運動にはなるものの、下半身はほとんど使わない。なので下半身の運動用にと、使わなくなっていたDDRを再登場させることにした。
 部屋で一人でDDRをやっているのもやや微妙な気もするが、まあぶら下がり健康器でもゆりっこでもなんでも、家庭用フィットネス器具を一人で使っている姿はどれも微妙だし、別に人様に見せるものでもない。フィットネスクラブで他の人と一緒にエアロビをやる煩わしさと比べれば、私は個人的にこちらの方がまだましである。自分のペースでやれて、運動量という結果が伴いさえすれば、他者との交流をここには求めていない。このあたりのゲームでエクササイズすることにまつわる個人的な葛藤は、まだエクサゲームのマイナーさを物語っているところで、これもいったん普及してしまえば気にならなくなるのだろう。
 さて、DDRを久々に使ってみるといろいろと良いところを再認識した。「ワークアウトモード」というのがあって、エクササイズ用に利用するために、体重や運動量の履歴が残せるようになっている。最初に使ったのは2年以上前で、当時からの体重やその後の利用動向の変遷を見ることができた。体重の増え具合に愕然とさせられた。
 すでにDDRもそこそここなしていたこともあって、ハードレベルでもだいたいすべて制覇した気がして、もう飽きてきたのでそろそろ違うバージョンでも買ってこようかなと思い始めていた。ふとワークアウトモードのステップ調整をオンになっているのに気づいて、オフにしてみた。するとそれまでのハードレベルは何だったのかというくらいに難度が上がり、スタンダードレベルでもついていけなくなった。
 ステップ調整とは、有酸素運動に適するように半拍以下のステップを出さないようにするオプション機能だった。そのためにハードレベルでも格段に易しくなっていた。それに気づかずにもうすっかり極めたような気分になっていたのだった。言ってみれば、補助輪をつけて自転車を乗り回して、自転車の世界を知り尽くしたような顔をしている子どもみたいなものだ。補助輪を外されて、転びまくって自転車の難しさを再認識したのと同じように、DDRの難しさを思い知らされた。
 それと同時に、You Tubeとかネット上で出回っているような超絶ハイテクなDDRプレイができるプレイヤーたちは、ハードレベルでもこれくらいしか激しくないのに、どうやってあそこまでたどり着けるんだろう、とラーニングカーブのイメージが湧かずに今まで不思議に思っていた。
 ところが、いったんステップ調整を外してしまえば、ものすごく難度の高いところまで細かくレベル調整ができることがわかった。これを繰り返しやっていけばスキル的にはそのレベルまでいけるというのがわかった。あと、彼らはゲーセンでプレイしているので、他のプレイヤーの動きがモデルとなって速習できるという面もある。ゲームが提供するスキル独習の支援と、社会的な学習の効果で非常に高度なレベルまで達することができるということがある程度イメージできた。ただ、自分にはそこまでの根性はないので自分ではそこまで試せない。
 ぐうたらになりがちな年末年始も、WiiとDDRのおかげで毎日1時間ほど運動できた。運動すると食欲が出てつい食べてしまうせいで、体重はあまり変動がないものの、これらが無ければ増加の一途をたどっていたことだろう。
 ここまで使えるのだから、EyeToy:Kineticのようなコンセプトで、もっと本格的にエクササイズを意識してきっちり作られたゲームが出てきてほしい。フィットネスビデオの市場はすぐに取り込むことが出来るし、ゲーマー層にもアピールできると思う。Wiiがかなりユーザーの行動を変化させているので、受け入れられやすさは高まっていると思う。あとは誰が本気を出して作るか、というところだろう。

