2012年に向けて

 さて、引き続いて2012年の抱負を少し記しておきたいと思います。まず、方向性としては、数年先の何か大きなことに向かう準備をしている段階だという気がしています。お金がないからとか、時間がないからとか、任せる人がいないからとか、今はできない理由のせいにできたとしても、そんな制約がなくなった時に自分は本当に口だけでなくてできる人間なのか、今できなくてもすぐにできると言える気構えがあるか、勝負する時に力になってくれる仲間がどれほどいるか、そういう観点で見ると、自分には足りないところが多すぎる。たとえば、信頼できる人から、予算○億出すから君の構想を形にしてくれ、と言われたとして、OK、すぐやれますよ、と即答できて、実際にきちんと体制を組める研究者でありたいわけで、そのための力量的なベースを今年1年かけて作っていきたいと思います。
 具体的な活動としては、抱えているプロジェクトで確実に成果を出すこと。まずはそれに尽きるので、着実に進めたいと思います。Soclaの「ソーシャルメディアを利用した学習環境の研究」は、プロジェクト学習、基礎学習とも今年度の佳境に入っており、これをやりきること。特に基礎学習の方は、ソーシャルメディア×数学×ゲームで進めているアプリ開発が、プロトタイプの段階でどこまで前進できるかが勝負になっていて、これが最優先課題です。この1年で何らかの成果を出せるのは必須としても、後はどこまで質を上げられるかのチャレンジです。
 次に力を入れたいのが、昨年着手した「クエスト型授業」の研究です。2月の日本デジタルゲーム学会でこの題材で発表しますし、来年度の工芸大「シリアスゲーム論」では今年度実装できなかった要素や上手くいかなかったところを修正してバージョンアップを図ります。こちらも今年度後半には論文にできる程度の知見を確立したいと思います。
 ゲームの教育利用研究については、昨年1本解説論文的なものを書いてこれまでにやったところは総括したので、次はさらに各論のテーマを引き続き掘り下げて、次の論文を形にすることが今年の目標です。このテーマを追求する研究仲間が増えたことが大きく、このすそ野を拡げていきながら、コミュニティの基盤を強化していこうと思います。
 ところで、この正月休みは、ちょうど弟の家族が一緒に帰省していたので、3歳の甥っ子とゆっくり接する機会がありました。面白がって母のiPadで遊ばせたり、YouTubeで彼のお気に入りのゴーカイジャーの映像を見せたりして遊んでました。YouTubeにiPadを自在に操る3歳児の映像がいくつも出ていたりして話題になってますが、まさにそんな光景を目にしました。
 一緒に海岸を歩いていてカモメを見つけると、カモメの話をしながら「新幹線のカモメはこのカモメかー」と誰も言わなくても自分で気づける知性がすでに備わっているのでした。日々著しく認知的発達が進んでいる様子に、教育に関わるものとして感じ入らずにはいられませんでした。お子さんをお持ちの方々からすればとうに経験済みのことだと思いますが、僕はこの時期の子どもとこれほど接したのは初めてだったので、子どもの教育についてこれまでとは違った観点から多くのことを考えさせられました。
 この子たちが大人になる頃には人々を取り巻くメディア環境は随分変化しているだろうし、社会の仕組み自体も今からは想像のつかない形に変わっているかもしれない。そんな未来をこの子たちが生きていくためにに必要な学習機会や学習環境を私たちは提供できているか。できているとは言い難いし、現状追認的な研究や教育を維持しているのでは、いつまでたっても彼らが必要とする教育は提供できない。でもはたして、自分の研究も彼らやその次の世代が必要とする教育に向かっていると言い切れるか。そういうことを考えながら、今よりももっと次世代を見据えて、自分の研究の方向性を定めていきたいと考えました。
 初詣で引いたおみくじには「一心に自分の仕事大事とはげみなさい」とあったので、その気持ちでこの一年やってみたいと思います。どこまでいけるか楽しみになってきました。