Wii あれこれ

 Wiiをプレイしての反応をいろんなところで目にするようになった。「Wiiスポーツのボクシングをクリスマス休暇中やっていたら2キロやせた」とか「うちの子はWiiで遊んで疲れて夜はよく寝てくれる」のような、コメントを見かける。YouTubeには、家族でWiiを楽しむ様子のビデオが山のようにアップされている。
Wiiで遊ぶ人々
お母さん編
お父さん編
 Wiiを開発した人々へのインタビューが任天堂のWii公式ウェブサイトに出ていて、英語版ウェブサイトにもその英語訳が出ている。日英読み比べたりすると、英語ではこう言うのか、というのがあったりして、英語の勉強にもなるでしょう。
Iwata asks
http://wii.nintendo.com/iwataasks.jsp
社長が訊くWiiプロジェクト
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/interview/vol1/index.html
最後に、Appleの「マックとPC」TVコマーシャルのパロディで「PS3 vs Wii」というビデオが出ているのでおまけ。G4TVというゲーム情報ケーブル局の番組で作られたらしい。YouTubeにはコピーが大量に出回る人気コンテンツになっている。
職場や家族で見るにはやや不適切なので見る時はお気をつけください。
PS3 vs Wii
http://www.youtube.com/watch?v=ysRpcn6s4mQ

2007年を迎えて

 こちらも新年を迎えました。あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。

 今日は一年の始まりということもあって、今年はどんな年になるか、どんな年にしたいか考えていた。まずなによりも今年は、5年間の留学生活の総決算の年にしたいと思う。博士論文を書き終えて、日本に帰る、少なくとも帰るメドを立たせることが今年一番の目標だ。論文を書き上げて学位をとり終えるまでは、次の段階には進まない。迂闊に定職についてしまうと、自分の性格や実力的に、博士論文など一生書けるとは思えない。就職しても博士論文を書ける人はエライと思う。自分はそこまでえらくないので、ここは何としても博士論文を最優先で進めて終わらせること。これがまず一つ。
 それから、昨年後半でメドの立ってきた「シリアスゲーム3部作出版プロジェクト」を滞りなく完結させること、これが二つ目。なので、基本路線は昨年と変わっていない。昨年から引き続いていることをきっちりやり切ること。これが今年の基本方針となる。
 その上で、今年の後半からは、次のキャリアのステップに向けた仕込を具体的に進めることになる。いくつかやりたいことは明確になっていて、今から手を打てることは打ち始めている。今年前半の状況がよい場合、普通の場合、悪い場合、それぞれに動き方のイメージはだいたいできていて、それぞれに楽しい仕事はできると思う。あとは自分の努力で状況をよくできる部分を最大化することに専念するだけという気がしている。
 昨年は自分にとっての大きな節目の始まりで、今年はその節目が続いている。昨年の始めには選択肢が定まらない感じがしていたが、一年経ってそのほとんどがそぎ落とされた。世の中にはやりたくないことや、関わりたくないことがたくさんあるし、どんな仕事にも良し悪しある。昨年一年でいろんな人に会い、いろんなことに触れてきたおかげで、自分の選択肢の中で自分に向かないことや今すぐやる必要のないことがいくつもあることがわかった。その辺りを考慮に入れて考えていくと、自然と自分が今向かうべきでない方向というのが見えてきて、向かうべき方向が絞れてくる。
 そんなことを引き続き考えていきながら、今は目の前にはっきりしていることをきっちりやり切る、私にとって今年はそんな一年となる。

星占いに叱られる

 拙書の校正作業も今日でだいたい終わる。何度も読み返しているが、毎回何らかの直すところが見つかる。だんだん面倒くさくなってきて「もう降参、許して」と思ってネットで息抜きを始めようとした。グーグルのパーソナルページに星占いのコンテンツを登録していて、よほど暇な時しか読まないのだが、この時たまたま目に留まったので読んだ。すると次のようなことが書いてあった。

Gemini
May 21 – June 21
People should be willing to pay attention to what you have to say right now, so be sure to use this time to try to get your message across. Fine-tune the image that you want to present and then take the opportunity to promote yourself. This should be the key to achieving the greatest success for yourself right now.

 一言で言えば「メッセージが人々にちゃんと伝わるように時間をかけなさい。それはあなたの将来のために大事なことですよ」という内容。図星というかなんというか、今まさにサボろうとしていたところを見られてたようなことが書いてある。これでサボるのはなんだか罰当たりな気がして、少し丁寧に仕事をした。
 こうして今したためている大事なメッセージも、来月には世に送り出される。うまく人々に伝われば、わざわざお告げをよこしてくれたお星さまにも感謝しないといけない。などと考えてしまうのは、アメリカでは毎年クリスマスに必ずテレビで、フランク・キャプラの映画「It’s a Wonderful Life (素晴らしき哉、人生)」を何度も放送(しかもケーブル局でなく主要ネットワーク局のゴールデンタイム)していて、何気にテレビをつけてやっていたらつい最後まで見てたりするからかもしれない。紅白を見ないと年越し気分が高まらない日本人がいるように、これを見ないとクリスマスを迎えた気がしないアメリカ人もいるくらいのクリスマス定番映画になっている。在米5年目にもなると、そんな気分を少し共有できてくるのは面白い。

2006年を振り返って

 今年も一年無事に過ごすことができました。新たに素晴らしい方々と出会うことができたこと、そして多くの方からさまざまな形でご支援をいただいたおかげで、今年もどうにか乗り切ることができました。心より感謝しております。

 冬の寒さもそれほど厳しくない、穏やかな大晦日の朝を迎えた。朝食のシリアルを食べつつ、今年どんなことがあったか振り返った。ブログを見返したりして、一つ一つの出来事を見直してみると、結構いろんなことをしている。ずいぶん前のことのように思えて、実はこれは今年のことだったのかと思うことも多い。歳を取るにつれて時間の経過が早いような気はするものの、1日24時間365日であることには変わらない。主観的には時間感覚が短く感じたとしても、日々何かを積み重ねていれば、一年という長さは結構いろいろなことができる長さだと思う。
 今年の年初には、このようなことを考えていて、目標として次の三つを掲げていた。
・博士課程の修了試験をパスする
・シリアスゲーム本出版
・博士論文研究を仕上げて、来年早々にディフェンスできるようにする
一つ目は、完全達成。これ以上ないくらいに出来過ぎなほどうまく行った。力をあわせて乗り切った同僚たちとは強い結束ができた。試験のコミッティになってくれた教官たちにはそのまま博士論文審査コミッティになってもらうことができ、これ以上望めないような強力な教授陣の力を借りることができることとなった。
二つ目は、9割方達成。年内出版とは行かなかったものの、すでに最終段階まできていて、2月にはリリースできる。それにあと二冊の翻訳書の出版も実現しそうなので文句はない。
三つ目は、よいテーマに出会えたものの、研究を仕上げるどころかまだ計画書も通していない段階で、未達成。秋頃までは計画通りに進めていたが、途中でかなり無理があることを認識して、全体スケジュールを半期延ばした。出版の方が無事に進んだのは、こちらを先送りにしたおかげでもある。
 年初に予想していたように、このほかにさまざまな案件をいただいて、一つずつ消化しているうちにボリュームだけはまずまずの量になった。いずれレジュメのアップデートのためにまとめなければいけないので、ついでに今年の成果を整理してみた。

<論文・報告書>
・藤本徹 (2006). シミュレーション・ゲーム型教材開発の考え方とその方法. 芝浦工業大学大学院「企業との対話による実理融合MOT教材開発」プロジェクトディスカッションペーパー
藤本徹(2006) 「シリアスゲームと次世代コンテンツ」、財団法人デジタルコンテンツ協会編「デジタルコンテンツの次世代基盤技術に関する調査研究」第四章
https://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/Fujimoto-SeriousGames.pdf
<講演・発表>
・藤本徹 (2006). 海外におけるシリアスゲームの最先端: エンタテインメント・ゲームの可能性はどこにあるか. 日本シミュレーション&ゲーミング学会2006年度秋期大会記念シンポジウム. 2006年11月11日.
(資料とレポート)
https://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/000795.html
・Fujimoto, T., Beppu, F. (2006). Games for Health in Japan, presented at Games for Health Conference 2006. 09/29/2006.
・藤本徹 (2006). シリアスゲーム:デジタルゲーム技術を利用した教育課題への取り組み. 熊本大学eラーニング連続セミナー. 2006年8月9日
(発表資料)https://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/Kumamoto080906-Fujimoto.pdf
・藤本徹 (2006). シリアスゲーム:コンセプト、事例とその展開. 東京大学BEATセミナー. 2006年8月5日
(発表資料)https://anotherway.jp/seriousgamesjapan/archives/BeatSeminar080506-Fujimoto.pdf
(セミナーレポート)http://www.beatiii.jp/seminar/023.html
<ワークショップ、取材その他>
・Fujimoto, T & Almeida, L. (2006). Learning design through playing entertainment games, presented at Learning & Performance Systems Department Student Technology Advisory Committee workshop, April 14th.
The State Of Serious Games In Japan (Serious Games Source)
http://seriousgamessource.com/features/feature_041806_sg_japan.php
シリアスゲームジャパン藤本徹氏インタビューと今後の展望(株式会社シナジーWebサイト)
http://syg.co.jp/seriousgame/gfh4_1.html
GDC2006 シリアスゲームサミットレポート(RBB Today)
http://www.rbbtoday.com/column/seriousgames/20060404/

 こうしてみると、今年は研究者にとっては基本活動たる査読付の研究論文投稿や研究発表から遠ざかっていたのが明らかだ。これも修了試験の時に今年の分の学者的な勤勉さを使い果たしてしまったような感じで、モチベーションがあがらなかったのが大いに影響している。授業を取らなくてよくなった分の自由を謳歌しすぎたということもある。
 あと、このような発表や論文の形ではない個別ミーティング、勉強会、コンサルティング的な仕事が今年は目立って数が増えた。日本からの話はもとより、アメリカでも徐々にこの手の案件が出てきているのはうれしい。たいがいは英語力の低さがネックになってうまく行かないのが惜しいところだが、すべて思うように行くものでもないのでぜいたくは言えない。
 今になって思えば、もう少し勤勉にやれたのではないかと反省したくなってくる。おそらく日々の生産性向上のための工夫をすれば、消耗せずにもう少し成果をあげられる気がしている。自分の時間の使い方の中で、純粋に無駄に過ごしているなと思う時間はまだ結構あるので、改善の余地は大いにある。
 今年もよくテレビを見たし、ゲームもほどほどにやった。多少ながら英語力向上のおかげもあって、テレビからはいろいろと吸収できることが増えた。ゲームの研究をしているといいながら、ゲームの時間が十分に作れていないのがやや情けない。ゲームの方からはまだ吸収し切れていない感じなので、もっとゲームの時間を作っていろいろ試していこうと思う。
 こうして振り返っているうちに、日本は新年を迎えたようで、年賀メールが届き始めた。まだこちらは旧年中なので、新年のことはまた明日になってから考えようと思う。なんだかまだ十分に振り返りきれていない気もするが、先のことを考えるにも振り返りは必要なので、続きはまた新年のことを考えながら。
 今年も一年おつかれさまでした。

Wii Sportsバンドルの理由

 US版のWiiには、Wiiスポーツがバンドルされていて、250ドルの本体を買えばすぐに遊ぶことができる。日本では売っているものをUS版ではなぜオマケにつけているのか、広告を見ている時点ではピンとこなかった。だが先日、友だちのうちに遊びに行ってXavix(ザビックス)をプレイしてみて合点がいった。
 Xavixは、任天堂からスピンアウトした技術者たちが立ち上げた、新世代という滋賀県にある会社が出しているエクササイズゲーム機だ。Xavixポートというコンソール機用にテニス、野球、ボーリング、ボクシング、ゴルフのスポーツゲームと、エクササイズ用のエアロステップなどが発売されている。スポーツゲームはそれぞれのスポーツに使うボールやラケットなど形をした専用コントローラーで身体を使って操作する。
 このスポーツゲームのラインナップを見てわかるように、Wiiスポーツに入っているものと同じである。専用コントローラーを使っていて、ゲームも作りこんでいる分、Xavixの方が遊べる要素の多いところはあるが、ゲームプレイの感覚はほとんどWiiで十分に代替できてしまう。操作性のよさの点ではWiiの方が勝っている。一本で同じように遊べてしまうのだったらわざわざこっちを買う必要ないね、Wiiだったら他のゲームもいろいろ遊べるし、という感じになる。
 Xavixポートは日本ではさほど盛り上がっていない感じで、コンシューマ市場にはなかなか食い込めていない様子である。この会社の製品は、Xavixよりもテレビに直接つないでプレイする子ども向けゲーム専用機の方が普及している。アメリカでも日本よりは少しはましという程度だろう。うちの近所のベストバイなどの家電店では取り扱いをやめていたりして、それほどパッとしていない。だが、アメリカは市場が大きく、ヘルスケアの問題も深刻なので、エクササイズ関連のゲームは大きく化ける可能性がある。
 Wiiスポーツはアメリカでも売れば普通に売れると思うのだが、あえてバンドルしたところにはこの辺りの事情があるのだろうと推測できる。家庭用体感型ゲームの最も大きい市場はWiiできっちりおさえに入るという、任天堂の意思表明である。これでXavixは現在のWiiとバッティングする商品ラインナップでは厳しくなったというか、すでに勝ち目は無くなった。このままのやり方では立ち行かず、経営戦略を大幅に見直さないと会社自体が危機に陥るだろう。
 立ち上がりは順調だったように見えても、ひとたび業界の巨人が体力と技術力にものを言わせて本気を出してかかると、あっという間に吹き飛ばされてしまうという現実を示す例となりそうである。ベンチャー企業が軌道に乗って、対象とする市場がニッチでなくなる段階や、主要な市場で勝負をしようとする段階になると、経営リスクのレベルが格段にあがる。直接対峙する相手のプレイヤーががらりと変わるのだ。ここで一歩退いて別の市場を開拓することで直接ぶつかるのを避けるか、消耗戦になってもその市場にとどまって勝ち残るまでやっていくか、あるいは他の全く異なる戦略をとるか、新世代にはそんな選択が迫られていると思われる。
 いかに人々に楽しさや幸せを与える商品であっても、ビジネスはビジネスであり、組織として存続しなければどんな価値も提供できない。夢や理想を追いたければ、企業体として常に沈着な経営判断をしていく必要がある。Wiiスポーツのような楽しいゲームも、そうしたビジネスの厳しさのなかで生み出され、提供されているということなのだろう。

Wii 初日の様子

 Wiiを入手して、さっそく人々とゲームの関係の変化を目の当たりにしている。
 箱を開けてセッティングしてみると、ゲーム開始までほとんど混乱する要素が無く、シンプルなインターフェイスでネット接続もすぐにできた。リモコンの感触がよく、魚が釣れた時のようなリアクションが妙に心地よい。同じバイブ機能でもPS2のコントローラーの震えとはだいぶ違う感触だ。
 買って来た日の夜にはさっそく30代男が3人で酒を飲みながらWiiスポーツに興じた。タイプ的には私はカジュアルゲーマー、あとの二人はゲーム引退組である。「うぉっ」とか「うはっ」とか叫びながらすっかりハマっている。そのうちMiiで自分の似顔絵キャラクターを作れることに気づいて没頭し始める。あーでもないこーでもないと、お互いの顔を凝視しながら各々のキャラクターを作り合った。そしてゲームを再開してしばらく遊んでいた。テニス、野球、ボーリング、ボクシング、ゴルフとも、すぐ楽しめる上に、ほどよく難しいところがよい。トレーニングモードではまた違ったゲーム体験ができる。リビングに設置して自由にプレイできるようにしたら、ルームメイトはボクシングをやり過ぎて「筋肉痛が痛い」とぼやいていた。
 うちでの出来事もそうだが、You TubeでWiiを検索すると、ばあちゃんと孫が遊んでいるところや、奇声を発しながらリモコンを振り回すおねえさんなどたくさん出てきて、みんなWiiでいかに盛り上がっているかを伝えたくなっているようだ。まさにWiiが狙いとするところのゲームをしない人やゲームを引退した人々が手にとって遊んで、その輪が広がっていっている。店に買いに来た人たちも、少し前は子どもに買い与える風な顔をした親ばかりだったが、クリスマス明けの時には親たちもすっかり一緒に遊ぶ気で買いに来ている様子だった。DSの売れ方もすごいが、Wiiは立ち上がりから全く人々の動きが違っていて、すでにDSよりもはるかにすごいことになっている。これからゲームのラインナップが増えていって、1年後ぐらいに人々のゲームに関わる行動がどう変わっているのかがとても楽しみだ。

ついにWii(USA版)入手の顛末

 昨日ついにWiiを入手した。日本でもまだ品薄のようだが、アメリカでもまだ品薄。発売以来何度目かの挑戦の末、ようやく手に入った。
 Wii入手の挑戦は、日本にいるときに始まった。日本に滞在中にちょうどWiiの発売日に東京に居合わせたので、発売日の早朝、たくさん売っていそうで少しは買える可能性もあるかもと思い当たる店を周ってみた。ところが、いずれも前日のうちに整理券配布終了で全く歯が立たずに撃沈。早朝販売の店で買うには、前日から並ばないと全くダメだったらしい。抽選販売の店に行けばまだ買えたかもしれなかった。一消費者としての気合不足と情報収集不足を痛感した。
 買えなかったことを残念に思いつつアメリカに戻ってきてすぐに、気を取り直して再度挑戦。近所の家電店やスーパーを周ってみたが、いつ入荷か店員も全くわかってなくて、いつ行けば買えるのか全くわからなかった。近所のゲーム屋に行ってみると、店員が入荷情報を把握していて、金曜の入荷でWiiが何台か入るかもしれないという情報を得た。
 そこで金曜に朝から出直してみると、10時の開店直後から店内にはWiiの入荷を待つ人が待ち構えていた。一人の大学生と思しき客がウェイティングリストを管理していて、私はリストの9番目になった。その後続々とWii目当ての客は押し寄せ、昼前には20人くらいがリストに名を連ねた。平日だったこともあり、客のほとんどはクリスマスに子どもからWiiを頼まれて買いに来たお母さんお父さんたち。こういう時アメリカ人たちは、知らない人とでも気軽に話すので、放っておいてもワイワイと会話の輪が広がっていく。おかげで待つ退屈も紛れる。発売日以来の苦労話や近所の店の入荷情報などあれこれ話しながら過ごした。おかげで、この近辺の購入情報はだいたい把握できた。
 待ちリストを管理している大学生は、ただの客にもかかわらず、来る客みんなにWiiを買いに来たのかを聞いて、待ちリストの説明をして店員のように甲斐甲斐しく働いていた。そのうち他の客に彼を店員なのかと勘違いする人も出るようになって、「ボクは店員じゃないよ」と何度も断りを入れていたのには笑えた。
 待つこと3時間余りの午後1時半頃、UPSのトラックが店の前に止まり、店内の人々がざわめきたった。入荷のダンボールの数は結構ある。店員が荷物を仕分けた後、9台入荷したとアナウンスした。ちょうど私の番までが購入できることになった。後ろにいた20人以上の客たちは落胆しながら帰っていった。私のすぐ後ろの10番目のおばさんが落胆しながらもまだあきらめきれずに残っていた。近い番号の人たちとは一緒に話していたのでこのおばさんがどういう事情で今日買いに来ているかも聞いていた。余りにがっかりした様子で、もうクリスマス前には買えないと話していたのがつい気の毒になって、ぼくはまたすぐ買いに来れるから、とそのおばさんに自分の番号を譲ってしまった。おばさんはとても喜んでくれて、御礼に50ドルをくれたのは嬉しかったが、結局この日もWiiは買えず、私はもらった50ドルを握り締めて帰宅した。
 その後も買い物のついでに、Wiiを取り扱っている店に顔を出しては入荷情報を確認しつつ様子を見ていたところ、「日曜のセールに合わせてこの辺の店にWii入荷する」という情報を得た。そこで日曜の早朝、夜も明けぬうちから各店を周ってみた。すると前夜から並んでいたと思しき人々が店の前で防寒フル装備で座って待っていた。どこも店の入り口の張り紙に、今日入荷しますが台数は・・台です、と書いてあって、その台数分の人がすでに並んでいたのでアウトだった。アメリカ人の購買意欲は、ブラックフライデー(サンクスギビングの早朝大売出し)と、クリスマスにピークになっており、単にWiiがほしいというだけでなく、クリスマスに間に合わせようという気合がすさまじい。今回も完全に気合負けだった。
 クリスマスが明けて26日、人々の活動が平常に戻った最初の平日ということで、案外狙い目なのではないかと思って、朝から再びゲーム屋をのぞいてみた。すると店員は、今日からUPSは動いているので入荷の可能性はあるが確実ではない、と言っている。まだ店内にはWii目当ての客は誰もいなかったので、もしかしたら入荷はないかもと思いつつ、とりあえず待ってみた。店員は客からのWii入荷の問い合わせにオウムのように同じ返答をしている。時間が経つにつれてWiiの問い合わせは増えたが、ほとんどの客はすぐにあきらめて帰っていった。
 店員の予想よりもだいぶ早い午前11時半、UPSのトラックがやってきて、商品のダンボールがいくつか入荷した。客たちは列を作り始めた。私は一番前に並ぶことができ、レジの店員と話しながら待っていた。もう一人の店員が奥に荷物を運び入れ、仕分けた商品をカウンターに運び入れる。最初に来たのはPS3が2台。PS3も品薄でなかなか買えない人気商品だというのに、客たちはPS3には見向きもせず、なんだよPS3かよ、とがっかりしている。その直後、Wiiは2台だけ入荷、と店員のアナウンスがあり、私と2番目にいた男の子が今回の幸運を手にすることとなった。列の後の客たちは落胆の声を上げながら店を後にしていった。「ここのところいつもこんな感じで、店が混雑していると思ったら、UPSのトラックが来たとたんに、あっという間に閑散とするのよ」とレジの店員は苦笑していた。
 ゲームも一緒に買うかと聞かれたが、USA版の本体には「Wii Sports」がおまけでバンドルされているので、とりあえずはそれを試してみることにして、今回はゲームは買わずに済ませた。まず買いたいと思っていた「はじめてのWii」や「おどるメイド・イン・ワリオ」は、米国発売は来年なのでまだおあずけである。リモコンも品薄でなかなか買えないのだが、この時ちょうど在庫があったので、追加でリモコンを一台購入。ヌンチャクはまだ在庫切れで買えなかった。
 こうしてついにWiiを購入できた。これだけ苦労すると手にできた喜びも倍増する。すでに世界で何十万人もの人たちが同じようにあれこれ苦労して手に入れているということを思えば、これだけ購買意欲を刺激する商品を作るというのは大変なことだと思う。それに、購買者の意識や購買者の層に変化が起きているようで、従来の子どもに買い与えるという意識から、家族で利用するものを買う、という意識に変わってきている印象がある。テレビか何かの家電品を買うような感覚に近づいているのかもしれない。
 今回なんとか買えたのは、アメリカでは発売から1ヶ月余りが経過し、気合の高かった人たちの多くはすでに購入済みということと、クリスマス明けすぐは人々の購買意欲は平常に戻っていることで、かなり買い易くなっていたということもある。XBOX360も最近ようやく普通に在庫がある状態になってきたように、Wiiもあと少し経てばもっと買い易くなるのは間違いない。それがわかっていてもあえて並んで買ってしまおうと私も思わされたという次第である。
 今回は一消費者として、今までにない多くの経験をした。列に並んで人気商品を発売後すぐに買おうとする行為自体ほとんどしたことがなかったので、その不慣れさからくる数々の失敗を経験し、「人気商品を買うこと」という領域の知識を身につけたのち、難易度も下がった頃にようやく目的を達成できたという感じである。どんな活動にも専門知識というのがあって、それはバカにしたものではないなと考えさせられた。